「108万人がトラブルを経験」、「無効・該当なしは72万人」 保険証廃止でどうなる? マイナ保険証によるトラブル推計

「108万人がトラブルを経験」、「無効・該当なしは72万人」
保険証廃止でどうなる? マイナ保険証によるトラブル推計

全国保険医団体連合会

保団連は、5月23日から6月19日にマイナ保険証のトラブル調査を実施し、41都道府県10026医療機関から回答があった。
調査結果(最終集計:6月19日)では、運用を開始した医療機関(8437件)のうち、65.1%(5493医療機関)でトラブルが発生した。一方で、「健康保険証を確認してトラブルへ対処」が74.9%(4117件)となった。政府・与党は2024年秋に現行の健康保険証を廃止する法案を成立させ、多くの国民がマイナ保険証のトラブルに危惧や不安を募らせており、健康保険証の存続を求めているが、政府・与党は頑なに「廃止方針」を変更していない。
トラブル調査結果(最終集計)を元に、健康保険証が廃止されたら各トラブル件数はどれくらい増加するかシミュレーションした。

1.トラブル調査(最終集計)

地域:41都道府県(44保険医協会・保険医会※東京、京都、福岡が医科・歯科協会)
回答数:10,026医療機関
システムを運用している医療機関:8437件(84.2%)
トラブルを経験:5493医療機関(65.1%)
【トラブルの種類(複数回答)】(N=5493)
「無効・該当資格なし」と表示された:3640件(66.3%)
マイナ保険証の不具合で読み取りできなかった:1101件(20.0%)
カードリーダー等の不具合でマイナ保険証を読み取りできなかった:2660件(48.4%)
患者から苦情を言われた:679件(12.4%)
マイナ保険証「無保険扱い」で10割請求 1291件(23.5%)

2.全医療機関数ベースでのトラブル数の推計

厚労省の医療施設動態調査(令和5年3月末概数)では、医療機関施設は180,783件である。
最終集計では10,026医療機関から回答が寄せられた。

全医療機関施設数(180,783)/回答医療機関数(10,026)=約18倍

全医療機関が調査に回答した場合、トラブルの有無や各トラブルの類型とも18.03倍(18倍)増加することが推定される。

(解説)
この間のトラブル調査で回答数が増加しているが、トラブル有やトラブル類型の比率はほとんど変化していない。各保険医協会単位の調査結果も同様の傾向にある。大規模な調査結果が得られ大数の法則も成立している回答数である。従って、全医療機関数での推計値は、単純に18倍とした。

3.マイナ保険証利用率の推計

(1)診療実日数よりマイナ保険証の利用率を推計
①マイナ保険証利用数(2023年5月)

病院 1,196,089
医科診療所 4,243,099
歯科診療所 1,246,587
合計 6,685,775件(A)
※23年3月対比で23年4月はマイナ保険証利用率が数倍に増加した。しかし、23年4月から23年5月のマイナ保険証利用件数は横ばい傾向にある。

②マイナ保険証利用率/診療実日数(医科・歯科)
2022年6月のB.入院外診療実日数(118,587,004)、C.歯科の診療実日数(30,344,967)の合計値148,931,971日(B)です。受診率の割合を示す。

外来におけるマイナ保険証利用率
=マイナ保険証利用数(A)/診療実日数(B)=4.5%

(2)マイナ保険証所持率
①2023年6月18日現在のマイナ保険証利用登録件数 6408万8852人
厚労省「マイナンバーカードの健康保険証利用について
2023年1月 人口推計(確定値) 1億2452万人
総務省統計局

所持率は約50%
①/②=マイナ保険証所持率=51.46%

(3)健康保険証廃止後のマイナ保険証外来利用率
上記3(1)、(2)を元に健康保険証廃止後(資格確認書)の外来利用数(倍数)を推計した。

4.5/100=22.2倍
所持率(約50%)を反映 → 11.1倍

約11倍

4.健康保険証廃止後のトラブル件数

健康保険証を完全に廃止し、原則としてマイナ保険証利用、例外として資格確認書利用とした場合のトラブル件数を推計した。全医療機関ベースでのトラブル件数は、上記2の推計による調査結果(最終集計)の18倍となる。また、マイナ保険証外来利用の推計は、上記3(1)、(2)、(3)の推計により調査結果(最終集計)の11倍となる。2つの要因を勘案した結果、トラブル件数は調査結果(最終集計)の198倍となる。

<類型別トラブル件数>

トラブルを経験:5493医療機関×198倍=1,087,614件
「無効・該当資格なし」と表示された:3640件×198倍=720,720件
マイナ保険証の不具合で読み取りできなかった:1101件×198倍=217,998件
カードリーダー等の不具合でマイナ保険証を読み取りできなかった:
2660件×198倍=526,680件
患者から苦情を言われた:679件×198倍=134,442件
マイナ保険証「無保険扱い」で10割請求 1291件×198倍=255,618件

以上