外国人の医療費・高額療養費は全体の1% 厚労大臣「高い割合でない」 7月15日閣議後記者会見

外国人の医療費・高額療養費利用は高い割合でない 大臣答弁

7月15日の閣議後記者会見で福岡資麿厚生労働大臣は、「医療費や高額療養費制度において外国人の割合が高いということはない」と答弁しました。一部政党が「外国人が医療を過剰に利用している」と問題視する中で厚労省の見解を示したものです。
また、外国人の国民健康保険料の収納状況について、大臣は「2022年度の国保料の未納額は全体で1457億円であり、外国人の未納額が年間4000億円という情報は当方の認識とは異なる」と答弁。中国人の生活保護利用については、「世帯主が中国の国籍を有する被保護世帯の人員は、2023年度は9471人で、その5年前の2018年度の9059人と比較して約400人の増加であり、2倍になったという事実はない」としました。SNS上で排外主義を煽る投稿が拡散されていますが、事実と異なるデマには注意が必要です。

外国人被保険者の医療は総医療費の1.39% 高額療養費の利用も1%台

記者会見で保団連は、国民健康保険における外国人被保険者数と総医療費に占める割合や、国民健康保険における高額療養費の該当件数・支給額の割合を質問しました。
厚労大臣の回答では、国民健康保険における外国人被保険者数は約97万人で全被保険者の4.0%、総医療費に占める割合は1.39%でした。高額療養費の該当件数に占める外国人の割合は1.04%、支給額に占める割合は1.21%でした。厚労省の見解を質された大臣は「医療費や高額療養費制度におきまして、外国人の割合が高いということはないと認識をしております」と答弁しました。

 

(参考)国民健康保険における外国人被保険者の利用実態 ※厚労省会議資料より引用

一部政党の主張やSNS投稿 事実と異なる

このほか、複数の記者から、参院選の投開票日を目前に、政党の主張やSNS上の投稿に医療や年金、国保、生活保護に関するデマが見られる状況が指摘され、大臣の所感を述べました。
大臣は外国人に対する社会保障制度について、「日本人と外国人がお互いに尊重し、安全・安心に暮らせる共生社会の実現を目指す」とし、関係閣僚鍵で決定した総合的対応策を実施するとともに、内閣官房に設置された「外国人との秩序ある共生社会推進室」での議論にもとづいて取り組む姿勢を示しました。
SNS上で拡散されている「外国人による国民健康保険の未納が年間で4000億円」「中国人の生活保護者が5年間で2倍に激増」などの投稿については、「令和4年度の国民健康保険料の未納額につきましては、外国人に限らず全体で1457億円でありまして、外国人の未納額が年間4000億円という情報は当方の認識とは異なっております」「世帯主が中国の国籍を有する被保護世帯の人員につきましては、2023年度は9471人でございまして、その5年前の2018年度の9059人と比較して、約400人の増加でございまして、2倍になったという事実はないと認識しております」と述べました。

7月15日厚労大臣会見質疑(抜粋)

記者:
外国人の人権問題などに取り組む複数の団体が今月8日、選挙を通じて外国人を敵視する動きが広がっているとし、排外主義に反対する緊急共同声明を出しました。昨日14日にも、別の団体が外国人の生活保護に関するデマについて、警鐘を鳴らす声明を公表しています。いずれの団体も医療や年金、国保、生活保護などで外国人が優遇されているとの主張の広がりを問題視していますが、外国人の社会保障制度をめぐり、国内の世論が揺れている現状について、大臣のご所感をお聞かせください。

厚労大臣:
政府といたしましては、日本人と外国人がお互いに尊重し、安全・安心に暮らせる共生社会の実現を目指しております。厚生労働省といたしましても、本年6月に外国人材の受け入れ、共生に関する関係閣僚会議において決定をされました、外国人材の受け入れ・共生のための総合的対応策であったり、本日、内閣官房に設置されました、外国人との秩序ある共生社会推進室における議論に基づきまして、社会保障制度が適切に運用されるよう取り組みんで参りたいと思います。

保団連:
一部政党が掲げている、国民健康保険と高額療養費制度での外国人優遇の是正について見解をお伺いします。各制度に関する統計データ、一つは、国民健康保険における外国人被保険者の人数と年齢構成、また総医療費に占める割合、二つは、国民健康保険における外国人被保険者の高額療養費の該当件数と支給額の割合、これらのデータをご提示いただいた上で、外国人優遇と言えるかについて、ご見解をお伺いしたいしたいと思います。

厚労大臣:
国民健康保険におきまして、外国人の被保険者数は約97万人でございまして、これは全被保険者の4.0%に当たります。年齢構成といたしましては、20歳から39歳の外国人被保険者が約51万人と、約半数を占めているという状況になります。また、総医療費に占める外国人の割合は1.39%、高額療養費の該当件数に占める割合は1.04%、支給額に占める割合は1.21%でございます。こうしたデータからは、医療費や高額療養費制度におきまして、外国人の割合が高いということはないと認識をしておりますが、引き続き、国民健康保険制度の適正な利用に向けて、取り組みを進めて参りたいと思います。

記者:
SNS上で外国人に関する根拠のない投稿が拡散されていて、厚労省所管の政策に言及している投稿についてお伺いします。外国人による国民健康保険の未納が年間で4000億円とする投稿が拡散されていますが、これは事実でしょうか。正しくない場合、実際に厚労省が把握している外国人の未納額・未納率について教えてください。
また、生活保護の受給についても、「日本人よりも外国人の生活保護を優先している」であったり、「中国人の生活保護者が5年間で2倍に激増」という投稿が拡散されています。こちらも事実かどうか教えてください。また、事実でない場合、参院選の投開票を前にこうした外国人に関する根拠の根拠に基づかない投稿が広がっている現状について、大臣の受け止めをお願いします。

厚労大臣:
外国人の国民健康保険料の収納状況につきましては、現在、全国的な実態調査の実施に向けました、システム改修などの調整を進めております。その上で、令和4年度の国民健康保険料の未納額につきましては、外国人に限らず全体で1457億円でありまして、外国人の未納額が年間4000億円という情報は当方の認識とは異なっております。被保険者の支え合いで成り立っております医療保険制度におきまして、外国人の方にも適切に保険料を納付いただくことが重要でありまして、引き続き保険料の適切な納付に向けた取り組みを進めて参りたいと思います。
また、生活保護につきましても、その取り扱いは、外国人に対する保護において、何ら変わるものではございません。ですから、あの外国人を優先をしているということはございません。外国人のみを切り出しました受給者数は把握をしていませんが、世帯主が中国の国籍を有する被保護世帯の人員につきましては、2023年度は9471人でございまして、その5年前の2018年度の9059人と比較して、約400人の増加でございまして、2倍になったという事実はないと認識しております。いずれにしましても、厚生労働省としては、国民の皆様に分かりやすい形で適切な情報発信を行って参りたいと考えております。