資格確認方法がなんと8種類に! 河野太郎デジタル大臣「保険証廃止後は便利になる」は医療機関に混乱をもたらすだけ

3月21日の参議院地方デジタル委員会でマイナ保険証のスマホ搭載や保険証廃止による医療現場の影響について野党が河野太郎デジタル大臣等を追及しました。

伊藤岳参議院議員は、マイナ保険証のスマホ搭載次期マイナカードが次々と提案される中で、「患者・国民・医療者が全然追い付いていけない」と指摘。

「スマホ搭載のマイナ保険証を読み取る顔認証付きカードリーダーなど医療機関の負担や患者への説明など大きな負担となる」「利用率が低迷する中で保険証廃止は困難」と指摘しました。

また、伊藤議員は、健康保険証廃止後も資格確認方法が8種類も残ることから医療現場の対応は大混乱に陥ると指摘し、河野太郎デジタル大臣の認識を質しました。

河野太郎デジタル大臣は、保険証廃止を前提に「早くマイナ保険証に慣れてもらうことが大事」「早くマイナ保険証に対応すれば病院にとってデメリットはない」「スマホも使えて世の中大変便利になる」と医療現場の混乱や懸念を考慮せずただただマイナ推進を医療機関に迫っています。

保険証廃止後も9種類も資格確認手段がある

これまでは健康保険証1枚で、患者と医療機関双方に実務的な支障なく保険診療が受けられました。ところが、マイナンバーカードと健康保険証の一体化と健康保険証廃止により資格確認の方法が9種類に増えました。

※3月5日閣議決定によりマイナ保険証のスマホ搭載が法改正事項に盛り込まれたため3月24日現在で9種類となります。

被保険者の資格確認方法(24年3月24日現在 保団連作成)

1健康保険証24年12月2日廃止後も1年間の猶予措置
2マイナ保険証通常のマイナカードと被保険者情報を紐づけたマイナ保険証
3顔認証マイナカード通常のマイナカードの管理が困難な方向けの暗証番号機能にロックし、保険証機能だけを残したカード
4次期マイナカードと被保険者情報を紐づけたマイナ保険証26年以降に発行予定の次期マイナカードと被保険者情報を紐づけたマイナ保険証
5マイナ保険証をスマホに搭載したものマイナカードの電子証明書をスマホに搭載したもの。保険証として利用は法改正が必要で25年以降となる
6資格確認書マイナ保険証の保有していない方が保険者に申請して交付される。記載内容は健康保険証と同じ
7マイナ保険証+資格情報のお知らせ A4判マイナ保険証保有者に各保険者から交付。A4判1枚。
8マイナ保険証+被保険者情報(PDF)をスマホにダウンロードマイナポータルから被保険者情報をPDFをスマホにダウンロード
9マイナ保険証+資格申立書顔認証エラー、資格無効等により医療機関でマイナ保険証が使えない場合に患者が記憶で記載する書類

※要配慮者はマイナ保険証を資格確認書のダブル持ちが可能となりました。当該者は医療機関受診時はマイナ保険証もしくは資格確認書を両方が使用できるとされています。

8種類の資格確認手段への対応を医療現場に強いることになります。河野大臣は医療機関ごとに発行されている診察券も1つになれば便利と述べましたが、デジタル庁がシステム改修の補助金を設けているに過ぎない段階であくまで仮定の話を前提としています。

「カードリーダーの読み取りエラーで職員がかなりの時間を割かれた」「ただでさえ多忙な診療時間中に、マイナ保険証の操作説明に、職員の手が取られるのはきつい」など診療継続に支障が出ています。

顔認証付きカードリーダでスマホは使えるのか?

厚労副大臣は「スマホ搭載したマイナ保険証を読み取る機器の交換は不要」と答弁しましたが、ソフトウェア変更も含めて医療機関に新たな負担が生じることが分りました。また、「過度な負担とならないようデジタル庁と調整していく」と答弁するなど医療機関に新たな負担が生じることを示唆しました。

スマホ搭載のマイナ保険証は顔認証付きカードリーダー本体がそのままで本当に使えるのでしょうか? CANONが提供している顔認証付きカードリーダーにスマホは入らないため読み取りが困難ではないかとの危惧も出されています。  少なくとも医療機関に設置された顔認証付きカードリーダーでスマホ搭載のマイナ保険証を使用できるのか検証した上で提案すべきです。

 

3月21日参議院地方デジタル委員会審議録

【スマホ搭載・マイナ保険証の導入時のコスト負担】

伊藤岳議員:スマホ搭載されるマイナ保険証は医療機関で設置されている顔認証付きカードリーダーで読み取れるか?

厚労副大臣:厚労省としてスマホによるマイナ保険証利用が可能となるよう検討している。

伊藤岳議員:現在の機器では現段階ではできないのか。そうなると、オンライン資格確認システムなどの改修が必要となるが改修のために新たな費用が発生する、医療機関等にも現在設置しているカードリーダーの改修や交換が求められる。医療機関等のカードリーダーの改修や交換に係る費用、ランニングコストなどはどこの負担になるか?医療機関の負担になるか?

厚労副大臣:基本的には、現在のマイナンバーカード及び次期マイナンバーカードに代わっても、医療機関における顔認証付きカードリーダーの交換は必要ない。交換に伴う費用は発生しない。

伊藤岳議員:改修費用は発生するはずだ。マイナ保険証とスマートフォンの一体化によって医療機関等が新たに負担することになる費用について、見積りはあるか?

