注射薬入手できず 血糖コントロール不良も

国の責任で安定供給を 厚労省に対応求める

後発医薬品メーカーによる製造不正に端を発した供給不安定が深刻だ。全国保険医団体連合会(保団連)は11月9日、大阪協会、岡山協会、四国ブロックの各協会と共同で、医薬品の供給不安定を国の責任で改善するよう厚労省に要請した。その内容を記者発表し、全国で報道された。

社保・審査対策部の武田浩一部長は「医薬品供給不足は、後発品中心の薬価引き下げによる医療費抑制政策を進めてきた結果だ。一旦立ち止まって、国民の健康と命を守るために医薬品の品質確保・安定供給に必要な対策を講じてほしい」とあいさつし、要請書を手渡した。

命に関わる深刻さ―協会調査

要請では、大阪協会、岡山協会、四国ブロックの各協会が行った調査を基に、咳止めや去痰薬に留まらず100種類を超える医薬品が不足し、他剤への切り替えや休薬によって健康管理にも支障を来している状況を明らかにした。
大阪協会の井上美佐副理事長(保団連理事)は、「2型糖尿病の注射薬が入手ができず、血糖コントロール不良となる事例がある」と指摘。入手できない背景には「ただでさえ後発品が不足する中、『痩せ薬』など美容目的で使用される例がある」など、適応外使用によって生じている問題を指摘した。
岡山協会の田中正子事務局長は、「不足する医薬品は、糖尿病、高血圧、抗うつ剤など命に直結するような薬にまで広がっている」と警鐘を鳴らした。
徳島協会の山﨑泰文理事は「薬剤不足の影響で、他剤への変更や減量等をせざるを得ず、ベストな治療ができない」と述べ、医療現場の深刻な状況を訴えた。

処方変更あり得る―患者へ周知を

要請では、医療現場の混乱に対して、政府として、患者・国民に医薬品供給不足の状況や、処方変更等が起こり得ることを周知するよう求めた。また、医薬品の調達、処方の変更に伴う患者への対応などで現場の負担は増しているとして、年末までとなっている外来後発医薬品使用体制加算等の上乗せ措置を供給不安定が解消するまで継続することや、次回改定で、不採算品目の薬価を適正に引き上げ供給の安定化を図り、後発品薬価が集中的に引き下がる中間年改定は廃止・改善することなどを要請した。その他、▽長期収載品の自己負担引き上げの中止▽院内・院外処方の併用の要件緩和―などを求めた。
井上副理事長は政府が検討している先発品の負担増について「薬不足の中でやむを得ず先発品に変更となった患者が負担増になるのは理不尽極まりない」と批判。その上で、「薬不足は『武器を持たずして敵に立ち向かえ』という状況だ。一刻も早くこうした事態が起きない制度設計にしてほしい」と訴えた。