【記者会見6.9】7200医療機関から回答 マイナ保険証のトラブルが止まらない

【記者会見6.9】7200医療機関から回答 マイナ保険証のトラブルが止まらない

マイナ保険証トラブルが止まらない
医療現場のトラブル調査中間集計(6月9日)

全国保険医団体連合会
副会長 竹田智雄

1.調査結果(6月8日集計)

地域:35都道府県(37保険医協会・保険医会※東京、福岡が医科・歯科協会)
全体回答数:7208件
システムを運用している:6062件

トラブルあり:3929件(64.8%)
トラブルなし:2133件(35.2%)

【トラブルの種類(複数回答)】(N=3929)
「無効・該当資格なし」と表示された:2546件(64.8%)
マイナ保険証の不具合で読み取りできなかった:806件(20.5%)
カードリーダー等の不具合でマイナ保険証を読み取りできなかった:1844件(46.9%)
患者から苦情を言われた:502件(12.8%)

【トラブル対応(複数回答)】
健康保険証で資格確認した:2707件(68.9%)
オンライン資格確認のコールセンターに連絡:626件(15.9%)
保険者に連絡した:704件(17.9%)
レセコンメーカーに連絡した:1084件(27.6%)

【トラブル時に対応すぐに対応できなかった事例】
あった:1282件(40.4%)
なかった:1894件(59.6%)
※すぐに対応できなかったトラブルの件数(患者数)
○1~5件 1066件
○6~10件 119件
○11件以上 97件

【すぐに対応できなかった理由】
オンライン資格確認のコールセンターにすぐにつながらない:315件(24.6%)
レセコンメーカーに連絡したがすぐに繋がらない:394件(30.7%)
健康保険証を持ち合わせておらずすぐに資格を確認できなかった:478件(37.3%)
保険者に連絡したが資格を確認できなかった:155件(12.1%)

2.特徴

64.8%(3929医療機関)がトラブルを経験

37の保険医協会・保険医会の会員医療機関7208件の回答があり、オンライン資格確認の運用を開始した医療機関(6062件)のうち、64.8%(3929件)が、「トラブルがあった」と回答した。
トラブル件数は「資格無効・該当なし」が64.8%で最多
トラブルの種類(複数回答)は、「無効・該当なしと表示され被保険者の資格情報が正しく反映されない」が64.8%と最多となった。直接的には被保険者情報を収載するサーバーや保険者、事業所の被保険者情報の抹消や更新遅れ、更新不備等に起因するエラーであり古い保険証がデータ上切り替わっていないことによる。
転職・退職、結婚、出産など人生のライフステージに伴い、加入する保険者や加入形態が切り替わる毎に発生するトラブルである。

(現場の実情)
「マイナンバーカードのみで確認できた例がない。そのため患者に保険証の提示も求めざるをえず、「それでは意味がないだろう!」との反応。・手入力が必須の為、負担軽減とは思えない。信用できない。(栃木)」
「無効資格なしと表示された方が長期にわたって改善されていない。氏名の漢字やフリガナが違う。住所移転されていても反映していない。(富山)」
「該当資格なしと表示されたので患者さんに伝えると、仕事変わってもない、辞めてもいないと怒られた。(富山)」
「古い情報だったり、期間が保険証と食い違っているものが5 件以上あり。いずれも保険者に確認し、マイナが間違っていると判明。(千葉)」
「「無効」「該当資格なし」と表示される例はかなりあります。保険証原本とオンライン上のデータとの相違もかなりあります。負担割合が違う場合もあって、それは「有効」とされてしまいます(千葉)」
資格が確認できなかったため、本人や会社の担当者に何度も確認の電話を入れたが、ご本人の保険で間違いないとのこと、苦情まではいきませんが、嫌な対応でした。(新潟)

保団連は、2022 年11 月の調査で同トラブルが全体の6 割を占めることを明らかにし、厚労省にオンライン資格確認義務化延期とシステムの改善を繰り返し求めてきたが一向に改善しないまま見切り発車された。健康保険証廃止を医療現場の訴えを無視し、実際にトラブルを自ら招いた政府・与党の責任は重大である。
利便性や医療の質向上どころかトラブルで手間やトラブルだらけで日常診療で取り扱うことは甚だ困難である。

