文科省の発表によると、2024年度の医学部入試の男女別合格率は、男性12・3%、女性10・6%となった。男女別合格率は、18年の医学部入試における女性差別の発覚以来、13年度分から毎年公表されている。21年度には女性の合格率が男性を上回ったが、その他の年度は一貫して男性の合格率の方が高い。さらに今年度の男女の合格率の差は、差別発覚前と同水準となった。合格率を経年的にみると差別が解消されたかどうかは不明確である。
一方、女性の受験者数は過去最多の5万人超となり、入学者の割合は女性が約4割となった。
入試の「ブラックボックス」なくせ
保団連女性部は10月31日に省庁要請を実施し、医学部入試差別に関して、公表されている男女別合格率の数値からは入試差別が解消されたとは言い切れず、点数の裁量の大きい論文試験や面接が「ブラックボックス」となって点数調整が行われる可能性もあるとして、各医学部(医学科)の科目ごとの男女別の成績調査・公表などを求めた。
文科省は女性の受験者数の増加が合格率に影響している可能性があるとし、科目ごとの成績調査の実施は否定するなど従来の回答を繰り返した。また、男女の合格率の差が1・5倍以上ある大学には個別に聞き取りをしており、今年は3校が対象になったことを明らかにした。
女性部からは、女性の合格者や入学者が増加しているとしても公正な入試に向けて引き続き合格率を注視すべきだと指摘した。さらに問題の背景には女性が妊娠、出産により働けない期間が生じる可能性があることから大学は女性よりも男性を入学させたいと思惑が生じている懸念があり、根本的な問題解決には医師の働き方の改善が必要と指摘した。
要請では医師増員、医師の長時間労働の改善、歯科医師数抑制の見直し、出産などのライフイベントとキャリア形成の両立が可能な専門医制度、病児・病後児保育の充実なども求めた。
医師増員に関して厚労省は、人口減少を理由に、将来的には医師数が医療ニーズを上回り、医師が供給過剰になることが見込まれると回答した。
女性部からは、地域で医師が不足し乳幼児健診の担当者がいない、地域の診療所が減少し医療機関へのアクセスに困難が生じているなどの実態を伝えた。さらに、女性医師の増加によりさまざまな理由から短時間勤務の医師も増えることが見込まれ、現状の医師の過酷な働き方の改善を前提とすれば、必要な医師数は変わってくるのではないかと指摘した。