【声明】医療現場と患者に責任を押し付けないで マイナ保険証「無効」で10割負担 893件

全国保険医団体連合会では、マイナ保険証が無効となり窓口で10割負担を迫られた問題に対し、下記の声明をマスコミ各社に提出しました。

2023年6月12日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇

【声明】医療現場と患者に責任を押し付けないで

- マイナ保険証「無効」で10割負担 893件 -

 

 岸田文雄首相は12日、衆院決算行政監視委員会でマイナ保険証が無効となり窓口で10割負担を迫られた問題を巡り、「加入資格を確認できなくても生年月日で個人情報を確認できれば医療費を10割請求せずに済むよう対応マニュアルを改定した」と答弁しました。また、2024年秋の健康保険証の廃止方針は変わらない」と保険証廃止に固執する姿勢を示しました。

現場に責任押し付けるマニュアル改訂

 保団連が実施したマイナ保険証を巡る医療現場のトラブル事例調査(6月8日集計)では、マイナ保険証「無効・該当資格無し」となり一旦10割分を患者に請求した事例が33協会893件発生したことが明らかとなっています。これらは、マイナ保険証そのものに起因するトラブルであり、患者や医療機関に何ら責任はありません。患者と医療機関のトラブルが続出し、社会問題化する中で、政府の責任をかわそうとするために、6月2日に突然運用マニュアルを変更したものです。

 そのため、未収金の発生リスクなど重大な取り扱い変更が一切考慮されておらず、厚労省が国会答弁でも「調整中」を繰り返すなど曖昧な対応に終始しています。医療現場に重大な影響を及ぼす内容であるにもかかわらず、岸田首相が「10割請求せずに済む」と答弁し、医療機関に一方的に責任を負わせようとしていることは大問題です。

無保険だった場合7割分をだれが払うのか?

 改定後のマニュアルでは、「マイナンバーカードの券面に記載された生年月日情報に基づいて自己負担分(3割負担等)をお支払いいただき、事後に正確な資格情報の確認ができた段階で、訂正の必要がある場合には、所要の手続を行っていただくことが考えられます。」と記載され、仮に事後で無保険だったことが分かった場合、残りの7割分をだれが払うのか、どのような手続きが必要かなど一切言及されていません。

 6月7日の衆議院厚生労働委員会の審議では、伊原和人保険局長が「保険に加入されていない方の場合、医療保険上は保険の給付の対象になりません」、「現在その場で資格確認を行えない場合の取扱いにつきまして、医療関係者と調整しているところでございます。」と答弁しています。

資格確認抜きで公的医療保険が利用できるとどうなるか

 医療機関は療養担当規則第3条で「保険医療機関は、患者から療養の給付を受けることを求められた場合には、健康保険法第3条第13項に規定する電子資格確認又は患者の提出する被保険者証によって療養の給付を受ける資格があることを確認しなければならない。」と資格確認義務が課せられています。マイナカードのみの確認では、本人確認は出来ますが、一旦トラブルが発生すると被保険者情報の取得は困難となります。資格情報が取得できなければ保険請求自体が出来ません。

 「本人確認」のみで保険診療が受けられるのであれば、運転免許証でも同様の対応が可能となります。マイナカードは住民票を有する方は無料で作成できるため仮にマイナンバーカードで本人確認し、「無保険者」も3割負担で保険診療が受けられることとなります。その場合は7割分が未収金になります。従前の法令や実務運用に則さない対応を突然提案し、詳細は調整中という場当たり的な対応に終始していることは大問題であり、未収金への対応など地域医療崩壊に繋がりかねない問題です。

現行保険証は存続させるべき

 保険証には医療保険で医療を受けるための必要な情報が券面に表記され、保険資格があることが一目で分かります。しかし、マイナカードの券面には保険資格があるかどうかの表記は一切なく確認が困難です。

 誤登録や未登録を始め、カードリーダーの不具合、読み取り精度が低い、機械的な破損、ICチップの破損、果ては顔写真の写りの問題で読み取りできないなど、様々なトラブルでサーバーにアクセスできないと資格確認が途端に困難となります。

 従って2024年の健康保険証廃止方針を撤回し、健康保険証を存続させるべきです。

 政府は人的ミスを起こさないための制度設計や対策を怠っていながら、トラブルの責任を現場に押し付けています。このままでは国民の命や健康、個人情報、財産を大きく損なう恐れがあることから、直ちに運用停止するべきです。

 その上で全容解明を行い、解決策と再発させない担保を国民に指し示すことを求めます。

以上