(現場の実態・意見)
「マイナンバーカードと保険証の1 本化が令和6 年10 月と言われているが、今回のようなトラブルや保険証情報の不一致などが続くようだとマイナンバーカードのみでの確認による運営は難しいと思う(山梨)」
「後期高齢の新患さんの負担割合が間違っていた。3割の方が1割で入力されていた。(長野」」
「後期高齢者の方で、1 割が正当なのに2 割と表示された。この方は少し煩雑で、所得があり、前期高齢者期間も2 割保険証所有も実際3 割負担と分かりづらかった経緯があった。その日は計算ができないのでその足で市役所へ行ってもらい、大変迷惑をおかけした。(大分)」
「持参された保険証とオン資の内容が違うが5%、名前間違いが5%、何のゆかりもない情報が登録されてた人もいました。(千葉)」

「顔認証不具合、カードリーダーが使えない」が続出マイナ保険証や顔認証付きカードリーダーの不具合では、「顔認証付きカードリーダーまたはパソコンの不具合によりマイナ保険証の読み取りができなかった(46.9%)」
「マイナ保険証の不具合(IC チップの破損等)で読み取りができなかった(20.5%)」
となった。

顔認証が機能しない、電子カルテやレセプトコンピュータが稼働しなくなったなどトラブルが多い。院内システムとの現行の健康保険証による資格確認は慣例で月1 回の確認で対応してきたが、マイナ保険証は受診の都度顔認証付きカードリーダー(エラーが出れば4桁の暗唱番号)が必要とされる。そのため顔認証付きカードリーダーを巡るトラブルは今後とも増加することが想定される。

(現場の実態・意見)
「顔認証ができず、暗証番号も患者さんが覚えていなかったため、オンライン資格確認を断念した(山形)」
「顔認証の場合、四角にきちんと顔が入っていないと、認識しないようになっている。しかし高齢者は四角の枠が見えないのか枠に顔をあわせることができない。そのうちタイムアウトになってしまう。「暗唱番号なんか覚えていない」と怒鳴られることもある。(富山)」
「カードを照合しても「混み合っています」の画面が出るばかりで認証されない。トラブルの原因がわからず解明するまでマイナンバーカードの対応が全くできなかった。(奈良)」

システム稼働保障やセキュリティ対策を医療機関に押し付けこれらのトラブルは、医療機関や患者の責任によるものではない。2022 年9 月に義務化されてからわずか半年ですべての医療機関にオンライン資格確認システムの整備を強制したことが原因の一つである。
医療機関では、顔認証付きカードリーダーを設置し、審査支払機関のサーバーに常時アクセスが可能となる閉域通信回線網の整備、電子機器などの保守・管理やセキュリティ対策などを医療機関に義務付けた。きちんと稼働するかどうかの検証なく見切り発車した結果、医療機関内の既存の電子カルテやレセプト請求コンピューターとの不具合や稼働不良が生じている。

(現場の実情)
「マイナ受付で通ったにも関わらず、実際保険証が変わっていて、レセプトを返戻するのはおかしい。(福島)」
「ご年配の方が機械の操作がわからず、何回も対応が必要で、通常業務に支障がでる(他の患者様から早くしろのクレーム)福島」

診療の停滞と資格無効に伴うレセプト請求(保険請求)の返戻など実害が生じており、患者とのトラブルが続出する事態となった。

(現場の実情)
「ご高齢の患者様が多い為、毎度つきっきりで説明が必要なため、人員的問題が生じる(山梨)」
「車椅子の方で暗証番号がわからない(覚えていない)方の顔認証が難しい(山梨)」
「コロナ疑い(感染症)等の方の受付をマイナンバーで行うにあたって他の方との接触の危険性がある。(山梨)」
「オンライン資格確認は目がご不自由な患者さんや高齢お一人で受診される患者さんは使用が難しく、個人情報であるため、職員がお手伝いすることもできません。一部の方しか使用できないシステムを義務化することには大きな違和感があります(山梨)」

健康保険証を確認してトラブルへ対処 68.9%

トラブルへの対処として患者が持参した「その日に持ち合わせていた健康保険証で資格確認した(68.9%)」、「コールセンターに連絡した(15.9%)」「保険者に連絡した(17.9%)」「レセコンメーカーに相談した(27.6%)」などである。
一方で、トラブル時にすぐに対応できなかったが1282 件(40.4%)となった。その理由として「健康保険証を持参せず資格確認できなかった(37.3%)」、「コールセンターにつながらない(24.6%)」、「レセコンメーカーにすぐにつながらない(30.7%)」「保険者に連絡したが資格を確認できなかった(12.1%)」とすぐにトラブル対処ができないケースも多い)。

