3月17日の参議院厚生労働委員会において、現行の健康保険証を廃止し、マイナンバーカードと一体化させる問題について、野党国会議員が取り上げ、質疑が行われました。質疑を通じて、患者、国民や医療・介護現場の混乱、懸念をまったく省みず、保険証廃止ありきで問題を放置したまま見切り発車している状況が浮き彫りとなりました。質疑の主な内容を紹介します。
なぜ現行の健康保険証を交付しないのか
高木真理議員(立憲)は、マイナ保険証を選ばない人について、本人の申請により、最長1年の有効期間の資格確認書の発行が検討されていることについて、手間や混乱が増えるのではないかと指摘。なぜ健康保険証を交付しないのかと質した。
伊原保険局長は、「マイナ保険証で多くのデータに基づいたより良い医療を受けることが可能になる。医療機関や保険者にとっても事務コストが削減されるメリットがある」と強弁し、資格確認書については、交付方法や交付対象者が現在の健康保険証と異なることから、被保険者に誤解が生じないよう、名称も変更した上で新たに資格確認書を創設したと説明した。
高木議員はさらに子どもが修学旅行に行く際に保険証のコピーを持たせるが、これはどうなるのかと質問した。これに対し、伊原保険局長は、今後、具体的にどうするかは文科省などと検討すると述べるに留まった。
介護現場におけるトラブルの懸念を指摘
芳賀道也議員(無所属)は、マイナカードは実印登録をしている印鑑証明書と同じくらい大事だと考える人が多く、マイナ保険証の利用実態は極端に低い。マイナ保険証を作ったけれど持ち歩きたくない人のために、紙の保険証は無くすべきではないと追求した。
加藤厚労大臣は、メリットを享受するためにもマイナ保険証で受診してほしい。安全性についてしっかり周知啓発に努力していきたいと述べるに留まり、国民の不安・懸念を省みない姿勢に終始した。
芳賀議員は、保険証廃止による介護現場での影響についても取り上げた。介護施設では、入居者は医療や介護の被保険者証を施設に預ける場合が多い。保険証をなくしてマイナカードに一本化してしまえば、受診のために施設がマイナカードを預かり、場合によっては暗証番号も伝えることになる。芳賀議員は、入居者の各種情報に施設職員がアクセス可能になった場合の事件やトラブルの懸念を指摘し、介護施設入居者のマイナ保険証の取り扱いと入居者の機密保持について厚労省としてどのような対策を考えているのかと質した。
伊原局長は、今後関係省庁と連携し、関係団体の意見も聞きながら、国民の混乱なくより良い医療が受けられるように、暗証番号の取り扱いや第三者によるカードの取り扱いについて具体策を取りまとめて丁寧に示していくとした。
芳賀議員は、問題があるとわかっているのに、それをどうするかが決まらずに制度が進んでいることは問題だと批判した。さらに、資格確認書が1年の有効期限とされていることについて、介護施設の職員から複数の入居者の資格確認書を毎年切れ目なく申請するのは絶対に無理だとの声があがっているとして、厚労省の見解を質した。伊原局長は、資格確認書の期限が切れる時期がきたら個別勧奨をする。それでも実際に申請が無い場合は、保険者の側から資格確認書を送る対応も可能との認識を示した。