健康保険証法案は撤回を 3月23日厚労省・伊原保険局長に要請

保団連は、3月23日、厚労省の伊原和人保険局長に要請し、健康保険証廃止法案の撤回を求めました。要請には宇佐美宏、竹田智雄両副会長、池潤理事が参加し廃止法案の撤回を求める要望書と署名を提出しました。

 

オン資義務化で閉院は本末転倒

竹田副会長は、「コロナ禍での経営困難、高齢化に加え、オン資義務化に伴いシステム整備やセキュリティ対策の費用負担に耐えられない等で閉院に追い込まれる医療機関も出ている。長年地域医療に貢献されてきた医師・歯科医師を失うだけでなく、地域の医療確保に支障が生じ、患者・住民にも不利益となる。オンライン資格確認義務化など拙速かつ強制的なデジタル化や医療DXの推進で、医療崩壊を加速化させることは本末転倒だ」と強く批判しました。

伊原局長は、マイナカードと保険証の一体化の目的は、「医療情報・薬剤情報など医療データを活用し、より良い医療を提供できるようにすること」と述べ、マイナカードを受診時に利用するメリットと利便性を強調。その上で、オンライン資格確認義務化の経過措置や紙レセ医療機関などには、資格確認限定型の簡易なツールを準備していると説明しました。

 

マイナカードの申請補助、管理を施設側に押し付け

現在は、介護施設や高齢者施設が利用者・入所者の健康保険証を管理し受診対応しています。しかし、政府は、健康保険証廃止後は、マイナカードによるオンライン資格確認を基本とし、マイナカード活用等が困難な方への対応として、マイナカードの代理交付や申請補助、施設長など第三者による管理等を検討しています。この検討について、伊原局長は「昨年末に当事者団体へヒアリングを実施した」、「認知症が進んだ人は自身の過去の医療情報は忘れがちだ。マイナカード利用で過去のメディカルヒストリーが知れることは非常に便利である。現場に負担がかからない形で運用できないか検討している」と述べ、あくまでマイナカード活用に固執する姿勢を示しました。また、通信障害時には、「スマホでマイナカードを読み取り、マイナポータルに表示された被保険者番号で資格確認が行えないか方策を検討している。他人のスマホでもマイナポータルにログインできる」と説明しました。

 

資格確認書 保険料未納者への対応

国会に提出された健康保険証廃止法案には、マイナカードを取得したくない方等への対応として、本人申請に基づき資格確認書を発行・交付することとしています。資格確認書の具体的な運用について、例えば学校で修学旅行に行く時の取扱いなど様々な意見が国会で出されています。伊原局長は、これらの意見を踏まえ、具体的な運用は今後整理していくとしました。

健康保険証廃止に伴い従来の資格証明書、短期保険証も廃止されますが、今後どのように運用していくのかと質しました。

伊原局長は、保険料の納付の勧奨や一定の取り組みをすることを条件に対応することを法律上明記するなど位置付けて運用していくとした。

 

申請漏れ等による「無保険」を強く懸念

竹田副会長は、医療DX・デジタル化を強引に推進する中で、脱落する医療機関・患者・国民が出てくることに強い懸念を表明し、国民皆保険制度の大前提として、保険者が健康保険証を全ての国民に発行・交付することを強く要請しました。また、申請がないと発行されない資格確認書による対応では、申請漏れ等が発生し、「無保険」となる方も出てきます。「健康保険証による資格確認をベースとし、医療・薬剤情報の利活用は、あくまでオプショナルサービスにとどめるべきだ。マイナカードが使えない人の対応(資格確認書)で現行の健康保険証での対応より不便・不確実なものとならないように」と釘を刺しました。

この点について、伊原局長は、「マイナカード普及ということではなく、医療現場で診療がしっかり受けられるようにすることが大事だ。マイナカードを所持していないから医療を受けられないようなことはあってはならない」と述べました。

 

保険者判断で資格確認書の交付も

認知症の方や障害者、多忙等を理由に資格確認書の申請漏れが発生し、医療が受けられないことへの対応について、伊原局長は、「24年秋に健康保険証を廃止し、1年の経過措置を設けている。経過措置終了前に保険者から手続きを案内していく。すべての国民がマイナカードを取得しているか不明なため、保険者が一定の判断、一生懸命催促しても資格確認書の申請がされない場合は、保険者が資格確認書を発行することが可能となる仕組み(職権交付)を用意しており、そのことを改正法案附則第15条に明記している。医療をしっかり受けてもらうことが厚労省のミッションでありしっかり対応したい」と回答しました。