(現場の実態)
「無効・該当資格なしと表示されたら、その度に保険者に資格確認をしなければいけないため、時間・手間がかかるようになってしまった(福島県・医科)」
「手間が増えたように感じる。担当者との連絡がなかなかつかず、すぐに対応していただけなかった(福島)」

災害・停電時などシステム障害時にマイナ保険証では被保険者情報が券面で確認できないため、保険診療そのものが行えなくなる。
政府は、24 年秋に現行の健康保険証を廃止する方針を示しているが、券面に被保険者情報が表記されている現行の健康保険証が存続されないと、こうしたトラブルへの対処が途端に困難となる。

トラブルで患者から苦情が12.8%

トラブルが発生したことについて患者から苦情を言われたケースが12.8%(502 件)
となり、医療機関と患者の無用なトラブルを招いていることがわかった。

上記の通り、問い合わせ対応先の体制不備等によりトラブルへすぐに対処できないケースも多い。政府は、オンライン資格確認システムの義務化、マイナ保険証ありきの政策を強引かつお粗末な体制で進めてきた結果、マイナ保険証等の利用拡大に伴い患者・医療現場双方が被害を受ける状況となっている。

 

マイナ保険証「無保険扱い」-窓口で10割請求は33協会893件

マイナ保険証のみ持参で資格無効と表示されたため、患者さんに窓口で一旦10 割負担を徴収した事例が33協会で893件あった。
無保険扱いとなる場合、どれだけ手持ちが必要なのか、払えないと受診抑制になるのではとの不安感も広がっている。
初診時にマイナ保険証が「無効・資格喪失」となった場合、患者に10割請求するとした対応マニュアル(社会保険審査支払基金が作成)に沿って対応したため、患者クレームに発展した事例(山形協会)も出てきている。

(現場の実態・意見)
「マイナ保険証で該当なしとなり、本人に確認し保険者に電話で確認を試みたが電話がつながらず、患者さんから10 割で徴収した(山形)」
「保険証変更した患者さんで、マイナ保険証で新しい保険証の情報が確認できず、新しい保険証も持っていなかったので、一旦10 割徴収し後日返金した(山形)」
「資格確認ができず、患者さんに一旦10 割をお預かりする説明を行ったが、クレームになり10 割徴収できなかった(山形)」
「保険者情報が正しく反映されていなく、無効となっていた。一旦10 割負担で患者に請求したが、後日、同じ保険者情報で資格ありとなり、精算することとなった。(千葉)」

マイナ保険証のみの場合は、オンライン上で資格確認が可能となるまで“無保険者”となる。資格確認が困難な場合は10 割徴収される。「自費扱い」となるため高額療養費制度も利用できない。経済的負担により「受診が困難」となることが想定される。
現状であれば、後日、健康保険証を持参すれば7割分が返金されるが保険証が廃止され、マイナ保険証も「無効・該当なし」となると保険診療が受けられなくなる(自費扱いとなる)。

「他人の情報が紐づけられていた」が26協会で85件

「他人の情報が紐づけられていた」との回答は26協会で85件報告された。マイナ保険証を利用すると患者本人と当該医療機関において薬剤情報、診療情報の閲覧が可能となる。
2023 年4 月のマイナ保険証利用は約829 万件でその内、顔認証付きカードリーダーのタッチパネルで同意し、薬剤情報の閲覧を利用した件数は約473 万件、診療情報の閲覧は約273万件である。
厚労省は、誤登録・誤閲覧事例は23年2月に5件と公表している。加藤厚労大臣は昨日の閣議後記者会見で、昨年12月以降に発生・把握している事例について6月中に報告するとしている。5件の数字は誤登録かつ誤閲覧の数字です。
一方でデジタル庁はマイナポータル上で国民に一斉点検を呼び掛けている。健診、薬剤・診療情報をマイナポータルで点検すると誤紐づけの場合、他人の情報が見られてしまい、情報流出・プライバシー侵害が大量に発生してしまう。
こうした状況で「他人の情報が紐づけられていた」ことは、患者のプライバシー侵害や情報漏洩につながる。他人がマイナポータル等で薬剤・診療情報を閲覧した可能性は捨てきれず薬剤・診療情報の閲覧機能は直ちに停止すべきである。

(現場の実態・意見)
オンライン資格情報に、資格無しと表示、患者情報に生年月日が全く同じ他人まで表示される(千葉)