急性期要件厳格化で中小病院の2割が振り落とされる
厚労省は診療報酬改定答申で入院医療について高齢者の救急搬送先を急性期から締め出す方針を打ち出しました。
<急性期入院医療に関する算定要件が厳格化>
①急性期7対1の平均在院日数が2日短縮
②医療等必要度「救急搬送後入院」の評価基準は5日から2日に変更、看護必要度の評価基準のうちB項目(「患者の状態」)は廃止
③必要度に該当する患者割合は「A:3点、C:1点以上」で20%、「A:2点、C:1点以上」で27%と2通りに分け
一般病院は大幅赤字危惧
医療経済実態調査では、一般病院では、コロナ後(20~22年度)はコロナ補助金を含めても黒字1.8%の低いとなっています。22年度は黒字1.4%にまで落ち込んだ上、23年度は補助金縮小や物価高騰などから-10.3%の大幅な赤字が見込まれる危機的状況にあります。病院施設数(2022年)は8156施設であり、うち200床未満の中小病院が5708施設と70%を占めています。急性期7対1を算定する中小病院(200床未満)では、2割前後の1100施設が新しい基準を満たせなくなり、大幅な減収となります。赤字経営を余儀なくされている中小病院経営に大きな影響を与えます。「急性期」に基準に合致しない患者さんが急性期病床から振るい落されることも懸念されます。
厚労省は、代わりの受け皿として、10対1相当の「地域包括医療病棟入院料」が新設されました。届出対象病棟は急性期一般2~5だが、既に地ケア病棟、回リハ病棟を届け出ているところも多いため、10対1の病院は新たな選択肢を迫られるとともに、患者の受け入れにも大きな転換となります。
物価高騰への対応や看護職員など医療従事者の賃上げ・処遇改善・確保には程遠い状況になります。コロナ禍を教訓に、新たな新興感染症に備えて、平時から余裕のある医療提供体制を構築することが必要です。切捨てだけでは医療提供体制の強化することはできません。