保険証廃止法案の衆議院特別委員会採決に抗議します

 2023年4月25日

  全国保険医団体連合会

会長 住江憲勇

 

保険証廃止法案の衆議院特別委員会採決に抗議します

現行の健康保険証は存続を

 

健康保険証を廃止しマイナンバーカードと一本化することを含んだ「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の一部を改正する法律案(マイナンバー法等一部「改正」法案)」が、4月25日、衆議院の「地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会」において採決されました。(自民党、公明党と日本維新の会、国民民主党は賛成、立憲民主党と日本共産党は反対)

法案審議は4月18日に始まったばかりで、実質的な審議時間は参考人質疑も含めてわずか13時間です。短時間の審議の中でも、健康保険証廃止によって無保険者が発生してしまうこと、医療や介護の現場での混乱など、多くの問題点が指摘され、健康保険証の廃止に道理は無いことが明らかとなっています。しかし、政府は国民多数の不安の声、医療や介護現場の懸念の声に正面から答えていません。

保険者がすべての被保険者に被保険者証(健康保険証)を発行・交付することは公的医療保険制度の大前提であり、法令上も保険者には被保険者証の発行が義務付けられています。現行の健康保険証を廃止し、「発行・交付義務」から「申請主義」に転換することは、国民皆保険制度の根幹を揺るがし、被保険者(国民)に大きな不利益をもたらします。国民のいのちや健康にかかわる重要法案を、徹底した審議を尽くさずに採決することは許されません。委員会での拙速な採決に抗議するとともに、立法府の責任として徹底審議を行い、廃案にすることを求めます。

 

国民多数から反対の声

問題点が明らかになるにつれ「保険証廃止やめて」の世論は広がっています。緊急オンライン署名は短期間で8万筆にのぼり、「マイナンバーカードは強制ではなく任意なのですから、従来の紙の保険証を利用するかどうかも、国民が選択できなければ道理に合わない」、「保険証の廃止は今まで築いてきた国民皆保険制度を崩すもの。強制してやめさせるのはおかしい」など、反対、不安、懸念の声は広がるばかりです。

 

高齢者施設の94%が「利用者・入所者のマイナンバーカードを管理できない」

さらに、健康保険証の廃止ありきで、代理交付・申請補助や第三者によるカード管理を進めるとされていますが、協力を求められる医療・介護現場には負担と責任が課せられ、人手不足にも拍車がかかります。当会が行った高齢者施設への影響調査では、特養など高齢者施設の94%が「利用者・入所者のマイナンバーカードを管理できない」と回答しました。このまま健康保険証の廃止が強行されれば、利用者・入所者は医療へのアクセスに困難を抱えることになり、現場は大混乱に陥ります。

 

廃止の矛盾明らか、保険証は全員に交付を

政府は相次ぐ異論を受けて、健康保険証廃止の矛盾・問題を糊塗する弥縫策を逐次検討していますが、これまで同様、健康保険証は全員に交付した上で、マイナンバーカード利用は任意とすればよいだけのことです。

国民皆保険制度を守るため、あらためて現行の健康保険証の存続を強く求めるとともに、マイナンバー法等一部「改正」法案は徹底審議の上、廃案とすることを求めます。