2023年7月28日
医療・介護現場の声に耳を傾けるだけでなく
「健康保険証残す」政治決断を
全国保険医団体連合会
会長 住江憲勇
岸田文雄首相は7月28日、マイナ保険証への移行の在り方について、介護施設のデジタル活用の現場を視察し、医療関係者の意見も伺った上で対応を考えると述べました。
保団連が医療機関を対象に実施した調査では、オンライン資格確認を運用している医療機関の65%がトラブルを経験しています。「他人の情報に紐づけられている」、「資格無効・該当資格なしで10割負担を請求された」「顔認証付きカードリーダーのエラー」など多岐に渡ります。医療機関や患者に経済的損害やプライバシー侵害などトラブル・混乱をもたらすものばかりです。
新たなトラブルとして、70歳以上の高齢者の医療費窓口割合の誤登録が判明したため、厚労省担当課に対し、全容把握と原因解明、再発防止策の構築を要求しました。
岸田首相には現場の意見を聞くだけではなく、トラブルの実態を把握・分析し、具体的な対応策を図ることが求められます。
読売新聞の世論調査でも6割近い国民が健康保険証廃止に反対しており、8割の国民が政府の「総点検」でトラブルは解決しないと答えています。26日の参議院地方デジタル委員会審議でも与野党問わず政府方針の再考を促しました。システムを一旦停止せずに、自治体や保険組合に単に「総点検」だけを強いる国の姿勢に国民の不信や不安が高まるのは当然です。医療・介護現場の混乱を回避する唯一の方法が健康保険証を残すことです。
病気やケガの時にいつでもどこでも安心して医療が受けられるために健康保険証は不可欠です。健康保険証の券面には被保険者情報が記載されているため、患者さんが窓口で提示するだけで医療が受けられます。被保険者情報を活用し、医療機関もスムーズに保険請求できます。被保険者証を発行・交付する義務がなくなると国民皆保険制度に大きな瑕疵が生じます。岸田総理は廃止の延期ではなく、健康保険証を残す政治決断すべきです。