がん患者からは高額療養費の限度額引き上げで「治療を断念せざるを得ない」など悲痛の声が上がっています。全がん連など患者団体は、ウェブ署名を呼び掛け7万7千人から賛同が寄せられるなど急速に引き上げに反対する世論を広がっています。政府が昨年末に固めた高額療養費の限度額引き上げは大紛糾しています。2月4日の予算委員会でも立憲、共産など野党から石破首相や福岡厚労大臣が追及を受けました。
「与党が一部修正」で幕引きは許されない
福岡厚労大臣は2月4日の記者会見で、「しかるべき段階で患者団体との直接面談する」との意向を示す一方で、「がん患者など当事者の声も真摯に受け止めながら、可能な限り幅広い合意形成が図られるよう努めていきたい」と述べました。石破茂首相は2月4日の衆院予算委員会で「当事者の理解を得ることは必要だ。最大限努力する」と答弁し、自民・公明与党も「長期間の治療が必要な患者の負担に配慮する方向で厚生労働省が具体策を詰める(共同通信2月5日)」と限度額引き上げを一部修正の動きを見せています。
多数回該当は155万人
長期で治療継続が必要な多数回該当の利用者の引き上げを撤回することは大前提です。今回の制度見直しは全ての年代、全ての所得階層が対象となります。文字通り高額療養費の全利用者に打撃となります。2月4日の衆議院予算委員会で福岡厚労大臣は、年4回以上制度を利用している多数回該当の利用者が155万人、外来特例を除く高額療養費制度の利用者は795万人であることを明らかにしました。
現時点で引上げにより影響する人数がようやく判明しただけであり、当該利用者(患者)の治療費支出や家計の支払い余力など何ら調査することなく長期の患者だけ配慮することで「解決」とすることは、本質的な解決とはならず、患者間の新たな分断・軋轢を生むだけです。
多数回に該当しない利用者(年1回から3回)は、640万人(795万人-155万人)になりますが、これらの利用者は、所得区分に応じた上限額の支払いに加え、かかった医療費の1%を追加で支払う必要があり、相当な経済的な負担となっています。そもそも重篤な疾患で治療を継続している患者さんにさらなる負担を強いて、財源を捻出するという手法そのものが社会保障の概念とは相いれないものであり、公的医療保険の仕組みを根幹から突き崩すものです。負担増で「治療を断念せざるを得ない」と思わせているだけでも、今般の制度改悪に大義も道理もありません。血も涙もない非人道的な行為と言っても過言ではありません。石破政権は、全世代に打撃となる高額療養費の限度額引き上げは直ちに、白紙撤回すべきです。
記者
高額療養費について伺います。患者の自己負担の上限額を引き上げる方針について、石破首相が先日の衆院予算委員会で、がん患者らの声を聞く機会を設ける方針を示しました。がん患者団体からは「治療の継続を断念せざるを得なくなる」などと反対の声が相次いでいます。今後、患者の声をいつ、どのような場で聞くお考えか、検討状況をお聞かせください。また、引き上げ方針を見直すお考えがあるかどうかも併せて伺います。
厚労大臣
今回の高額療養費の見直しは、高齢化や高額薬剤の普及等により、その総額が増加する中、大切なセーフティネットである高額療養費制度を将来にわたって維持していくため、そして社会保険料が上昇傾向にある中で、その負担をできる限り軽減していく観点からも必要なものだと考えています。見直しに当たっては、データに基づき議論をした上で、負担能力に応じて引き上げ率を緩和し、所得段階の幅を細かく設定するなど、低所得者や長期にわたって医療を受けている方の経済的負担を考慮したものとしています。ご指摘の患者団体の皆様との面会については、先日の予算委員会において、総理から、どういった形でお話を伺うのが一番適切なのか、しっかり検討するよう指示を受けているところです。まずは、事務方から、患者団体の皆様の声を丁寧に承らせていただきたいと考えていますが、私としても、しかるべき段階で患者団体の皆様と直接お話をさせていただきたいと考えています。引き続き、がん患者など当事者の声も真摯に受け止めながら、可能な限り幅広い合意形成が図られるよう努めていきたいと考えています。