4月3日に開催された医療保険部会では、厚労省から高額療養費制度の限度額引き上げについて「検討プロセスに丁寧さを欠いたとこうした指摘を重く受け止め、見直し全体について実施を見合わせるという決断に至った」との報告がありました。審議会委員より決定プロセスについて意見が出されました。発言録(速報)は以下の通りです。
佐藤康弘 保険課長
高額療養費に関しては昨年の11月から4回にわたり医療保険部会で議論いただき、年末の厚労大臣、それから財務大臣の折衝において最終的に決着し、その結果を前回1月の医療保険部会にご報告を申し上げた。
その後報道等も様々ございました通り、国会の場、あるいは患者団体の皆様方から「例えば長期療養の方への配慮が不十分ではないだろうか」とか、あるいは「検討プロセスに丁寧さを欠いたのではないか」というご指摘をいただきました。その上で国会審議の過程で私どもの方から2度にわたり修正案をお示しした。
まず一点目1回目の修正案としては、多数回該当の金額を現行の水準からは引き上げないと平均的な所得の方であれば4万4400円に据え置くというのが1回目の修正案です。2回目については、令和7年度からの定率改定のみを実施し令和8年度以降の取り扱いについては改めて検討するとこういう修正案を示したが、その上でなお患者団体の皆様方からご理解をいただけなかった。最終的には先月の頭の方に総理の方から、高額療養費の見直しについては実施を見合わせた上で、本年秋までに改めて検討し決定をするとこういう旨が表明されました。この間、昨年の11月以降4回にわたりまして、この医療保険部会において熱心にご議論いただきまして様々ご意見もいただきましたが、私ども事務方の物事の進め方に足らざる部分があったことで結果的に審議会の委員の皆様にも、ご迷惑をおかけしたということについて改めてお詫びを申し上げたい。今後秋までに検討して決定していくということになるが今後の進め方については、現在検討中です。また今後検討した上で、また部会長ともよく相談しながら、どういうふうに進めていくのか考えていきたい。患者団体の皆様方からのご意見の聞き方また医療保険部会でもいろいろとご意見ございましたが、他いろんな課題はあるわけでありますけれども、できる限りのデータを集めてご用意していくとこういった点に留意しながら、今後ご議論いただけるような環境を作っていきたい。
鹿沼 均 保険局長
保険局長の鹿沼でございます。委員の先生方にはもう言うまでもございませんが、医療保険部会におきまして我が国まさに世界に誇るべきこの介護保険・医療保険制度の持続可能性またその運営の改善諸々につきまして貴重なご意見を賜っております。この高額療養費制度の話につきましても今保険課長から話がありましたが、昨年の11月から約1ヶ月間という期間ではございましたが、毎週会議を開催し、制度の見直しに向けた費用に必要な様々な資料に関するご示唆、そしてそれらを踏まえた有意義なご意見をいただくなど4回にわたり大変精力的なご議論いただいた。しかしながら、これも先ほど説明をさせていただきましたが、政府として「検討プロセスに丁寧さを欠いたとこうした指摘を重く受け止め、見直し全体について実施を見合わせる」という決断に至ったことについて、医療保険部会の運営を担う事務局の責任者として、またこの医療保険制度の見直しに関する厚生労働省の事務方の責任者として、審議会の皆様方に対して心からお詫びを申し上げます。あわせましてこれまで様々な状況変化があり、本日に至るまで委員の皆様方に対して十分なご説明ができなかったことについても、お詫びを申し上げます。そうした中で大変申し訳ございませんが引き続き、医療保険部会において改めてご議論をお願いしたい。
田辺国昭部会長
私の方からも一言御発言させていただければと存じます。拙速な議事運営の結果といたしまして、患者の皆様方の不安を惹起したということに関しては深くお詫び申し上げたい。今後丁寧な議事運営を図ってまいりたい。また見直しの議論においては、必要なプロセスと併せまして詳細なデータが必要になってまいりますので、その準備の方を事務局におかれましてはお願い申し上げる。以上この点をお詫び方々お願い申し上げる次第でございます。
佐野雅宏委員(健保連)
高額療養費の見直しについては、これまでの医療保険部会における議論の中で、患者団体の皆様に思いが至らなかったことについて、委員として反省しております。
