【総点検徹底検証】負担割合誤登録問題で厚労省が全保険者に新たに点検・報告を依頼

全保険者対象に新たに調査

負担割合の誤登録問題を巡り厚労省は9月29日付で全保険者に対して新たに調査を依頼していることがわかりました。全保険者に点検・確認を依頼し、11月10日期限に報告を求めています。

厚労省事務連絡: オンライン資格確認結果と被保険者証等の負担割合等の相違に関する調査結果を踏まえた今後の対応について

8類型に則した調査

今回新たに調査する内容は、厚労省として誤登録が生じた8パターンの類型を示して点検・報告を求めています。厚労省が8月に全保険者向けに実施した調査の回答・集約した前回調査(9月29日報告、5695件の誤登録)では、医療機関等から負担割合の誤登録の報告があり、各保険者で誤登録であることが確認された事例でしたが、今回の調査は医療機関を受診していない被保険者の調査も含むものとなります。

 

膨大な作業量で市町村の負担大

9月29日の医療保険部会では、①正しい事務処理手順が踏まれておらず、システムで防止する仕組みがなかった事象②事務処理手順に関わらず、システムの仕様の問題により発生する事象の2つに大別しています。厚労省は、誤登録が生じるケースとして8パターンに分類していますが、新たな調査では、8パターンに応じて、システムによる照合を含めた点検を依頼しています。被保険者数が膨大となるためすべて調査すると作業量が膨大になり3400の全保険者で期限までに点検・確認作業が可能なのか、不十分な調査に留まるのではとの疑念が出てきます。特に1700市町村国保や後期高齢者医療保険制度は70歳以上の被保険者を多数抱えていますので作業は難航を極めることが想定されます。

新たな誤登録件数の調査は公表すべき

全保険者向けの新たな点検・確認依頼について厚労省は「念のための点検・確認」であることを強調していますが、前回調査(23年4月からの誤登録が確認された事例数の報告)と異なり、当該機関に受診歴のない被保険者も含めての点検・確認となり件数の報告を求めていることから、誤登録件数は5695件より大幅に膨らむことが想定されます。厚労省は現時点で新たな点検・確認を集約した後、公表することは考えていないようですので、保団連として点検・確認結果の公表を求めています。

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システムでの検知と方法とは

各保険者システムによる検知方法が例示されています。市町村国保が使用しているシステムはそれぞれ異なるため負担割合の誤登録を検知するために必要な改修が求められる場合もあります。財政負担や検査体制等での人的負担が新たに求められることになりますが、国から予算措置などは予定されていません。検知方法は8パターンそれぞれに目安が示されてますが、どのように検知していくのか具体的な指示がないと市町村の現場では対応しようがありません。設問毎の検知方法は次の通りです。

【保険者システムにおける検知方法の例】

(設問1-1)保険証の発行履歴を確認し、最終発行歴が現在証ではなく、過去証になっているものがないかを確認

(設問2-1)保留になったときに出力されるリスト及び発行した保険証の交付年月日と発効期日の関係が不正になっているものがないかを確認

(設問3-1)負担区分が遡って変更になった結果、減額認定証もしくは限度額認定証を発行しない区分になった場合に、無効化していないものがないかを確認

(設問4-1)同一者の証情報で、有効な証情報を複数登録されている証情報を抽出し、点検を行っていただくことで本来無効化すべき証情報が医療保険者等向け中間サーバーに連携されていないかを確認

(設問5-1)情報集約システムの加入者情報表示画面より被保険者を検索し、高齢受給者証情報、限度額適用認定証関連情報欄内で、有効期間の重複する以下の区分において異なる証情報が存在するものがないかを確認

高齢受給者:高齢受給者証一部負担金割合

限度額:限度額適用認定証適用区分

(設問6-1)基幹システムにおいて加入者情報の登録・更新等を行ったが、中間サーバーにアップロードをしていないものがないか、また、中間サーバーに加入者情報の登録・更新等をアップロードしたが、エラー等により処理完了していないものがないかを確認

(設問7-1)

事象1:年次一斉更新のタイミングで、負担割合等に変更がなくとも、医療保険者等向け中間サーバー連携用ファイルが作成・中間サーバーに確実に連携されていることを確認する。

事象2:年度途中で負担割合等が変更となった場合においても、医療保険者等向け中間サーバー連携用ファイルが作成・中間サーバーに確実に連携されていることを確認する。

(設問8-1)

<市町村事務処理標準システムにおける是正対象抽出ツールの仕様>

「限度額適用区分判定履歴」テーブルより、以下に該当する対象者を抽出

①自治体コード、対象年度、保険証番号、個人番号、交付年月日が同じレコードが複数件ある対象者

②①の中で、履歴番号が最大のレコードが交付年月日>発効期年月日となっている対象者

(以下、⑧が発生した際の「限度額適用区分判定履歴」テーブルの状態)

 

参考資料

厚労省事務連絡(9月29日)「負担割合等の相違の可能性がある場合の被保険者等からの相談対応について

今回の調査で判明した事例では、①正しい事務処理手順が踏まれておらず、システムで防止する仕組みがなかった事象、②事務処理手順に関わらず、システムの仕様の問題により発生する事象が確認されたことから、下記のとおり改めて各保険者で点検を行い、点検結果の報告をお願いします。報告に当たっての手順等は別途お知らせします。

①正しい事務処理手順が踏まれておらず、システムで防止する仕組みがなかった事象の点検について

○ 当該事象では、これまでお示ししている事務処理マニュアル等に沿った正しい事務処理が行われていないことにより負担割合等の相違が発生することから、各保険者において正しい事務処理手順により事務処理が行われているか確認してください。

○ 正しい事務処理手順に基づいた事務処理が行われていない場合は、医療保険者等向け中間サーバーに登録されている負担割合等の情報に誤りがないか確認いただき、誤りが判明した場合は本来の負担割合等に修正するとともに、点検結果について報告をお願いします。

②事務処理手順に関わらず、システムの仕様の問題により発生する事象の点検について

○ 当該事象では、事務処理手順に関わらず、システムの仕様に起因して負担割合等の相違が発生することから、各保険者のシステムにおいて同様の事象が生じ得るかシステムの仕様を確認してください。

○ 同様の事象が生じ得る仕様になっている場合は、医療保険者等向け中間サーバーに登録されている負担割合等の情報に誤りがないか確認いただき、誤りが判明した場合は本来の負担割合等に修正するとともに、点検結果について報告をお願いします。