全国保険医団体連合会では、厚労省が7月10日、保険者、審査支払機関等に向けて保険局長名の通知「マイナンバーカードによるオンライン資格確認を行うことができない場合の対応について」を発出したことを踏まえ、下記の声明を総理、厚労大臣に提出しました。
2023年7月19日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇
【声明】保険証持参の呼び掛けこそが必要―厚労省マイナトラブル対応通知は不完全
厚労省は7月10日、保険者、審査支払機関等に向けて保険局長名の通知「マイナンバーカードによるオンライン資格確認を行うことができない場合の対応について」を発出しました。患者がマイナ保険証で受診した際にトラブル等によって被保険者資格が確認できず窓口で10割負担せざるを得ない事態に対して、患者、医療機関双方から批判が相次ぎ、この問題への対応を示しました。
保険証持参こそが唯一の解決策
通知では、初めて受診する場合などに「念のためマイナンバーカードとあわせて健康保険証を持参」してもらうよう呼び掛けました。保険証持参こそがこの間のトラブルに最も確実に対処できる方法だと厚労省自身が認めたものです。この対応を「時限的なもの」としていますが、トラブルは現在も後を絶たず、マイナ保険証の普及に伴いさらに拡大することは避けられません。トラブルを避けるためにも必ず健康保険証を持参するよう、政府として広く国民に呼び掛けるよう求めます。
金銭トラブルなど新たな問題懸念
また、患者の資格情報が確認できない場合に、加入している保険者や一部負担金の割合等を申し立てる「被保険者資格申立書」を記入させるとしています。しかし、70歳以上の高齢者では所得に応じて窓口負担割合が異なり、患者本人の記憶に基づく申し立てでは請求の過不足が生じかねません。自治体の医療費助成制度によって窓口負担がゼロか少額となっている子ども医療でも2~3割の負担を求めることになります。この方式を実行すれば、医療機関でのトラブルは解決されず、むしろ患者への説明や金銭トラブルなど新たな問題が生じることが懸念されます。
重要部分が明かされていない
通知では診療報酬の請求について、資格情報等が確認できなかった場合、保険者番号等は「不詳」のまま請求できるなどとしました。しかし、事務的な取り扱いは「別途通知する」とされています。医療機関への支払に要する期間や、最終的に資格確認ができなかった場合に保険請求分の全額が支払われるのかどうかなど、重要な部分が明かされておらず、そもそも通知として不完全と言わざるを得ません。
問題の根本に切り込まず現場にツケ 保険証存続こそ
政府が示してきた対応策は問題の根本に切り込まず、不完全な形で拙速にシステムをスタートさせたツケを患者や医療機関、保険者や審査支払機関に払わせるものです。マイナ保険証の運用を一旦停止し、全被保険者の紐づけ情報の点検を求めます。併せて、現行保険証を存続するよう強く求めます。
以上