この高額療養費の取り扱いには、まさに医療保険制度の中でもまさに制度の根幹に関わる部分だと思いますので慎重な検討も必要でございます。今後もさらに丁寧な議論をお願いしたい。一方で、やはり現役世代の負担軽減は、この少子高齢化がさらに進んでいくことを考えると、全世代型社会保障構築のために避けては通れない課題だと思っております。そういう意味でこの高額療養費の見直しに限らず高齢者医療制度のあり方を含めて、不断の見直しを進めていただきたい。
城守国斗委員(日本医師会)
高額療養費制度の見直しと医療保険部会との関係について、その経緯も含めて、少しコメントさせていただきたい。私の方からもこの部会においてしっかりとした議論が継続して行われなかったということに対しては、お詫び申し上げたい。その上で、その経緯をもう一度確認をさせていただきたい。この医療保険部会において、この自己負担の限度額などが、決められたということではないということは、この委員の皆さんの共有をしていただいているものだろう。
昨年の12月12日の第4回目の部会で、そのときに賃金の上昇等、様々な要因もあるということで事務局の方からこの自己負担の引き上げをしてはどうかという提案があった。この提案に関しては賛成の意見もございましたし、また、慎重に今検討すべきというような意見など様々な意見があった。
その中で結局、何かをその会議で決定をしたということではなくて、その後、先ほど事務局の方から説明ございましたように、年末の予算編成過程の中において、自己負担の限度額などが国によって決定をされたということだ。そして年を明けて、1月23日の5回目のこの部会において、事務局の方から、協議事項ではなくて、報告事項として報告があった。報告事項ということで決定事項ということでございましたので、私の方からは基本的には、物価も上昇しているから、手取りが実際増えているかどうかはなはだ不明であるという点もあるので、制度が施行されるとしっかりとした影響調査をしてくださいということはお話をさせていただきましたが、この医療保険部会としては、この制度が、極めて重要なセーフティネットであるということは、皆さん共通認識であり、その認識のもとに議論をして、その結果、我々としては、当初より、もう一番最初の会議のときから制度変更することによって、医療にアクセスをすることができないような人が生ずることがないように丁寧な議論をしていただきたいということは事務局に重ねて繰り返しお願いしてきた。残念ながら、その報告を受けたわけでございますが、お願いも重ねてしていたので、患者団体、また関係者の団体の方々ともしっかりと当然調整していただいているものであろうと思っていただけに、その経緯を後ほど聞くことによって、大変困惑しているというのは私だけじゃなくてこの委員の方皆さん全員であろうと思う。今後ですね、この制度の持続可能性ということを考えるというのであれば、まずは自己負担限度額の議論の前に、この医療費財源そのものの議論がやはり必要になるのではないか。そしてそういう議論を経た上で、そしてもしこの部会において、この見直し論というものをもう一度されるのであれば、そのときはですね、関係者の方々のご意見等もしっかりとお聞きをしていただいて、十分なデータに基づいて丁寧な議論をしていただき、医療にアクセスできないような人が出ないような議論にしていただきたいということを強く求めたい。ちなみに財源論の議論に関しては、当然この医療保険部会の所掌ではございませんので、しかるべきところで議論していただくことが肝要かなと思いますので、併せて申し上げたい。
小林参考人
私も高額療養費制度について申し上げます。今後改めて検討するとされていますが、どのように例えば患者の意見を広く聞くためにメンバー構成をどうするのかいつまでに議論していくのかなどいろいろに示していただくよう要望します。また検討に当たっては、家計への影響などデータの提示、見直しの目的の明確化、経営者のあり方など、丁寧に議論していく必要がある。年齢で区切っている現在の医療保険制度を高齢者医療制度の見直しを含めた根本的な議論が必要ですし、上手な医療のかかり方を啓発するとともに、患者の状態像に応じた入院医療のあり方など、納得性公平性の確保に向けた議論を進めていただきたい。