大阪協会、岡山協会、四国ブロックの各協会は、医薬品の不安定供給が続く中、会員アンケートを実施。アンケート結果から診療への深刻な影響の実態が浮かび上がった。(1面から)
血糖コントロールできない―大阪協会
大阪協会は、4千の会員医療機関にアンケートを送付し、143件の回答を得た。
医薬品不足による弊害では、「他剤に切り替えたことによる弊害」が71件、「休薬せざるを得なかった」が56件、「後発から先発になり患者負担が増えた」が27件、「他剤に切り替えたが患者が拒否した」が12件あり、「小単位の注射薬が入らない」事例も24件あった(表)。
新型コロナウイルス感染症や、流行の兆しが出ているインフルエンザの治療に影響を及ぼす鎮咳剤や去痰薬の不足は深刻で「肺炎や気管支炎の回復に影響」との意見が寄せられた。
また、2型糖尿病注射薬トリルシティ、マンジャロ、オゼンピックの不足も深刻で、「糖尿病患者に必要な大切な薬なのに、全く入荷できない」「痩せ薬目的で使用するのをやめてほしい」「血糖コントロール不良。注射薬を中止せざるを得ない」「内服に切り替えたが糖尿病が悪化した」など糖尿病治療に深刻な影響が及んでいる事例や声が多く寄せられた。病院でも入荷が困難との声が届いた。供給不安定が要因で自己注射や血糖値測定などの診療報酬が算定できない問題も指摘されている。
この他、精神科領域では抗うつ剤や精神安定剤の不足で「類似薬では対応できない」「精神科患者で長く使っていた人は他剤に変えにくい」「代替薬で頭痛が悪化」との意見があった。産婦人科では月経異常の患者に投与するデュファストンや止血剤の不足で「他剤の黄体ホルモンは基礎体温を上げてしまうので排卵の有無を判定できない」「出血のある妊婦さんに投薬できない状況」といった事態が報告された。
免疫抑制剤なく入院制限も―岡山協会
岡山協会は、937の会員医療機関にアンケートを送付し、180件の回答を得た。アンケートでは、▽今年8月以降、入手困難な医薬品▽診療への影響▽3年以上続く供給不安定をどう考えるか―の3点を聞いた。入手困難な医薬品のうち、「全く入手できない医薬品」は病院と医科診療所で49種類124品目、歯科診療所で7種類12品目に上った。鎮咳剤、去痰剤に限らず、糖尿病薬、高血圧薬など薬が断たれれば症状の悪化や命の危険に晒されるものまで不足し始めている実態が明らかになった。診療への影響では、歯科の抜歯後、2時間止血できなかった事例や、精神科で代替薬にした後、症状が悪化した例、免疫抑制剤が入ってこないため、入院制限したなどの事例が報告された。現場の医師からは、「医療現場に薬がないなんて異常事態だ」と悲痛な声が寄せられた。
市販薬で対応―四国ブロック・徳島協会
四国ブロックは、徳島、香川、愛媛、高知の各協会で会員アンケートを実施。4県合計で647件の回答を得た。調査結果を報告した徳島協会の山﨑泰文理事は、「小児に処方するアセトアミノフェン細粒がなかなか入手できない。どうしても必要な患者にはドラッグストアに行ってもらう」例を紹介。「歯科治療で大変重要な麻酔や、麻酔カートリッジ部品の供給不安定がある。薬剤業者から1カ月待ちの状態だと聞いている」と窮状を報告した。