厚労副大臣:次期マイナンバーカードは顔認証付きのカードリーダー(ハード)は基本的に変更なく、ソフトウエアの対応で対応できる。医療機関に対する負担が過重なものとならないように、今後、デジタル庁とも連携して検討していく。

伊藤岳議員:過重かどうかは別としても、医療機関の負担になる。今の段階でどれぐらいの負担になるか見通せないということではないか。カードリーダーの設置に当たっては、当初のカードリーダーの設置に当たっては、医療機関は、業者との事前のすり合わせだとか、カードリーダー設置工事のために、臨時の休診など手間が取られた。今回のカードリーダーの改修などに当たっては、同じようなことにならないか?。

厚労省日原審議官:次期マイナンバーカードは医療機関等における顔認証付きカードリーダーの交換を必要とせず、医療機関等の対応は過重なものとならないよう、今後、デジタル庁とも連携して検討を進めてまいりたい。

伊藤岳議員:25年度からのマイナ保険証とスマートフォンの一体化、そして26年度からの新マイナンバーカードの導入など次々と開始されようとしている。医療機関も患者・国民もなかなか追い付いていかない。

河野太郎大臣:新しいカード、これは今のマイナンバーカードと暗号方式が変わるために新カードを導入する。暗号方式が変わったからといって、現在のカードリーダーで顔認証することに何ら変わらない。スマートフォンにこのマイナンバーカードの電子証明書を搭載をする、これもカードリーダーでNFCで読み取る。次々に新しいサービスができて、マイナンバーカードを持たなくてもスマホで病院が受診できる、あるいは、高齢者の医療助成の受給権や子供の小児医療の受給権もスマホに搭載することになれば、もうスマホ一つでそうしたものもできる。診察券も統合することができれば、もう一つで全部受診をすることができて世の中大変便利になる。

 

【8パターンの資格確認方法で医療現場の混乱】

伊藤岳議員:患者さんが集中する診療時間に各自が利用する別々の資格確認方法ごとに職員がカードの操作の説明だとか時間が取られる、今でもきついのに、さらに、資格確認方法がスマートフォン掲載だとか新カードだとか更に増えていけばもうため息が出ると埼玉の医療機関は述べている。政府が示している保険証廃止後の患者の資格確認方法を一覧にしたものだが、なんと現段階で8パターンある。健康保険証、マイナ保険証、暗証番号なし、マイナンバーカード、新券面マイナンバーカード、資格確認書、資格情報のお知らせ、資格情報のお知らせスマホ版、被保険者資格申立書のこの8つです。

厚労省・日原審議官:提示された資格確認方法の一覧の中では、それのみでは資格確認ができないものもある。資格確認ができるものと資格確認ができないものと両方ある。

伊藤岳議員:8パターン資格確認方法で医療機関がもう本当にあっぷあっぷの状態だ。たくさんあるこの患者の資格確認方法の説明などで、ただでさえ忙しい医療機関などの現場のスタッフを更に駆り立てていくことが好ましいことだと考えるか。

河野太郎デジタル大臣:例えば、今の健康保険証は廃止されるから、多くの方がマイナ保険証でやっていただくことになる。特に問題になるとは思っていない。スマホで持ってきてやっていただく方も出るだろう。12月2日が健康保険証の廃止期日だが、保険証は、最大で一年間、廃止後も有効だ。ただ、いずれなくなるから、医療機関には、早いうちにマイナンバーカード保険証で顔認証をしていただければ、もういざ保険証が廃止になったときに、みんながそちらに移行していただいていれば病院にとって何らデメリットは起きない。なるべく早くやっていただくことが大事だ。

伊藤岳議員:医療機関の大多数がこれ反対の声上げていますし、利用率だって上がらないじゃないか。政府は、マイナ保険証の利用率を上げた医療機関等に対する支援金制度つくりました。医療機関に取得、利用を競わせる制度だ。マイナ保険証の取得、利用が進まないのは、医療機関が、医療機関の努力が足りないと言わんばかりの制度じゃないか。

厚労副大臣:令和5年度の補正予算で、医療現場のマイナ保険証の利用勧奨のインセンティブとなるようマイナ保険証の利用率の増加量に応じた支援金を交付している。窓口におけるマイナ保険証の利用方法やメリットの説明など、きめ細やかな利用勧奨を行った医療機関では利用率が高い。

伊藤岳議員:医療機関の努力が足りないと言わんばかりの制度じゃないか。マイナ保険証の利用率と利用件数の実績でわざわざランクを分けて医療機関に支援金を出すという仕組みだ。マイナ保険証の取得、利用を普及させるのはやめるべきだ。

厚労副大臣:マイナ保険証利用で薬剤情報、医療情報等が連携をされており、窓口負担の限度額を確実に免除できる。厚労省は、国民に是非使ってほしいため取組を進めている。

【顔認証マイナカード】

伊藤岳議員:顔認証マイナンバーカードは、暗証番号を設定しないため、マイナポータルを利用できない。コンビニ交付などのサービスが利用できない。政府は、国民に対してマイナンバーカードやマイナ保険証のメリットを伝えていくのだと言ってきたが、顔認証マイナンバーカードを使う高齢者の方、施設に入所されている障害者の方、またそれを支えるケアスタッフから、カードや暗証番号の管理はとてもできないとの声がある。こういうカードを使ってくれと、これ政府が宣伝してきたメリットの部分は利用できないじゃないか。

河野太郎デジタル大臣:メリットを享受したければ普通のマイナンバーカードを取っていただければいい。マイナカードを管理できないから困るということで顔認証のマイナンバーカードを発行している。暗証番号を使ってメリットを享受したいという方は普通のマイナンバーカードを取っていただくだけだ。

伊藤岳議員:ひどい答弁だ。障害者の団体、家平事務局長が、こうした差別的扱いに私たちは怒りを禁じ得ないと言われていた。これを深く考えるべきだと強く求めていく。