保険証の新規発行停止以降、マイナ保険証にシフトさせるため健保組合が資格確認書の再発行手数料を有料化したり値上げしたりする動きが出てきました。あくまで被保険者本人が棄損・過失により再発行を依頼する場合ですが、中には1枚で10000円もの高額な手数料を徴収するところもあります。
「金銭徴収」はマイナ誘導そのもの
厚労省やデジタル庁のホームページでは「資格確認書は無償で交付」と案内しています。資格確認書の再発行が有料または高額な費用を徴収してよいとする法的な根拠はありません。また、マイナ保険証の再発行と著しく乖離した金額で手数料を設定することは任意のマイナカード、マイナ保険証への実質的な移行の強制を図るものです。実際に再発行時に被保険者から1万円を徴収する健保組合は「国がマイナ保険証での受診を原則としているため」と説明しています。国はマイナカード、マイナ保険証の取得や利用は「あくまで任意で強制ではない」と説明する一方で補助金による誘導も含めて医療機関・薬局・保険者に強引なマイナカード取得やマイナ保険証の利用促進を強いてきました。こうしたつけが再発行手数料の徴収という形で出てきたとも言えます。
厚労省が5月22日に事務連絡「社会通念上、過大なものとならないよう留意する必要」
「高額な再発行手数料」の問題に対して健保組合を所管する厚労省保険局保険課は5月22日付で事務連絡「『資格確認書及び資格情報のお知らせの運用等について』の一部改正について」を発出し、Q17-13で「資格確認書の再交付の費用は社会通念上、過大なものとならないよう留意する必要がある」と通知しました。しかし、高額な再発行手数料をあらためさせる効果があるかは疑問です。
マイナンバーカード(マイナ保険証)の場合、新規発行は無料ですが、本人がカードを紛失・棄損した際の再発行手数料は電子証明書を含めて1枚=1000円です(特急発行の場合は2000円)。ただし、マイナカードはあくまで住民の希望や申請に基づきで任意で発行されるカードです。一方、資格確認書は、保険者に発行義務がある健康保険証と同様に被保険者の資格確認を行う証明書です。しかも、被保険者は会社等から保険料を源泉徴収されています。再発行も含めて無償とするのは当然であり、有償化し、高額な手数料を徴収することは問題があります。
参考資料
「資格確認書及び資格情報のお知らせの運用等について」の一部改正について 厚労省保険局保険課(令和7年5月22日事務連絡)
Q17-13 資格確認書の交付・再交付の費用は保険者負担か。
A これまで、被保険者証の交付や再交付に要する費用の負担については、その交付が保険者の義務であることに照らし、交付はもとより、再交付についても保険者が負担することが原則と考えられる旨、また、仮に被保険者証の再交付に要する費用負担を被保険者に求めるのであれば、本人の過失により滅失した場合に限るとともに、費用負担について組合会に諮り了承を得た上で行うべきと考えられる旨、お示ししていたところです。
資格確認書についても、これらの取扱いは同様であり、また、仮に資格確認書の再交付に要する費用負担を被保険者に求めるのであれば、社会通念上、過大なものとならないよう留意する必要があると考えられ、組合会等において、加入者に丁寧な説明を行っていただくようお願いします。
参考:各健保組合の再発行手数料
本人の不注意による紛失・盗難・汚損(破損)等に起因する再交付には、手数料3,000円が必要です。
マイナ保険証への切替をご検討ください。
資格確認書等の交付・再交付を申請するとき|こんなとき|ライク健康保険組合
※被保険者証または資格確認書を紛失した際は再発行手数料5,000円が発生します。
資格確認書_再発行手数料の徴収について – ポーラ・オルビスグループ健康保険組合
再発行手数料 1枚 10,000 円
「資格確認書」の交付について |マイナ保険証|マ近畿日本ツーリスト健康保険組合
再交付を受けるには、1枚につき2,000円の発行手数料がかかります。
※本人の過失による滅失に伴う資格確認書の再交付の場合、再交付手数料として2,000円/枚が徴収されます。(給与天引き等)
この問題で東京新聞が5月27日1面で取り上げました。
再発行に1万円は高すぎないか? 「資格確認書」の手数料、マイナ保険証の10倍 厚生労働省も黙っていなかった:東京新聞デジタル