
保団連は9月5日の記者会見で歯科技工士の処遇改善について質問しました。
骨太の方針2025の「医療・介護・保育・福祉等の人材確保に向けて、公定価格の引上げを始めとする処遇改善を進める。」との記述や、歯科技工士が毎日10時間以上の作業を続けて「受注する金額を時給に換算すると600円くらい」というこの間の報道を踏まえ、長時間労働、低収入という労働実態を厚労省として把握しているか、解決に向けて具体的な検討状況と、歯科技工に係る「歯冠修復・欠損補綴」などの歯科保険点数の引き上げと、歯科医院から歯科技工所に適切なルール作りについて質問した。
歯科技工所の「実態」は承知している
福岡厚生労働大臣は、業界団体による実態調査から、「1週間当たり平均53.7時間と、令和3年に行われた前回の調査と比べて約4.5時間短くなっており、年収は「300万円以上、400万円未満」が17.5%と最も多くを占めている状況と承知しています」と答えた。
保団連の調査でも、可処分所得は300~400万円が最多(15.5%)だが、300万円未満が39.0%であり、引用の実態調査は27.1%である。また、労働時間についても保団連の調査では週60時間以上の過労死ラインで働いている方は2016年の61.2%から49.9%と減少しているが、週の平均労働時間は約66時間と長時間のままである。
大半を占める個人・零細の歯科技工所の「時給600円」とも報道される実態を反映しているとは言えないのではないか。
入れ歯の作り手が足りない 合格者4割減少 「まじめなほど苦しい」(朝日新聞、Yahooニュース 8月27日)
https://news.yahoo.co.jp/articles/7d13d0e59669e540c326a89af31682bd91b24b4e
7:3告示の周知に努める
これに対して、福岡厚生労働大臣は、労働実態は日技の調査により把握していると述べ、「歯科技工料金は歯科医療機関と歯科技工所の自由取引に基づいて設定されているところですが、標準的な費用の割合を告示でお示ししており、この考え方については、引き続き周知に努めてまいりたい」
就労環境の改善に努めたい
時期改定に向けては、「歯科技工士の業務などが診療報酬において適切に評価されるように、中医協で議論してまいりたい」「歯科技工士の処遇や就労環境の改善に努めてまいりたい」とのべました。
関連情報 【4月24日記者会見】歯科医療は崖っぷち! このままでは歯科治療も入れ歯もできなくなる!?
https://hodanren.doc-net.or.jp/info/news/2025-04-14/
歯科技工所、8割超後継者なし 4割が低賃金、三重県保険医協会が調査(伊勢新聞、Yahooニュース、8月29日)
https://news.yahoo.co.jp/articles/88bbff0b4c4dd4a0a3d1270a372cb036484dff00
福岡大臣会見概要 |令和7年9月5日|大臣記者会見|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/kaiken/daijin/0000194708_00845.html
保団連:
雇用環境の改善は、取り組んでおられることと思います。いわゆる骨太の方針2025では、医療・介護・保育の人材確保に向けて、公定価格の引上げをはじめとする処遇改善を進めるという記述がされています。この間、新聞やテレビ等で歯科技工士の労働実態について、毎日10時間以上作業を続けて、「受注する金額を時給に換算すると600円くらい」というような報道が続いています。国家資格でありながら、受注単価が低く、長時間労働になりがちで、最低賃金にも満たない実態ということです。これを踏まえて二、三質問させていただきます。1点目ですが、歯科技工所の収入は、診療報酬が原資になり歯科医院から支払われているところです。歯科技工所に支払われる歯科技工委託料は、公定価格つまり歯科診療報酬に左右されますが、私どもが全国の技工所から集めた調査では、令和6年改定で補綴点数が引上げられたということですが、それを踏まえてもなお、長時間労働が続いているということが明らかになっています。こういう歯科技工士の労働実態を厚生労働省として把握されているかどうかお伺いしたいと思います。2点目です。把握されている場合、実効性のある対応に取り組んでこられなかったことがこういった事態を生んでいることも考えられますが、解決に向けて具体的な検討は省としてされていることと思います。この解決には、歯冠修復や欠損補綴などの保険点数の引上げと、歯科医院から技工所に適切な金額が渡るルール作りが必要と考えていますが、その認識はおありか、お伺いしたいと思います。
福岡厚労大臣:
厚生労働省では、日本歯科技工士会が3年ごとに実施している歯科技工士実態調査により、歯科技工士の現状について把握しています。この調査によると、例えば、就労時間については、令和6年で1週間当たり平均53.7時間と、令和3年に行われた前回の調査と比べて約4.5時間短くなっており、また、年収は「300万円以上、400万円未満」が17.5%と最も多くを占めている状況と承知しています。保険点数についても、令和6年度診療報酬改定において歯科技工士の賃上げ等を図る観点から、補綴物の製作に関する評価の引上げなどを行ったところです。また、歯科技工料金については、歯科医療機関と歯科技工所の自由取引に基づいて設定されているところですが、歯科医療機関から歯科技工所に対する委託が円滑に実施されるよう、標準的な費用の割合を告示でお示ししており、この考え方については、引き続き周知に努めてまいりたいと思います。いずれにしても、令和8年度診療報酬改定に向けて、歯科技工士の業務などが診療報酬において適切に評価されるように、中央社会保険医療協議会で議論してまいりたいと思います。引き続き、関係団体等とも連携しながら歯科技工士の処遇や就労環境の改善に努めてまいりたいと考えています。