【7月17日中医協】マイナ保険証が進まないわけ

厚労省は7月17日の中医協でマイナ保険証の利用が進まない理由に関する調査結果を公表しました。マイナ保険証の利用が進まない事例は以下のような理由によります。

 

病院

<マイナ保険証の利用が進みにくい事例について>
○子ども病院なので、患者は全て子ども。子どもの場合、顔認証が実施しづらく、マイナ保険証を保有していない子どもが多い。また、公費補助(自治体による乳幼児医療無償化)との連携ができておらず、結局公費の受給証も出すことになるため、現状では患者にとってマイナ保検証を出してもらうことのメリットを感じづらい。
○医師、事務職員にどんなメリットがあるのか理解できていないため、窓口での声掛けが進まない。
○患者へのサポート等を含めると、マイナ保険証利用の方が時間を要することもあるため、従来の保険証を利用される傾向にある。
○患者の中にはそもそもマイナ保険証の利用登録をしていない人も多い。また、マイナ保険証を使う際の情報流出が怖いといった意見も寄せられる。
○患者側の理解が乏しく、窓口で声かけをしても効果が上がらない。

<その他>
○利用者資格について、公費関係(難病、透析等)についてはマイナ保険証とリンクしておらず、紙でしか確認できない為、声かけをしても反応が薄い。
○セキュリティ上の懸念から、オンライン資格確認システムと院内の医療情報システムが連携しておらず、職員の負担増加懸念から積極的なマイナ保険証利用の推進は行えていない。
○加算の施設基準のうち、電子処方箋については、ほとんどが院内処方であり、費用対効果を考えた際に電子処方箋の発行状況を取れるかどうかわからない。また、人的資源への指導や投資に対して、それに見合った経済的効果があるか検討中であり届出できない。
○加算の施設基準のうち、診察室等でマイナ保険証を利用して取得した診療情報を活用できる体制の要件や、電子処方箋の要件について、現状のシステムは未対応。高齢の医師が多いことから運用変更にも手間がかかり、システム改修にも費用がかかることから、対応できず届出に至っていない。

医科診療所

<マイナ保険証の利用が進みにくい事例について>
○一人一人にマイナ保険証の活用のお願いや説明をすると受付けが遅れ、診療もスムーズに行えず、ひいては患者さんの待ち時間も長くなるため。更に現状では保険証とマイナの両方が混在しているため受付の処理業務が複雑化し、ミスも起こりやすくなる。
○本人確認を顔認証で出来なかった場合、暗証番号の入力をお願いしているが、暗証番号を覚えている患者が少なく、受付業務がスムーズに行えない。
○当院は高齢者の患者が多いが、高齢者は独自での操作が難しく、使ってもらう際も介助・説明が必要となる。
○カードリーダーがエラーを起こしてしまい、患者がマイナ保険証の使用に嫌気が差してしまう。

<その他>
○発熱外来は外で受付するため、物理的に紙保険証での対応となっている。
○オンライン診療が多いが、患者側の環境でマイナ保険証の読み込みに対応しておらず、利用率が上がらない。
○加算の施設基準のうち、診察室等でマイナ保険証を利用して取得した診療情報を活用できる体制の要件、電子カルテ情報共有サービスの導入要件について、紙のカルテを電子カルテに移行するシステムが分からず、どの業者に依頼すればいいのかすら分からない為、移行できていない。マイナ保険証の時のように、メーカーを絞り込み国で決まったシステムを導入したい。
○電子処方箋の要件について、現電子処方せんシステムをポータルサイト資料で確認したが、一人の患者につきデータと紙の両方で運用が必要と解釈した。更に、医師の処方入力も今より多くの処理が必要と感じ、対応が難しいと考えている為、届出ない。

歯科診療所

<マイナ保険証の利用が進みにくい事例について>
○患者がマイナンバーカード自体を保有していないため、医療機関がマイナ保険証の利用を呼びかけても、利用率が上がらない。
○患者がマイナ保険証へ不信感を持っているため、また、マイナ保険証のメリットが患者に浸透していないため、医療機関がマイナ保険証の利用を促進しても、利用率が上がらない。
○他の医療機関では健康保険証を使用している患者に対して、マイナ保険証の提示を求めても、患者の理解が得られにくい。
○現行の健康保険証でも困らないので、マイナ保険証を利用が進まない。
○当初カードリーダーのエラーが多かったことから、またエラーが起こるのではないかと利用に消極的になってしまう。

<その他>
○公費補助とマイナ保険証が連携できていないため、マイナ保険証を出してもらってもあわせて紙も出してもらう必要があり、マイナ保険証のメリットが感じられにくい。

薬局

<マイナ保険証の利用が進みにくい事例について>
〇同一法人内で同様に声掛け等の取り組みを行っているにもかかわらず、地域の医療機関等の対応に差があるため、各薬局での利用率の伸び方に差が生じてしまっている。
〇処方箋を交付した医療機関でマイナ保険証の利用が進んでいない場合、薬局で声かけをすると、受診時に求められなかったことを薬局で求めることに対して疑問の声があり、その説明に時間を要することがある。薬局のみの働きかけでは限界があり、医療機関側での利用推進をあわせて行わないと利用率は向上しない。
〇通常の受付窓口以外ドライブスルー形式等で対応する方式をとっている薬局では、1台しかないカードリーダーを受付の都度移動することができないため、マイナ保険証での受付ができず、利用率が伸びない。
〇薬局では患者以外の方代理人が来局することも多いが、その場合、マイナンバーカードが利用できない。

<その他>
〇これまで薬局では処方箋を受付に提出することで済んでいたが、マイナ保険証で受付処理を行うことは、利用を促す説明も含め、受付時間が多くかかることになり、薬局における受付対応時の患者の動線の工夫が必要。
〇システムの入れ替えやシステム障害への対応などで一定期間カードリーダーが使用できない場合に、マイナ保険証の利用率が一時的に低下することがある。
〇マイナ保険証の利用促進のためには、DXを整備する必要性や効果を薬局の薬剤師が理解する必要がある。薬剤師が併用薬剤の禁忌に気づけるなど患者の利益にもつながった事例もあるが、現状は周辺の医療機関では電子処方箋がほとんど交付されておらず、システムを導入するコスト増、紙の処方箋と電子処方箋が併存する時期の薬局業務の大幅な負担増・混乱の印象を持ってしまっていることが多い。