オン請求「義務化」で対象施設の2割が「廃院せざるを得ない」

保険診療から締め出される

厚労省は、医療機関の保険請求に関して、本年3月23日にオンライン請求を義務化する方針を示し、9月6日に、光ディスクによる保険請求を認めないとする請求省令改正案を示しました。パブリックコメント(10月5日締め切り)に付した上で23年10月末までに省令改正を公布するとしています。現在、光ディスクによる保険請求を行う医療機関(48794医療機関、23年6月現在)は2024年9月30日から光ディスクによる保険請求ができなくなります。オンライン請求による保険請求が困難な医療機関は、保険診療から締め出されることになります。

5万6380医療機関が義務化の影響

 義務化の対象となる医療施設は、支払基金が公表している統計(2023年6月末)では、歯科医療機関が 35,574医療機関 、医科診療所で13,220医療機関となります。また、紙レセプトによる保険請求を行う医療機関(医科診療所 2,480医療機関、歯科医療機関5,106医療機関)も条件が厳しくなり満たさないと紙レセプトによる保険請求はできなくなります。つまり、56380医療機関が義務化の影響を受けることになります。

対象施設の2割が「義務化で廃業せざるを得ない」と回答

 保団連は6月13日~7月21日に、厚労省が示したオンライン請求に義務化対象施設を含めて会員医療機関に調査を実施し、24都道府県4439医療機関から回答が寄せられました。保険請求の方法別では、①オンライン請求が2,767件(62.3%)、②電子媒体請求が1,351件(30.4%)、③レセコンで紙請求が95件(2.1%)、④手書き請求:174件(3.9%)がとなりました。請求命令の改正で影響を受ける対象施設は②~④の合計1620医療機関でとなります。調査設問5「オンライン請求に対する先生のお考え、懸念を教えてください(複数回答可)」で「『義務化』されると廃業せざるを得ない」と回答した医療機関が24都道府県319医療機関になりました。つまり、義務化対象施設1620医療機関中319医療機関、比率では約19.7%が「義務化で廃業せざるを得ない」と答えたことになります。

地域医療への影響は甚大―廃業せざるを得ないが1万712医療機関(保団連推計)

歯科医療機関は、全体で6万7000施設となります。電子媒体(光ディスク)請求 が35,574医療機関(52.8%)、紙レセプト請求が 5,106施設となります。前述の廃業せざるを得ない医療機関比率(19%)を歯科の義務化対象施設に乗ずると35574×19%=6759 医療機関、5106×19%=970 医療機関となり、合計で 7729医療機関が廃業せざるを得なくなります。医科診療所は、全体で8万6000施設となります。電子媒体(光ディスク)請求 は 13,220施設(15.3%)、紙レセプト請求は 2,480施設(2.9%)となり、合計で15700施設となります。廃業せざるを得ない医科診療所は、13220×19%で2512 医療機関、2480×19%で 471 医療機関となり、合計で 2983医療機関が廃業せざるを得なくなります。つまり、医科・歯科診療所合計で10712医療機関がオンラン請求義務化等で廃業せざるを得ないこととなり地域医療に甚大な影響を及ぼすことが想定されます。保団連調査では「廃業せざるを得ない」と回答した医療機関の所在地は24都道府県と回答した医療機関のすべての地域で回答されました。そのため廃業せざるを得ない医療機関は都市部や地方など地理的な条件とは関係ないことが推察されます。

地域医療を崩壊させる オン請求義務化は撤回を

保険請求の方法を「オンライン」に限定することの合理性や蓋然性があるのでしょうか?従前の請求方法を認めることに何らかの障害が生じているのでしょうか?疑問だらけ、これまでの厚労省要請などでの説明では何ら疑問は解消していません。医科・歯科医療機関は、保険診療を現物給付する対価として保険者(支払基金、国保連)に毎月保険請求を行います。診療行為ごとに定められた保険点数を元に電子媒体に記録したものを保険者に郵送しています。オンライン請求義務化は「郵送」を「オンライン」に切り替えるものですが、「義務化すべきほどのメリットがあるのか」、「保険医療機関にメリットがあれあ義務化は不要ではないか」との疑念が出されていますが、厚労省は曖昧な説明に終始しています。

しかも、オンラインによる保険請求が困難な場合、保険請求が行えなくなることから「保険診療から強制的にリタイヤさせられる」厳しい措置です。「レセコンの買い替えが必要と言われた」、「専用回線やセキュリティ対策が新たに求められた」などオンライン切り替えに伴う費用負担が生じるにもにもかかわらず補助金の手当てなどは一切存在しません。このような強権的なやり方が地域医療が損なわれることはあってはなりません。保団連はオンライン請求義務化方針と10月末に出される請求省令の撤回を強く求めています。