保険証廃止法案 衆議院チコデジ委員会で審議入り 4月20日参考人質疑

衆議院では、4月14日に保険証廃止を含むマイナ法案が審議入りし、18日から地域活性化・子ども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会(「チコデジ」委員会)での審議が始まりました。

「チコデジ」委員会では、河野太郎デジタル大臣による法案の趣旨説明と与党による質疑(18日)、野党による質疑(19日)、参考人質疑(20日)とが連日審議が行われています。25日には委員会で採決されると言われています。

保団連は委員会審議に合わせて、連日マイナ制度連絡会と中央社保協とともに、保険証廃止法案の撤回を求めて、委員会の傍聴、国会前の座り込みと集会を行っています。

医療情報連携のメリットを繰り返し強調

日医・長島常任理事

4月20日「チコデジ」委員会にて、参考人質疑が行われ、日本医師会より長島公之常任理事が意見陳述しました。

長島参考人は、「医療DX」は推進すべきとした上で、当事者・関係者が一致して協力するとともに国の支援が必要としました。保険証廃止については、マイナカード利用による医療情報連携のメリットをあげて、国民に理解を求めました。

議員からは「対応できない医療現場の実情」「システム障害時などでの資格確認」などの質問が出されました。高橋千鶴子議員(共産)は、「デメリットもあるため、メリット即義務付ける理由にはならない」と指摘。また、「電子版お薬手帳など代替手段も存在している」、「個人の生涯履歴に関わる健康・医療情報が必要な人はいるとしても、それを全員に義務付けることまでは非常に疑問」と述べ、義務付ける正当性に関わって見解を求めました。長島参考人は、質問には直接回答せず、医療情報連携に伴うメリットを改めて強調しました。以下、野党議員と長島参考人とのやり取りの要旨を紹介します。

 

DX推進に国民は理解を 日医

長島参考人は意見陳述に際して、「医療DX」は医療の質の向上、医療現場の負担軽減につながるとして推進すべきとした上で、患者・国民、医療・介護事業者が取り残されないようにするため、国が支援をすべきとした。保険証廃止についてはマイナカードの利用による健康・医療データ提供が最も重要として、国民の理解が大切とした。実務面において、カードを管理する側の不安を解消するような環境整備が大変重要であるとした。

 

障害時対応は今後検討 日医

坂本祐之輔議員(立憲)

「保険証の突然の廃止は強引であり、かえってマイナンバーカードを持つ/持たないの分断を煽っている」として政府の進め方について質問。長島参考人は「拙速となって混乱や支障が起こることはあってはならない」とした上で、「メリットを理解いただくことが重要であり、丁寧な周知を進めてほしい。日医もしっかり協力したい」と応じた。

続いて坂本議員は、保険証廃止に伴う医療現場への影響」に関わって、日医として調査しているのかなど質問。長島参考人は、「会員の調査結果に基づく整理を中医協に提出し、経過措置が設けられ概ね対応できている」とする一方、「医療機関が取り残されることが決してないよう、国にも対応をお願いしたい」とした。

また坂本議員は、保険証が廃止された後、システム障害などでマイナ保険証が利用できない際の資格確認への影響について質問。長島参考人は、「障害が発生し得る前提で対応を考えていく。国には医療機関、国民に迷惑がかからない方向性を求めていきたい」とした。

最後に、坂本議員は、システム導入の義務化がなければ診療を続けられるにもかかわらず、システムを導入しない、導入できないために、続けられない医療機関について質問。長島参考人は、経過措置(その他やむを得ない事情により困難な場合)を示し、「国にはそうした医療機関が継続できるようしっかりと対応していただけるようお願いしたい」とした。

 

カード管理の環境整備進める 日医

西岡秀子議員(国民)

「誰一人取り残さない医療体制を構築していく」という言及に関わり、医療現場からの意見や導入上の課題について質問。長島参考人は「オン資の稼働は全医療機関の70%弱に対してCR申請は100%近いが、業者対応も含めて負担が大きく、少し対応に時間がかかっている」とした上で、「医療現場、関連する業界も一致協力して、なるべく早く進めていくことが重要であり、日医としても支援していく」とした。

西岡議員は 第三者がマイナ保険証を預かる問題について質問。長島参考人は「関係者が一致協力してしっかり進めていく」とした上で「国がリーダーシップを取り支援していただきたい」と述べるとともに、「利用者、カードを預かる側の不安をできるだけなくすような環境整備を急いでもらう。国民や関係者に周知していただくことが重要である」とした。

 

長短あるものを義務付けは疑問 高橋議員

高橋千鶴子議員(共産)

「マイナ保険証にはデメリットもある」として、「メリット=義務づける理由にはならないのではないか」と質問。関連して、医療DXの推進で機能分化に基づく連携が構築されると言われても、そもそも医療機関(医師)も介護も不足している地方では、患者・国民のメリットにつながるのか」と疑問を呈した。

長島参考人は、マイナ保険証による医療情報閲覧、「電子処方箋」サービスによる重複投薬、併用禁忌アラートなどは医療安全につながると強調した。

高橋議員は、「お薬手帳のアプリ版などを徹底すればよく、マイナ保険証でなくてもできるのでは」と疑問を呈した。また、「個人の生涯履歴に関わる健康・医療情報が必要な人はいるとしても、それが全員に必要なのかは非常に疑問」と指摘。さらに「将来的に役に立つと言われても、機微情報の管理は個人の尊厳・同意の関係もあるのではないか」と指摘。長島参考人は、「母子、健診はじめ制度の縦割りを排して、医療データがつながることは、患者本人が健康増進、健康寿命延長の主役になるということで非常に重要だと思う」との認識を示した。高橋議員は「質問に直接回答がなかった」と述べつつ、情報利用の有効性に関連して様々な課題が依然解消されていないとの認識を示した。