医薬品供給不足が続く中、薬剤自己負担拡大、保険給付外しは大問題! 

厚労省は、11月9日の社保審医療保険部会を開催し、後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)を使用した場合に、窓口負担(3割)とは別に患者に負担させる仕組みの導入を提案しました。

患者に追加負担を求める金額は、先発医薬品と後発医薬品の薬価の差額となります。

差額徴収(追加負担)のモデルケース(イメージ)

先発品200円 後発品100円 差額の100円が選定負担

 

患者からは一部負担金(100円の3割だと30円)とは別に選定負担(100円)の一部を徴収する案が検討されています。先発医薬品と後発医薬品の差額は「選定療養=保険給付外」となり、患者の自費扱いとなります。「保険給付外し」により浮いた公費財源は、製薬企業の新薬創薬の財源とする考えも示されました。

厚労省は、以下の観点から「長期収載品の保険給付の在り方の見直し」の検討を進めることを提案し、「検討することが了承」されました。

○創薬力強化に向けて、イノベーションを推進

○ドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロスの解消

○薬価上の措置を講じつつ、研究開発型ビジネスモデルへの転換を促進する

○後発医薬品の安定供給を前提としつつ、更なる利用を推進

○後発医薬品への置換率が概ね80%程度(数量ベース)と定着。金額ベースでは5割程度にとどまる。

○従来とは異なるアプローチで更なる後発医薬品への置換を進めていく必要がある

「選定療養=保険給付外」の対象と論点

厚労省は、次の論点で先発医薬品(長期収載品)と後発医薬品との選定差額の一部を保険給付から外すことを検討していくことを提案し了承されました。

○ 長期収載品の使用について選定療養として位置付けることについてどう考えるか

○ 医療上の必要性についてどう考えるか

(薬剤変更リスク等を踏まえた医師による処方についてどう考えるか)

○ 保険給付と選定療養の負担に係る範囲についてどのように考えるのか

○ 特に、いわゆる参照価格制との関係についてどう考えるか

○ 長期収載品に係る現行の薬価上の措置との関係についてどう考えるか

○ 後発医薬品の安定供給との関係についてどう考えるか

 

服薬が必要な患者への追加徴収で「創薬」費用捻出は本末転倒

政府は、骨太方針で医療保険財源の枠内で創薬費用を調達するとし、先発医薬品(長期収載品)と後発医薬品との差額を患者から窓口負担とは別に徴収し、製薬企業の新薬創出費用の財源に充てることを「政策的合理性」がある主張しています。

先発医薬品と後発医薬品の差額を選定療養化(保険給付外)し、保険給付や公費など削減された財源を製薬企業の「創薬」に充てることは、服薬や健康管理を必要とする患者から追加でお金を取り立てて、そのお金で新薬を開発するに等しい行為です。しかも、後発医薬品の在庫が枯渇し、先発医薬品(長期収載品)への処方変更や負担増も強いられる中で、患者だけにさらなる追加負担を強いることは「政策的合理性」があるとは言えません。

なし崩し的な「選定療養」拡大は許されない

先発医薬品(長期収載品)を処方されたという理由だけをもって、後発医薬品との差額を徴収されることは、健康保険法で禁止された「混合診療」の解禁そのものであり、国民皆保険を掘り崩すものです。

厚労省はこれまでに選定療養を適用拡大させてきましたが、患者から差額徴収する義務がなく任意のものがほとんどで、選定療養の適用は患者が選択可能なアメニティ的な要素があるものに限定されてきました。今般提案された「選定療養」は、医師の診断・判断により薬が処方された長期収載品の保険外しであり、事実上患者の選択肢はありません。幅広い品目で医薬品の供給不安が続いており、供給不足の解消の見通しは立ちません。こうした中で、先発医薬品(長期収載品)を選択せざるを面もあるのが現実です。

保団連は、部会後の記者説明会において「後発医薬品の薬価を基準として保険給付額を決定し、先発医薬品との差額を患者負担とする参照価格制と同じではないか」、「先発品と後発品の差額徴収を「選定療養」とし、患者負担とすることは問題がある」と指摘し、当局の見解を求めました。

これに対し、厚労省担当官は、「保険政策上の合理性があれば、選定療養は政策的に決められる。法改正を必要としない」、「(薬剤保険外し)は、新薬の創薬力の強化が目的であり、保険財源の枠内で調達するとの骨太方針に沿った対応」と説明しました。その上で、「選定療養の枠組みに入ると医療機関が先発品と後発品の差額の一部を患者から差額し、医療機関の収入となる」と述べました。

医薬品の安定供給が喫緊の課題

 後発医薬品とともに先発医薬品の安定供給が最大の課題です。「選定療養」による対応ではなく、後発医薬品と長期収載品の薬価差を近づけるルールの適用により、段階的に先発医薬品(長期収載品)の薬価も引き下げられています。厚労省の提案は、改正健保法(2003年)の附則における「7割給付の維持」を形骸化させるに留まりません。「選定療養」の活用は、参照価格制度そのものであり、実質的に「混合診療」を認める運用となります。公的医療保険制度の根幹である現物給付の原則をなし崩し的に突き崩すことにもなりかねません。

異常円安・物価高騰、実質的な年金引き下げなど高齢者の生活実態は深刻な状況にあります。75歳以上の窓口負担2割化の影響で政府の調査でも受診抑制が顕著に出ております。追加の薬剤負担増でさらなる受診抑制・健康悪化を招きます。また、差額徴収により患者と医師の信頼関係を崩すことになりかねません。保団連は、長期収載品の保険外し、混合診療の実質解禁に断固反対し、患者・国民とともに負担増計画の中止を強く求めていきます。

(参考)

長期収載医薬品 給付規模  1.9兆円

※厚労省モデルケース(先発品(長期収載医薬品) 200円  後発医薬品 100円  選定負担 100円)

参照価格制:後発医薬品の薬価を基準として保険給付額を決定し、先発医薬品との差額を患者負担とする制度