保険証廃止法案 4月19日委員会審議

法案撤回をめざし国会前での座り込み

4月25日特別委員会での法案採決を前に、保団連は中央社保協等とともに国会前で抗議の座り込み行動を実施しました。

保団連の住江憲勇会長は、「全く国民の声を聞かずに、内閣が閣議決定したことだから審議不要と言わんばかりだ。国民主権の侵害だと大きく声をあげよう。また、保険証の廃止は基本的人権を大きく侵害するものであり、断じて許すことはできない。20日の参考人質疑では、保険証廃止を推進する立場からも、国民・患者、医療機関が取り残されることがあってはならないと意見が出た。それならば保険証廃止に反対するべきだ。政府はメリットをただ強調して推進しようとしているが、保険証廃止の狙いは、医療のビッグデータをもとに医療の標準化・画一化による社会保障給付の削減、営利市場におけるさらなる収奪だ。法案撤回に向けて声をあげていこう」と訴えました。

短時間の審議の中でも、健康保険証廃止によって無保険者が発生してしまうこと、医療や介護の現場での混乱など、多くの問題点が指摘され、健康保険証の廃止に道理は無いことが明らかとなっています。保団連が実施した高齢者施設等の実態調査の結果もたびたび審議の中で取り上げられました。

4月19日の特別委員会での野党の質問の概要を紹介します。

 

保険証の存続こそみんなが恩恵受けられる

福田昭夫議員(立憲)はマイナカードの普及状況と普及経費について確認した。総務省の三橋一彦審議官は4月17日時点で累計申請件数は9646万件、人口比で76.6%。累計交付枚数は8629万件、人口比で約68.5%と回答。普及費用については、広報等で約259億円、マイナポイント事業で約2兆1113億円と回答した。

福田議員は、マイナカード普及のために消費税1%くらいのとんでもないお金を使っており、こんなやり方をしないと普及しないのは「行政として信頼されていないということ」と批判した。

福田議員はオンライン資格確認等システムが現行の健康保険証の記号、番号を用いても利用できることを確認し、健康保険証を今まで通り存続させることで、政府が言う恩恵をみんなが受けられるのではないかと述べた。さらに、健康保険証は保険者が発行するのに、資格確認証はなぜ「求めに応じて」なのかと質問。求めないと出さないなど非常識だと追及した。

厚労省の日原知己審議官は、資格確認書の申請が必要となる事情については、様々なケースが想定されることから「全ての被保険者に交付する健康保険証とは異なり、本人の申請に基づいて保険者が交付する仕組みとしている」と述べた。

福田議員はさらに、保団連が実施した高齢者施設等への影響調査の結果を紹介。9割もの施設がマイナカードの管理ができないと回答していることを紹介し、国民からの健康保険証を存続してほしいとの要請を無視する政府の冷たい姿勢を批判した。また、マイナ保険証と資格確認書で窓口負担に差があることを問題視。憲法14条の法の下の平等に違反するのではないかと指摘した。その上で、マイナカードと健康保険証の一体化をしなくてもオンライン資格確認等システムで充分に対応可能であることを考えると法案は廃案にすべきだと訴えた。

 

国民皆保険制度から漏れる人が出る

湯原俊二議員(立憲)は、マイナカードの取得は任意であり、国民皆保険制度との間で、齟齬があるのではないかと質問した。

日原審議官は、健康保険証の廃止後はマイナカードによるオンライン資格確認が基本となるが、それが受けることができない状況にある方については本人申請により発行される資格確認書により資格確認することとしているため、必要な保険診療が受けられるよう対策を講じていると述べた。

湯原議員は重ねて、マイナカードは任意の申請、資格確認書も申請制となれば、申請しなければ結局皆保険制度から漏れてしまうのではないか。さらに、資格確認書が10年先まで発行されるかどうかも承っていないと懸念を述べた。

日原審議官は、資格確認書の申請手続きを失念して保険診療が受けられない事態を防ぐことは大変重要と考えている。具体的には、来年秋の健康保険証廃止に向けて、マイナカードの保険証利用登録をしていない人には資格確認書の申請を促す案内を届ける。資格確認書の有効期限が到来する時期にも手続きの案内を送るなど、保険者から申請の勧奨を実施することを考えている。また、本人からの申請が難しい方については家族のほか、施設職員や支援団体による代理申請を進める。それでも申請が期待できないと判断された場合には申請によらず交付を可能とするといった対応を想定しているとした。

湯原議員はさらに、現在でも地方では受診したい診療科が近くにない状況があるなかで、高齢医師・歯科医師までオン資システム導入を強いられ、閉院に追い込まれる現状もあると聞いている。その医療機関にかかっていた患者は医療にアクセスできなくなってしまうと指摘し、万全に対応できるのかと追及した。

日原審議官は、オンライン資格確認義務化について、カードリーダーの無償提供や補助金の拡充などを行い、対象施設の約73%で運用を開始している。他方でやむを得ない事情がある場合は経過措置を設けた。地域医療に支障が生じないよう、経過措置の内容の丁寧な説明をして、オン資導入をしっかり進めていきたいとした。