厚労省(支払基金)は、各保険者に対して医療保険登録済みのうち氏名等の不一致事例の突合・点検を依頼してます。来春目途に確認作業を終える予定しています。氏名等の不一致が約139万件あったことからこれらを保険者毎に突合・点検させます。この間、社会保険診療報酬支払基金において、医療保険者向け中間サーバーに登録された1億6000万件の被保険者情報と地方公共団体情報システム機構 (J- LIS)が管理している住民記録のデータについて、5情報(漢字氏名 、 カナ氏名 、 生年月日 、 性別 、 住所)に基づき突合・点検するとしていました。
1億6000万件の突合・点検作業の結果(12月総点検本部報告)
支払基金は9月15日時点の全被保険者情報のマイナンバーを元に地方公共団体情報システム機構 (J -LIS)に登録されている住基上の5情報 (漢字氏名 、 カナ氏名 、 生年月日 、 性別 、 住所)を照会し 、 中間サーバーに登録済の加入者情報と突合していました。その結果、「生年月日・性別不一致」が2779件、「氏名等が不一致」が約139万件あったことが12月12日の総点検本部で報告されました。
参考: 政府の総点検で不安やマイナトラブルは解消されていない!! – 全国保険医団体連合会 (doc-net.or.jp)
保団連は支払基金の突合・点検作業について異体字(斎、髙、邊)の突合から実質的に除外されているため、「5情報による突合・点検とは言えないのではないか」「漢字氏名において異体字の違いによる不一致事例も割り出して突合・点検しないと漏れが出てしまう」と厚労省に追及しました。突合点検作業のロジックも含めて点検結果等の情報公開を要求しています。
【マイナンバー総点検】氏名等の不一致は139万件だけじゃない!? – 全国保険医団体連合会 (doc-net.or.jp)
原則「5情報の一致」を確認 「氏名・住所等の表記の揺れ」は保険者判断で「一致」としてよい
保険者による点検突合作業は目視による確認が基本となります。 突合結果ファイルを参照し 、 5情報が不一致の事例 について 、 個人番号の登録に誤りがないかを確認します。
マイナンバーに誤りがないと判定するための条件は、 原則5情報の一致とされました 。例外として「氏名や住所の不一致の原因が表記ゆれの範囲と判断できる等 、保険者の目検や申請書の確認等により同一の情報・ 同一人物と判断できる場合は 、 これを一致するものとして取り扱って構いません」とされました。判定基準も示されていないため保険者の判断で「不一致」が「一致」に代わる可能性があります。
現場丸投げで膨大な作業を強いる 目視による点検作業
9月15日時点で5情報の確認で疑いがある事例は内容に応じて「資格情報」、「医療情報」の閲覧が停止されています。保険者による不一致点検で間違いがないか確認された後に閲覧停止措置が解除されています。
厚労省(支払基金)は、「保険者からの報告が遅延すると、 不一致事例に該当する対象者の閲覧停止の状態が継続し 、 不利益な状態が解消しないことから 、 保険者においては不一致事例の速やかな確認および実施機関への報告を実施いただきますようお願いします」と案内しました。
今般の総点検は5情報の突合・点検でシステムでの作業ではなく、目視(目検)による膨大な作業になります。人的・財政的措置もない保険者も多く、全保険者による目視(人海戦術)による作業を強いるものです。
5情報による点検・突合は非常に神経を使う作業です。マイナンバー紐づけ作業と同様で1件1件慎重かつ丁寧な突合・点検作業が必要です。「2024年春目途に点検を終了」させるというスケジュールは、2024年秋に健康保険証を廃止するという政府の方針に合わせたものでしかありません。何の相談もなく自治体や保険者に突合作業を丸投げし、押し付けることは大問題です。
しかも、「被保険者の不利益」を理由に保険者に速やかな報告を強いています。急がせた結果、突合・点検に漏れやミスが出かねません。結果としてマイナンバーの紐づけミスを見逃すことになれば、点検対象となった方に重大な不利益をもたらすことになります。政府は、何のための膨大な点検・チェックを自治体・保険者に依頼するのか?その目的と対応が本末転倒していると言わざるを得ません。
過去情報の不一致は突合・点検しなくてよいのか?
保険者への点検・突合依頼で提供したデータには過去の情報(令和10年1月以降の被保険者情報)も含まれています。過去の医療情報を見る上で欠かせないデータとなりますが、過去情報でマイナンバーの紐づけミスが発生していることから過去分の4000万件もふくめて総点検の対象とされました。資料でも「資格喪失者についても 、 不一致事例に該当していれば 、 閲覧停止となります 」と記載しています。
しかし、保険者への依頼では「 資格喪失者については 、 本人への確認が困難であることから 、 今般の点検対象には含まれません 」と案内しています。
過去の医療情報の不一致事例について全体で何件あったのか、確認をどれがどのように実施するのかについて、厚労省は情報公開はおろか医療保険部会等でも何ら説明していません。 政府が推進する医療DXでは、患者自身が過去の薬歴や医療情報を閲覧でき、医療の質向上につなげられるとしています。
何の説明も情報公開もされない中で本当に大丈夫なのか国民の不安はますます広がるばかりです。