【連載①】財政制度等審議会「社会保障」 重い保険料負担は国・大企業の負担後退が背景

2025年11月21日

財務省の財政制度等審議会(財政制度分科会)は11月5日に「社会保障①」、11日に「社会保障②」を議題とした。保険料負担の軽減を大義名分に掲げて、医療・介護、とりわけ無床診療所を標的に据えて、診療報酬を削減するよう求めている。

保険料軽減に向けて、医療・介護カット 財務省

まず、この間、問題となっている社会保険料について、1980年代以降、社会保険料の負担率(給与に占める割合)が上昇している、とりわけ医療・介護では、2012~2023年度にかけて、給付費等の伸び(年+2.9%)が賃金の伸び(年+1.8%)を上回っているとして、医療・介護削減など「歳出改革」等により保険料率上昇を抑制して、手取りを増やすべきとしている。保険料軽減(手取り増加)のため、公的医療・介護サービスをカットせよということである。

国と大企業の負担後退を不問に付す

直近では賃金の伸びが上昇しており、2023年度までで比較することは正確性を欠くが、保険料負担をめぐる問題の本質は、大企業を中心に大幅な利益を上げつつも、賃金が抑制されてきたことにある。各団体の報告からも、実質賃金は1996年前後をピークに低下し、2022~23年には2割近く減額している。結果、2012~24年にかけて、大企業の内部留保は331兆円から553兆円に大きく増加している。
国・企業における社会的負担の後退も大きい。 社会保障財源において、国・企業の負担(国庫負担・事業主拠出)は1980年代初頭(老人保健制度導入前)は60%前後のところ、度重なる制度改悪などを通じて45%~50%に低下し(※)、保険料上昇のしわよせが被保険者に集中されてきた。
(※)「令和5年度社会保障費用統計」(国立社会保障・人口問題研究所、2025年7月)

所得が低い者ほど負担が重い不公平

加えて、逆進的な保険料負担が問題を深刻化させている。定率の保険料率、保険料を算定する際の給与額の上限設定、子どもの数が増えるほど負担が重くなる国民健康保険料の設定(均等割り)、保険料負担の計算に際して金融所得(配当、株式売買益など)が対象外、定額設定の国民年金保険料などによって、中低所得者に重い保険料負担を課す構造となっている。株式など資産運用益も加味して「所得全体」に応じて保険料負担を求める仕組みに改めるべきである。

賃金を支払わせる政治、利益に応分な負担を求める政治

実質賃金が低下する中、高い教育費・居住費等に加え、物価高騰が重った結果、少々の賃金上昇では生活難は改善されず、その結果として、手取り増大(保険料軽減)を求める世論が高まっている。
「生活できる賃金が支払われていない」「国・企業が保険料を応分に負担していない」「保険料負担が逆進的になっている」、加えて「若年者、子育て世帯対応の社会保障が手薄い」ことなどが過大な保険料負担の要因である。医療・介護削減ではなく、まともな賃金を支払わせ、利益に応分な負担を求める政治こそが求められる。