【主張】社会保障を守る政治への 転換の年にしよう

社会保障を守る政治への転換の年にしよう

 コロナ禍で露呈した脆弱な社会の背景には、40年来の新自由主義による格差拡大と富の偏在の拡大、医療・社会保障費抑制政策による自己責任社会のまん延・蓄積がある。岸田政権が肝いり政策として掲げる「新しい資本主義」は、「資本主義の進化」と言い換えてデジタル化やスタートアップ企業などへの集中投資など大企業の成長戦略に寄与する政策に終始している。新自由主義からの転換とは無縁である。
当面する課題は、異常円安による物価高騰、エネルギー価格の急騰から国民生活・医療機関を守る取り組み、新型コロナとインフルエンザの同時流行に向けた検査・医療供給体制の整備、保険証廃止やオンライン資格確認義務化を撤回し、保険証で安心して受診できる国民皆保険制度を守る取り組み等である。
岸田政権が閣議決定した2023年度の政府予算案は、防衛費2倍化を実現するため、同予算を過去最大の約26%増とする一方、社会保障など国民生活を犠牲にするものとなっている。新型コロナの感染拡大「第8波」の渦中にもかかわらず、コロナ対策の予備費は約1兆円減らし、病床確保に対する補助金は削減する。看護・介護職員らの賃上げは22年度と同水準の極低額にとどまる。逆に高齢化などで当然増える社会保障費の自然増を1500億円圧縮する。そこには、75歳以上窓口負担2割化に伴う約400億円と雇用調整助成金の特例措置の縮小による約300億円の圧縮分が含まれており、負担増・給付削減が明らかである。約3年に及ぶコロナ禍の下で、「自宅療養」中に相次いだコロナ患者の在宅死や、絶対的な人手不足などで疲弊している医療・介護現場の窮状に正面から答えない、全く不十分な内容である。
大切なのは新自由主義と決別し、医療費抑制政策の抜本転換を図ることである。新自由主義政策に基づく経済・財政のゆがみを是正し、応能負担の強化で大企業の内部留保を社会的に還元させること、中小企業支援とセットにした最低賃金の大幅引き上げ、非正規雇用の正規雇用化など、雇用と賃金の底上げによる経済回復が重要である。
今年は統一地方選挙がある。候補者や議会への働きかけを進め、社会保障を守る政治への転換の年にしよう。