【2024年診療報酬改定】強引なマイナ保険証推進 補助金だけでなく診療報酬も追加投入

 政府は、マイナ保険証の利用促進に向けて1月からマイナ保険証の利用率が向上した割合に応じて支給額を増加させるインセンティブ補助金を開始しています。利用率上昇に応じて合計217億円が医療機関に投入されています。

それだけではなく、6月診療報酬改定で▽マイナ保険証の利用率が一定割合に達している▽電子処方箋や電子カルテ標準システムの導入など政府が進める医療DXを推進した医療機関に対して「医療DX推進体制整備加算」を初診時に算定できるようにしました。

「療養の給付」とは関係ない加算点数

「医療DX体制整備加算」は政府が推進する医療DXのメニューの体制整備を行う予定の医療機関が算定対象となります。①オンライン資格確認の体制整備、②オンライン請求の実施は必須事項です

が、③電子処方箋の導入は令和7年3月末までの経過措置④電子カルテ情報共有サービスの導入は令和7年度9月末までの経過措置がそれぞれ設けられており、医療DXの「体制整備予定」でも算定できます。

導入1年から経過しても導入率が6%に過ぎない電子処方箋や、システムや仕様が固まっていない電子カルテ共有サービスの実装等は将来的な話であるにも関わらず「療養の給付」に係る体制整備費用として算定できるようにすることは保険料の目的外利用そのものです。

保険証提示した患者からも徴収

「マイナ保険証利用実績を一定程度有していること」との要件(具体的な数値は未定)について適用時期が2024年10月から開始するとされました。診療報酬改定月の6月から9月までの4カ月間は当該医療機関を受診した患者が紙保険証を提示した場合でも初診で8点(80円)が算定できてしまいます。

初診で医科外来を受診し、院外薬局で薬を処方された場合、初診時に医科は8点(80円)、調剤で4点(40円)の12点(120円)が追加で徴収されます。3割負担の患者だと窓口負担が40円追加で取られます。

保険証を提示した患者は、医療DXとは何の関係もないのに負担増となることで医療機関と患者のトラブルに発展しかねません。医療機関側も経過措置も含めて実際にシステムを整備していない中で患者負担となることの説明は困難です。届出医療機関は院内掲示及びホームページ等で公表する必要がありますが、ホームページでの公表が義務化されるのは令和7年6月からです。気づかずに受診した場合、負担増となります。補助金や診療報酬という「にんじん」をぶら下げて、患者とのトラブルを招く強引なマイナ保険証推進策は中止すべきです。