1月からかかりつけ医機能報告が開始された。全ての医科診療所は都道府県に報告を行う。医療機関の事務負担の緩和、地域医療の確保に向けた支援が求められる。
地域医療確保と受診先選択
2026年1月より、かかりつけ医機能報告制度が本格開始された。特定機能病院・歯科医療機関を除く全ての病院・診療所に報告が求められる。国は、報告された内容を踏まえて、地域で必要とされるかかりつけ医機能の充実・強化を図るとともに、医療機関をネット検索できる「ナビィ」を通じて、患者のより良い受診先の選択に資することを目指すとしている。
1号機能と2号機能
医科診療所、病院は1月から3月(都道府県で異なる)にかけて、自院(医療機関との連携含め)が持つかかりつけ医機能に関わる内容について都道府県に報告する。報告は毎年行う。厚労省は「原則として医療機関等情報支援システム(G-MIS)が望ましい」とする一方、「紙調査票は、各都道府県において地域の実情も踏まえて運用する」としている。報告を課す以上、3月末まで報告期間を設けるとともに、紙での報告を認めることが必要である。
報告内容は、「1号機能」と「2号機能」に分かれる。
1号機能は、「継続的な医療を要する者に対する発生頻度が高い疾患に係る診療その他の日常的な診療を総合的かつ継続的に行う機能」とされる。プライマリケア、1次診療がイメージされている。1号機能に該当し、その旨を院内掲示している場合、「1号機能を有する医療機関」となる。
具体的には、1号機能では、「かかりつけ医機能に関する研修の修了者の有無、総合診療専門医数の有無」、「17の診療領域ごとの1次診療の対応可能の有無、いずれかの診療領域について1次診療を行うことができること」、「1次診療を行うことができる疾患」(わが国で患者数が多い順で40疾患)、「医療に関する患者からの相談に応じることができること」、およびその他(各種医療従事者数、オンライン資格確認等に関わる整備体制など)がある。
なお、厚労省より院内掲示の様式例が示されている。
研修未修了でも報告可
1号機能におけるかかりつけ医に係る研修修了者や総合診療専門医については、それぞれの人数(0でも可)を報告すればよい。研修修了や専門医取得までは求められていない。現時点(2月5日現在)では具体的な研修対象は示されておらず、研修対象が示されるまでの間、医療機関では「かかりつけ医機能に関係すると考える任意の研修」を報告することができる。
1号機能が「有る」に該当した場合、2号機能について報告する。報告する事項は、時間外診療、入退院支援、在宅医療、介護サービス等との連携、及び健診・予防接種、地域活動(学校医、産業医等)、研修医等への教育活動などである。
なお、期間内に報告をしない医療機関や「虚偽の報告」をした医療機関については、都道府県から報告の求め・内容の是正を求められる。命令に従わない場合、過料(30万円以内)が科される。
患者説明は努力義務 口頭のみは不可
2号機能が「有る」と「都道府県の確認を受けた医療機関」では、定期受診する患者に説明を行うことが求められる。慢性疾患を有する高齢者等に在宅医療を提供する場合や概ね4ヶ月以上継続して受診することが見込まれる場合で、患者・家族から求めがあった時は、原則、疾患名や治療計画(現在の症状、治療方針、患者と相談した目標など)や体調不良時の対応などについて適切な説明を行うよう努めなければならないとされる。あくまで努力義務である。
説明は、書面、電子メールや磁気ディスク等を通じて、患者が理解しやすい形で行う。今後予定する電子カルテ情報共有システムにおける「患者サマリー」(患者はマイナポータルで閲覧)に入力する方法でも可能としている。口頭のみの説明は不可とされる。
説明の様式例として「かかりつけ医機能に関する療養計画書」が示されているが、厚労省は「医療法に定める事項について記載している場合」には、「医療機関が任意で作成したもの」でも差し支えないとしている。
不足医療確保に向けて協議
都道府県では、報告された内容を元に4~6月にかけて報告内容を集計・分析して、報告内容等を公表する。7月頃から、自治体と医療機関などは、国から示されたデータ等も踏まえ、地域で不足するかかりつけ医機能を確保していく具体的な方策を話し合う。
