12月2日の健康保険証の新規発行停止以降もマイナ保険証トラブルが相次いでいます。スケジュールありきで強引かつ拙速にマイナ保険証への一体化への作業を押し付けてきた政府の責任は重大です。
青森で1393件の誤登録
12月5日、青森県六戸町で町民671人分の国民健康保険の負担割合を誤って登録されていたことがわかりました。12月2日と3日の2日間、本来2割負担の659人分。本来10割負担の12人分がいずれも、3割負担で登録されていました。さらに、12月6日、青森県中泊町は、町民722人の国民健康保険の負担割合を誤って登録していたことを明らかにしました。誤った情報は、本来2割負担の718人分、本来10割負担の4人分がいずれも3割負担で登録されていたということです。
徳島で最大7493人分の資格確認エラー表示
12月4日、徳島県阿南市は3日から国民健康保険の加入者がマイナ保険証を医療機関に提示した際に、誤って「資格を喪失している」というエラーが表示される不具合が相次ぎました。
最大7493人がエラー表示の“被害”にあったとみられています。
12月2日以降に判明したマイナ保険証トラブルの報道
マイナ保険証移行作業で医療費の負担割合を誤登録 青森 六戸町 | NHK | 医療・健康
マイナ保険証の誤登録 中泊町でも722人分 | ABAニュース
マイナ保険証 利用の際エラー表示の不具合 徳島 阿南 | NHK | 徳島県
保険証ないとミスにも気づけない
青森県六戸町町民課に誤登録が発覚した経緯を聞きました。
①市民(患者)からの町への問い合わせで窓口負担割合の誤登録に気づいた。
②この市民(患者)は医療機関を定期通院しており、11月は保険証(2割負担)で医療機関を受診。特に問題がなかった。
③12月2日にマイナ保険証(3割)で医療機関を受診した際に、本人は気づかなかったが、医療機関側が保険証と照らし合わせて負担割合の齟齬に気づき患者に伝えたことで発覚した。
オンライン資格確認のデータそのものが間違いだった場合、健康保険証の券面と照らし合わせて確認しないと医療現場ですらミスに気づくことができません。券面発行を停止すれば何が正しいか不明なまま、患者や医療機関に不利益が生じることになります。また、今回の誤登録や資格確認できないトラブルは、12月2日からのマイナ保険証への一体化に伴う作業のミスが原因とされていますが、政府がスケジュールありきで拙速に市町村国保の現場に迫ったことで生じたことは明らかであり政府の責任は重大です。
マイナトラブル「窓口負担の誤登録」は改善してない
保団連が実施した5月以降のマイナ保険証トラブル調査では負担割合の誤登録が少なくとも10%・977医療機関で確認されました。
5月以降のマイナ保険証トラブル調査(1万2700医療機関) 88%が保険証「存続を」 トラブル70%が経験 – 全国保険医団体連合会
負担割合の齟齬により保険請求した場合、「返戻」、「事後精算」になり、患者さん、医療機関の双方に多大な影響が生じます。
負担割合の齟齬については、昨年9月に当会が調査をした際に全国の自治体で負担割合に誤りがある事例が発生していることが判明しました。厚労省としても実態を把握し、令和5年 10 月 27 日第 169 回社会保障審議会医療保険部会で対応策を出しています。しかし、対応後の現在も約1割の医療機関で負担割合の違いが発生しており、問題は解決していません。特に7月末で一斉に保険証が切り替わる後期高齢者の負担割合が8月に誤りが多発するなどの事態も起きています。負担割合以外にも、国保や後期高齢者で有効期限の表示がされないなどの事例も多数寄せられました。1~2年ごとに保険証が切り替わり、また収入によって負担割合が1~3割と変動する 70 歳以上の国保、後期高齢者について、自治体での事務処理やシステム改修などの対応ができていない実態がうかがえます。今後自治体では、マイナンバーカードの更新手続きや登録解除への対応、資格確認書の交付など、さらなる膨大な事務処理が求められます。自治体の現場が対応しきれるのか強く懸念されます。
【事例】
・負担割合が違ったことで、後日、再請求した所、お叱りをうけた。(東京・医科診療所)
・負担割合が違っており患者さんに次回受診の際、説明とおわびをして差額分もらわないといけない(福岡・医科診療所)
・国保(1 つの市)の高齢者(70~74 才)の負担割合の表示がいっさい出なかった(福岡・医科診療所)
・後期高齢の方で、マイナ保険証で認証した割合で保険請求したが割合が違い、返戻がきた(愛知)
・8月になって、後期高齢の割合誤りが多い。市役所に問い合わせても「わからない」と言われる(岐阜・病院)
・高齢、後期の3割は、ほぼ1割になっている。(大阪・医科診療所)
・後期の方の負担割合が不明(東京・医科診療所)
・保険証切りかえの前期高齢者の方が負担割合が(社保)わからないとの事でマイナで確認したところ国保の情報が出てきた。会社へ確認し、取得日を教えていただき社保で請求した。
・後期→8/1~の割合の変更がうまくいっていない(大阪・医科診療所)
・後日返戻で有効期限がわかりました。(大分・医科診療所)
・有効期限と割合については対応していないように思う。確認に手間がかかる。(山梨・医科診療所)
・保険証が月の途中で変更の場合、開始日が分からない、有効期限が分からない(茨城・病院)
・国保、後期高齢の保険証の有効期限が表示されない(静岡・歯科診療所)