厚労省は、昨年12月20日に2024年度の診療報酬改定率を決定した。医療従事者の賃上げ対応を含んで「診療報酬(本体)」を+0.88%としたが、「薬価等(薬価、材料価格)」は-1.00%として、全体で-0.12%と6回連続の実質マイナス改定となりました。 「診療報酬(本体)」+0.88%から賃上げ対応分を除いた技術料引き上げ分は、わずか+0.18%となります。
わずか0.29%で歯科医療充実は困難
賃上げ対応では、一般産業平均水準への改善に程遠いばかりか、地域医療を充実させる技術料引き上げ分も不十分です。医療従事者の労働条件の改善、医療の充実を正面から捉えた改定とは到底言えません。
歯科分野は、賃上げ対応を含み+0.57%となりました。賃上げ対応分を除くと技術料引き上げにあてられる改定率は、2022年改定の+0.29%を下回ると推定されます。
歯科基本診療料の大幅引き上げ 基礎的技術料の適正評価こそ
新興感染症を含む感染対策やリハビリテーション・栄養管理・口腔管理の充実のための連携等をテーマとした改定がされましたが、歯科における基本診療料の大幅引き上げ、基礎的な技術料の適正な評価は置き去りにされたままです。低歯科診療報酬が長らく続いているが、技術料が適正に評価され、医院経営が安定することが重要です。コロナ禍の経験をふまえれば、より一層、平常時の経営安定の重要性が浮き彫りとなりました。患者が望む医療を保険診療として提供でき、歯科医療機関も保険診療で医院経営が十分成り立つ診療報酬体系の整備こそ必要です。
歯科医院経営の実態
歯科収支差額(最頻値階級)は 依然として低位で推移
医療経済実態調査の損益差額階級別施設数を見ると、個人立では「500万円以上~750万円未満」が最も多く、最頻値(48施設)となった。前回調査では、最頻値が「250万円以上~500万円未満」であり、結果としては前回から階級がひとつ上がった格好となりました。しかし、「~500万円未満」までで全体の25.6%、「~750万円未満」までで全体の42.7%を占め、全体的に低位に推移している状況は変わっておらず、依然として歯科医院の厳しい経営状況から脱していません。歯科の地域医療を守るためには、歯科診療報酬の大幅引き上げこそが唯一の解決策です。
歯科診療所(個人立)
医業 収益 |
医業・介護費用 | 損益比率 ()内は21→22年 |
コロナ関連補助金を 含んだ損益比率 ()内は21→22年 |
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給与費 | ||||||
歯科診療所(個人立) | ▲1.6% | +0.1% | +0.5% | 25.9%(▲0.8%) | 26.2%(▲1.4%) | |
最頻値 | ▲3.9% | ▲2.4% | +0.6% | 20.4%(▲0.6%) | 21.1%(▲1.4%) | |
<注> 調査結果には、2023年3月末までに終了する直近2事業年(度)の数値、新型コロナウイルス感染症関連補助金を含む数値などが記載されている。なお、特に断りがない場合、伸び率等の比較は、2022年度において前年度(2021年度)と比較。
※新型コロナウイルス感染症関連補助金とは、重点医療機関体制整備、病床確保、感染拡大防止支援、雇用調整助成金、持続化給付金、家賃支援給付金等を指す。自治体・系統機関も含む(慰労金は除く)。