連載 選択的夫婦別姓(17) コップの中の嵐?

コップの中の嵐?

小国香織(「別姓訴訟を支える会」副代表)

「与党内の争い」では済まされない

「コップの中の嵐」という言葉がある。元は劇の題名だそうで、正しくは「当事者にはおおごとでも、他にあまり影響せずに終わってしまうもめごと」という意味らしい。
夫婦どちらも名字を変えずに結婚できる選択的夫婦別姓は、今や新聞やテレビでメジャーな話題となり、世論調査で賛否を問われれば6割が賛成と回答するまでになった。しかし、政治の世界では与党である自民党の中に賛成と反対の両方がいて、反対派は少数でも声が大きく、党を分断するトピックであり続けているという。これは一政党内の争いにすぎないと思い、「コップの中の嵐」という言葉が頭に浮かんだのだが、国民一人一人の氏名を左右する多大な影響を持つ話なわけで、「他にあまり影響せずに終わるもめごと」ではないのだ。
昨年から今年にかけて国会審議に伴い、報道や朝夕の情報番組で選択的夫婦別姓の話題が目白押しであった。そもそもは「結婚するにあたって名字を変えないで済むようにしてほしい」というシンプルで長きに渡る課題だ。当事者としてはただただ一刻も早く実現してほしいと思う。

自民で「賛成」は勇気がいるのか

先の自民党総裁選で、9人の候補者の中で明確に賛成を表明していたのは石破、河野、小泉の3人であり、そのうち河野、小泉両氏はここまで決められなかった年月を振り返り、党内がまとまらないなら党議拘束をかけず国会で採決すべき、という意見であった。
総理総裁となった石破氏は「私は個人的には賛成。これは早い方がいいですね」「夫婦が別姓になると家族が崩壊するとか、よく分からない理屈があるが、やらない理由がよく分からない」「実際に不便を感じている人がいるんですよね」「(旧姓の)通称は通称でしかない」と発言。かつては自分の妻から「私は名字まで変えたのよ」と泣かれたという情感こもったエピソードを披露したこともある。
しかし、自らが賛成であってもキョロキョロ周りを気にしている人が一定数いるようだ。最近では自民党各都道府県連幹事長調査で、賛成は名前を出して1人、匿名で1人にとどまり、同姓のまま旧姓の通称使用拡大が24人で最多、次いで無回答15人、現行のままが6人だった。世間一般より賛成が少ないが、その上にたとえ賛成でも匿名としているというところに、自民党の中で賛成を堂々と言うのは依然勇気がいることだろうかと思う。

(全国保険医新聞2025年4月5日号掲載)

(おぐに・かおり)

「別姓訴訟を支える会」副代表。行政書士。2006年に夫の姓を夫婦の姓として法律婚をして今に至る。旧姓を職名として使うことが認められている国家資格のため法律婚を維持し旧姓使用中。第一次別姓訴訟の原告。