【声明】他人情報紐づけ1069件は氷山の一角 全件チェック・全容解明まで運用停止を求めます

2023年8月8日

他人情報紐づけ1069件は氷山の一角
全件チェック・全容解明まで運用停止を求めます

全国保険医団体連合会
会長 住江憲勇

情報の流出の削除・回収はほぼ困難に

政府のマイナンバー情報総点検本部は、8月8日、異なる個人番号が登録された事例が新たに1069件確認され、そのうち5件で薬剤情報等が閲覧されたことを公表しました。
他人の医療情報が紐づけられた場合、機微性の高い医療情報がマイナポータル上で閲覧でき、容易にダウンロード・外部流出させることができます。医療情報などがウェブ上に流出すれば削除・回収がほぼ不可能となります。しかも、調査で判明した1069件は、いずれも医療機関に受診歴・処方歴がある患者のセンシティブな情報です。
これ以上の情報流出、プライバシー侵害を防ぐために直ちにマイナ保険証を利用するシステムの運用を停止すべきです。

重大医療事故にも直結しかねない

他人の薬剤・診療情報が閲覧可能な状況が続く中で、政府は、6月2日にデジタル改革工程表を策定し、マイナ保険証・オンライン資格確認システムをインフラ基盤として、今後、電子カルテ・電子処方箋など医療情報や処方情報を標準化・データ共有等を図るとしています。投薬・治療情報の取り違えは、疾病の急性増悪、アナフィラキシーはじめ重大な医療事故につながりかねません。他人に医療情報が閲覧された事案は、現行の健康保険証では起こりえないトラブルです。
他人の情報紐づけが完全に解消されない限り、医療者は、共有データの信憑性を疑わないといけなくなります。間違った処方など医療過誤など医療事故にもつながりかねません。岸田首相が8月4日の記者会見で述べた「医療の質向上」とは真逆の事態を招きます。

点検対象は調査・報告した団体の全被保険者はではない

厚労省担当官は、「異なる個人番号が登録された実態把握を先行させる」と述べ、その原因や解決策の検討・検証は今後の課題と説明しました。また、全3411の団体のうち1313団体で総計1570万件の登録データを対象に総点検が実施されたと説明しましたが、当該団体のすべての被保険者を対象に調査したのではないこと、3情報(カナ、性別、生年月日)以下でJ-LIS照会し、適切な確認を行わなかった事案を中心に、当該団体が自主点検により判明した報告した数字であることも明らかになりました。今回公表された異なる個人番号の登録数は氷山の一角に過ぎません。

少なくとも全被保険者の点検・チェックが必要

厚労省は、支払基金による1億2千万人のすべての被保険者を対象に全件チェックを今年秋までに実施したいと述べました。
しかし、保団連は8月7日付声明「『総点検・中間報告』を総点検する」で指摘したように、各保険者が保有している漢字氏名や住所は住基ネットで保有している表記と異なる場合が多いため、検索時に5情報(漢字氏名、カナ氏名、性別、生年月日、住所)の完全一致が期待できず、最終的には支払基金において目検(人の目で確認する)による作業が必要となります。今年秋までに間に合うとは到底思えません。
各保険者による点検・チェックも3情報以下でマイナンバー紐づけを実施した事例に限られています。しかし、マイナンバー制度発足当初の2016年に紐づけした際の紐づけ方法が4情報で照会をかけて、完全一致しないケースが多く発生したため、「あいまい検索」で目検や人手によりマイナンバーを同定する作業が行われました。これらの4情報・「あいまい検索」で登録されたケースは点検・チェックの対象外となっています。
少なくとも全被保険者のマイナンバー紐づけを全件チェックするまでマイナ保険証を利用するオンライン資格確認システムの運用は停止すべきです。