厚労省は、8カ月連続で低迷するマイナ保険証の利用率を打開すべくなりふり構わずマイナ保険証推進キャンペーンを始めています。医療機関等に多額の補助金を投入するとともに、2月からは、CM・パンフ、動画などを開始します。
推進計画では、国等が所管する国立病院や自治体病院でマイナ保険証利用率を向上させる数値目標を設定させます。具体的には、病院窓口にマイナ保険証の専用レーンを設定させたり、窓口に専用職員を配置して、マイナ保険証利用の声掛け等を行わせるとしています。総務省は、この間、全国890の公立病院等に対し、マイナ保険証推進を求めるとともに、補助金をチラつかせて利用率向上に向けた取り組みの調査を繰り返し実施してきました。
厚労省からの要請を受け、さらに推進するため、好事例や補助金等の案内を求める通知(12月25日、1月25日)を出しました。公立病院等でのマイナ保険証利用率向上の目標設定を迫り、2月25日までに報告するよう求めています。
専用レーンの設置、窓口での職員配置による声掛け
厚労省は、「公的医療機関等においては、現状に応じた具体的な目標を定め、関係職員間で共有し、管理者の方による進捗管理を定期的に実施し、利用率の向上に向けた取組を行う」と公立・公的病院を動員し患者・国民にマイナゴリ押しを進めています。
総務省も「公立病院においては、マイナ保険証の利用率(マイナ保険証利用人数/レセプト枚数)の目標設定について、厚生労働省所管医療機関の取組も参考に、ご協力をお願いします」と圧力を掛けています。窓口に職員を配置し、患者の方からの質問に即応できる環境の整備などの利用率向上の取組や、できる限りマイナ保険証の専用レーンの設定を求めています。しかし、専用レーンの設置で窓口が渋滞し、業務が混乱する懸念から予定通り進捗していないようです。
窓口で職員を配置し来館された患者に「マイナンバーカード(マイナ保険証)お持ちですか」と声掛けさせます。マイナカードや、マイナ保険証の利用は任意であり、5000万人はマイナ保険証を持っていません。このような状況で、公立・公的病院が患者に対して「マイナカードお持ちですか」と声掛けさせることは、受け止めによっては、マイナ保険証がないと保険診療が受けられないとの誤解を招く可能性があります。医療機関窓口でマイナカードを持っていない患者さんとのトラブルに発展することが強く懸念されます。
現行の健康保険証による資格確認が可能な状況でマイナカード(マイナ保険証)ありきで医療機関から患者に利用を押し付けることは法令に反します。医療機関を動員し患者にマイナ保険証利用を促す推進策は中止すべきです。
過大な利用目標の設定
厚労省は公立病院等に対して以下の目標設定を参考として示しています。
(1) 原則、各病院は、令和5年10月時点の利用率(マイナ保険証利用人数/レセプト枚数)から、令和6年5月末時点で20%pt超、6月以降11月時点で50%pt超上昇させるよう設定すること。
令和6年5月末時点で20%pt超、6月以降11月末時点で50%pt超上昇」の考え方
例えば、現在の利用率が10%であったとすると、「+20%pt」→「30%」、「+50%pt」→「60%」という目標設定となる。
(2) 外来患者数の多い医療機関は(1)に加えて、2,500件/月を超える目標を設定すること。
「1施設当たりのマイナ保険証利用件数を2,500件/月」とする考え方
顔認証付きカードリーダー(CR)1台の増設支援が、2023年10月末から2024年3月末までのいずれかの月のマイナ保険証の月利用件数の総数が500件以上の病院であることを踏まえ、現在3台設置していても3台のCR増設の補助を達成できるように設定する。このため、「外来患者数の多い医療機関」としては、外来窓口に6台のCRを必要とすると判断されるような医療機関について、設定すること(任意目標であることに鑑み、自身の医療機関の現状に照らし判断すること)。
利用率が低迷しているのは、メリットがなく面倒だからです。【#保険証廃止勝手に決めるな】医療機関を動員!? 厚労省の強引なマイナ保険証推進策 – 全国保険医団体連合会 (doc-net.or.jp)
マイナ保険証利用率を5月末までに20%上昇、11月末までに50%上昇させる目標を達成することは不可能に近く、強引な声かけは患者・国民の反発を招くだけです。マイナ保険証を持参しないと医療が受けられないとの誤解から新たなマイナトラブルに発展しないか大変危惧します。