
8月5日のデジタル大臣記者会見で平デジタル大臣は、iPhoneへのマイナカード搭載は7月末時点で145万人となったことを報告しています。
スマホ搭載マイナ保険証のサービスは9月19日から開始されることになりましたが、9月19日にいきなりスマホマイナ保険証を利用される可能性があります。しかし、8月29日にスマホ専用の汎用カードリーダーの補助金が開始されたばかりです。そのため、9月19日時点でもスマホ搭載マイナ保険証を読み取る専用カードリーダーを設置している医療機関は少ないことが想定されます。スマホマイナ保険証を読み取るインフラが未整備なままサービスが開始されることになります。厚労省は周知に努めると言いますが、あまりにも拙速な対応です。
スマホのみで受診し「読み取りできない」トラブルも
厚労省は、スマホ搭載マイナ保険証のメリットとして、マイナカードを取り出さずにスマホをかざして利用できると説明しています。
マイナンバーカードの健康保険証利用についてよくある質問|厚生労働省
Q13 | スマートフォンのマイナンバーカードでマイナ保険証を利用するメリットは何ですか。 |
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A13 | 健康保険証の利用登録がされたマイナンバーカードをスマートフォンに追加することで、マイナンバーカードを取り出すことなく、スマートフォンをかざしてご利用ができます。 |
スマホ1台で医療機関を受診できると思い、マイナンバーカードを持ち歩かない方も多くいると思います。
ところがスマホマイナ保険証は専用カードリーダーを設置していない医療機関では利用できないことから他の資格確認手段を持ち合わせずに受診し、窓口で自費扱い(10割負担)などのトラブルに発展する可能性が出てきます。8月27日の中医協でスマートフォンでのマイナ保険証の利用に向けた環境整備(資格確認方法)として「何らかの事情によりスマートフォンのマイナンバーカードが読み取れずマイナ保険証で資格確認が行えなかった場合については、その場でマイナポータルにログインし、表示された資格情報の画面を提示することで資格確認を行う」との対応が法令で定められました。
専用リーダー未設置の医療機関ではマイナポータル表示は使えない
この取り扱いを巡り、保団連は、9月2日の大臣会見で、「スマホマイナ保険証がやむを得ず読み取れない場合に、自身のマイナポータルの資格情報をスマホで表示して提示すれば、受診できるとの対応が示されたが、この対応はスマホリーダーを設置していない医療機関ではできない対応という理解でよいか」と質問しました。この質問に関して、福岡厚労大臣は、「医療機関の窓口でマイナポータルにログインして表示される資格情報を確認する方法については、何らかの事情でスマートフォンが読み取れなかった際の資格確認方法であり、スマートフォンの読み取りのための汎用カードリーダーを設置していない医療機関等では、マイナンバーカードなどで資格確認を行うことになります。」と回答しました。
つまり、スマホマイナ保険証を読み取る機器を設置していない医療機関等では、マイナポータル上での資格情報を提示する対応は利用できないことを意味します。大臣はマイナカードなど他の方法で資格確認せよと言いますが、実際にはスマホ1台しか持っていないケースが想定されるため、やはりトラブルは避けられません。
保団連は患者と医療現場の混乱・トラブルを避けるための丁寧な対策を求めました。これに対して福岡大臣は、「スマホ未対応の医療機関にスマホだけを持って行かれた場合にも、10割負担とならないようなオペレーション等の在り方等について、対応について検討を進めてまいりたい」旨の答弁がありました。
- 福岡大臣会見概要 |令和7年9月2日|大臣記者会見|厚生労働省
- 保団連:
- スマホ搭載マイナ保険証についてお伺いします。デジタル大臣が8月5日の会見で、iPhoneのマイナカードは7月末現在で145万人が登録という報告がありました。そこで4点。スマホリーダーを設置していない医療機関を受診した患者さんからスマホマイナ保険証が提示された場合、当該医療機関でスマホの使用はできないとお断りしてよいのか、が1点。もう1つが、スマホマイナ保険証がやむを得ず読み取れない場合に、自身のマイナポータルの資格情報をスマホで表示して提示すれば、受診できるという対応が示されていますが、この対応はスマホリーダーを設置していない医療機関ではできないという理解でよいでしょうか。3点目、スマホマイナ保険証でマイナポータルを表示する方法では、マイナカードを併せて提示することは不要とされていますが、この対応では、医療機関が本人確認することができないのではないかということで、法令上の不備がないかということについてお伺いします。最後、意識がない患者さんを救急搬送する場合、スマホマイナ保険証しかなかった場合、スマホがロックされていると思います。その場合は救急医療機関で資格確認が困難と考えますがいかがかでしょうか。
- 厚労大臣:
- 1番目についてですが、スマートフォンのマイナ保険証を利用して医療機関等を受診するに当たっては、スマートフォンの利用に対応していない医療機関等に患者さんがスマートフォンだけ持参して受診してしまうことがないよう、医療機関等に事前に確認し、スマートフォンでの受付に対応していることを確かめてから受診いただくこと、ステッカーの掲示がない場合には、引き続き実物のマイナンバーカードをご持参いただくことなどについて、今、国民の皆様にリーフレット等を通じて周知を行っていくということです。2番目ですが、医療機関の窓口でマイナポータルにログインして表示される資格情報を確認する方法については、何らかの事情でスマートフォンが読み取れなかった際の資格確認方法であり、スマートフォンの読み取りのための汎用カードリーダーを設置していない医療機関等では、マイナンバーカードなどで資格確認を行うことになります。3番目です。マイナポータルによる資格確認を行う上では、ご自身のスマートフォンでスマホ用電子証明書を用いて、生体認証か暗証番号の入力によりログインをするため、本人確認として問題があるとは考えておらず、9月19日の運用開始に向けて関係告示を整備することとさせていただいています。4番目です。そもそも意識のない方の救急搬送時は、紙の保険証の場合でも所持しているかは状況によって異なり、所持していない場合でも、実態としては、まず治療をしてから、身元の確認を行っていることも多いと考えられるところであり、スマートフォンの場合にもどうするか、患者さんの治療を最優先に、実態を踏まえて関係省庁との検討を進めてまいりたいと考えています。
- 保団連:
- 145万人、もっと増えていると思います。意外に多いなということで、初期の段階で、ステッカーとかポスターとか、関係団体には努力していただいていると思いますが、行ってみないとステッカーが貼ってあるか分からないですし、やはり「なんで使えないんだ」というトラブルがあるので、お断りするというのはちょっと良くない部分はあるんですけど、どうしてもマイナポータルでの確認が、リーダーを設置していないところでは、原則は、マイナポータルの確認ができないということですから、そういったトラブルが、今1点目と2点目というのが、今後大きな課題になってくると思いますので、是非、丁寧な対応をお願いしたいと思います。
- 厚労大臣:
- 今おっしゃったように、なるべく現場でのトラブルを回避するということは、大切な視点だと思います。スマホ未対応の医療機関にスマホだけを持って行かれた場合にも、10割負担とならないようなオペレーション等の在り方等について、対応について検討を進めてまいりたいと思います。