
病床利用率105%でも黒字厳しい
緊急財政措置と診療報酬引き上げ求める
「病院が突然なくなる」
物価と人件費の高騰の影響で、全国的に病院経営が逼迫している。どの病院団体も記者会見で窮状を訴え、緊急財政措置と診療報酬引き上げを求めている。
病院団体が窮状訴える
多くの医療機関では、2023年のコロナの補助金や特例措置の終了と同時に異常な物価上昇に見舞われ、病院経営が一気に深刻化した。3月には6病院団体(日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会・日本精神科病院協会・日本慢性期医療協会・全国自治体病院協議会)が会見で病院経営の窮状を訴え、緊急財政措置や診療報酬の期中改定などを訴えた。
保団連でも昨年10月に「物価高騰等への対応のため地方交付金の大幅拡充」を求める要請書を送付したが、物価高騰が終わりを見ない中で補助金や交付金では対応しきれないため、改めて次回診療報酬改定を待たずに引き上げを行うことも含め、4月21日に要望書を送付した。
病院現場、フル稼働でも赤字続き
青森県弘前市の健生病院では、病院経営がさらに深刻化し、病床利用率が105%でも黒字化が厳しいという。
副院長の飯田寿徳氏は「このままでは入院患者が少なくなる夏を乗り越えられるかという状況」と焦りをにじませている。
飯田氏が特に訴えるのは、▽診療報酬が物価高に全く追いついていない▽そもそも余力のない診療報酬で設備投資もできない―の2点だ。診療報酬が収益に見合わないため、設備投資等積立など論外であり、当然借金返済も難しいという。
また、特にコロナ感染の入院患者はまだ続いており、通常と比較しても感染対策物資、二次感染も考慮したスタッフ体制のために、コストがかかり続けているという。
補正予算の支援事業で地域医療は崩壊
24年度補正予算で行われた「医療施設等経営強化緊急支援事業」では、ベースアップ評価料の届出や医療DXの取り組み等を条件に、1病床削減すると約410万円が支給されるなどの支援が含まれている。
受け付けは25年3月14日で終了したが、4月1日付で25年度に繰り越された。しかし、4月11日に厚労省が発表した第一次内示では、全国で7千床以上も申請が来ている。経営逼迫につけこみ「ニンジン」をぶら下げた政策だ。
緊急財政措置と診療報酬期中引き上げを
日本医療法人協会でも「このままでは6割の病院が次回改定前に資金ショートする」と発言しているように、もはや待ったなしの状況だ。
保団連では、①賃上げと物価高対応のために10%以上の診療報酬引き上げと、改定までに緊急財政措置を実施、②借入金の支払い猶予措置、③コロナの感染対策物資や患者受入評価の引き上げ、④物価高騰対策として消費税5%への引き下げと控除対象外消費税の負担の解消―など5点を要望した。早急に実現を求める。