【政府再修正について】高額療養費制度の限度額引き上げは撤回しかない

2025年2月28日

内閣総理大臣 石破  茂 様

厚生労働大臣 福岡 資麿 様

 

 

高額療養費制度の限度額引き上げは撤回しかない

 

                   全国保険医団体連合会

会長 竹田 智雄

政府の高額療養費制度の限度額引き上げを巡り当事者、患者団体、医療関係者から引き上げの全面凍結・白紙撤回を求める世論が急速に広まる中、昨夜、政府が「一時的に凍結する」「再検討する」と一斉に報道されました。

しかし、石破茂首相は、立憲民主党の野田佳彦代表からの予算委員会の質問に対し「10年間の物価動向を踏まえたものなので、今年8月からの定率引き上げは実施したい。26年以降の引き上げについては25年秋までに関係者の声を丁寧に聞いて結論を出したい」と答弁しました。政府の再修正案は、今年8月からの負担増を強行するだけでなく、26年以降の所得細分化についても能力に応じた引き上げとする考えであり、現行の政府案とほとんど変わらないものです。

反対世論の広がりに応じて小出しに修正を繰り返してきました。制度引き上げの「一時的な凍結による再検討」でさえ決断できない石破政権は、重篤な疾患で闘病を続ける患者の命を蔑ろにし、弄ぶものです。あくまで8月実施を強行することは「治療を諦めろ」と患者に迫ることに等しいものです。

当会が子どもを持つがん患者を対象に実施した調査(N=423人)では限度額が引き上げられた場合、多数回該当が「あり」「なし」ともに4割が「治療中断」、6割が「治療回数減」を考えると答えており、受療行動へ大きな影響を及ぼすことが示されました。高額療養費制度は、がん患者をはじめ重篤な患者にとってまさに命綱であり、今回の制度「見直し」は、命を断ち切るに等しいものです。

国会審議を通じて、厚労省は、制度利用者の収入減少、医療費支出、受診抑制を含む影響など調査を一切実施していない、データも持ち合わせていないことが分かりました。それどころか多数回該当を据え置いた政府修正案でも1950億円の受診抑制を見込むなど命を蔑ろにする姿勢が露わになりました。

2月27日の予算委員会審議で、立憲民主党の柚木道義議員からの「受診抑制で患者が亡くなった場合に責任取れるのか」との質問に対し、仁木博文厚労副大臣は「責任は取れない」と答弁しました。受診抑制を前提とし、患者の命への責任も放棄する政府に制度改悪を提案する資格はありません。高額療養費制度の限度額引き上げは改めて白紙撤回すること強く求めます。