例えば、休日・夜間に体調不良の高齢者が受診(往診)できる体制が不足している場合、報告結果を踏まえて、時間外診療を担う意向のある医療機関を整理して、それらの医療機関に対して対応可否等について相談していく。
報告運用改善を
報告制度に伴い、医療機関には事務負担が発生する。報告項目も多く、入力も煩雑である。高齢の医師や小規模な医療機関では報告内容を簡素化したり、報告を任意に留めることも必要である。
患者の多くは、自身の症状・症候に応じて、口コミやネット検索なども参考にして住所近隣や職場近辺の医療機関を選び受診している。医院HPなども見て、疑問があれば医療機関に電話して確認する方が手っ取り早い。掲載情報が多すぎて、使い勝手が良いとは言えない「ナビィ」の推進は、かえって医療機関に無用な事務負担を強めることも危惧される。
医療費抑制を狙い報告制度運用の厳格を図る動きもある。健康保険組合連合会など保険者側の委員は、報告で満たす項目数に応じた診療報酬評価などを主張している。また、研修修了や専門医取得の要件化、治療計画の説明・院内掲示の運用などの厳格化を求めている。財務省は、報告制度を「重要な一歩」として、「公的にかかりつけ医療機関を認定する仕組み」や「かかりつけ医療機関に患者を登録する仕組み」を目指すよう主張している。
地域医療を後押しする支援を
かかりつけ医機能報告制度は、あくまで地域で足りない医療提供をどう確保していくかに主眼がある。報告制度を通じて、医療機関を報酬評価上で選別するような議論はお門違いである。患者が自身の症状に照らして受診先を選ぶ運用(フリーアクセス)は我が国の風土として定着している。財務省が求めるような「登録制度」などはかえって混乱を招くだけである。
地域では、1人の患者を疾病などに応じて複数の医師・医療機関がかかりつけ医として支え合っている。全ての医療機関が自院の強み・特性を活かして、地域の求めに対応できる範囲で取り組めるよう、地域医療の確保に向けて財政措置(診療報酬、補助金など)や研修機会の保障などが求められる。
| かかりつけ医機能報告における報告項目(主なもの) | |
| 1号機能 | かかりつけ医機能に関する研修の修了者の人数、総合診療専門医の人数 |
| 17 の診療領域ごとの1次診療の対応可能の有無
いずれかの診療領域について1次診療を行うことができること |
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| 1次診療を行うことができる疾患 | |
| 医療に関する患者からの相談に応じることができること(継続的な医療を要する者への継続的な相談対応を含む) | |
| 以上の報告項目について院内で掲示していること | |
| 医師数、外来の看護師数、専門看護師・認定看護師・特定行為研修修了看護師数
オンライン資格確認、電子処方箋等に参加・活用する体制の有無 オンライン資格確認、電子処方箋等の参加・活用状況、服薬の一元管理の実施状況 |
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| 2号機能 | 通常の診療時間外の診療(時間外の診療体制の確保状況、各種加算の算定状況など) |
| 入退院時の支援(後方支援病床の確保状況、診療報酬の算定状況、地域医療支援病院等から紹介を受けた外来患者数など) | |
| 在宅医療の提供(24時間対応の確保状況、診療報酬の算定状況) | |
| 介護サービス等と連携した医療提供(主治医意見書作成、地域ケア会議等参加、ケアマネ等の相談機会)、介護施設への医療提供、ACP実施など | |
| 健診、予防接種、地域活動(学校医、産業医、警察業務等)、学生・研修医・リカレント教育等の教育活動など | |
| その他 | 1号機能、2号機能の報告で「当該機能有り」と現時点でならない場合は、今後担う意向の有無 |
| ※「かかりつけ医機能の確保に関するガイドライン(第1版)」より作成 | |


