第104回 消防団に入った。~地域と共に生きる~

勤務医コラム 第104回 消防団に入った。~地域と共に生きる~

へき地診療所に勤務して10年が経過しようとしている。診療所での勤務だけでもいろいろな職種との関わりがあり、多職種との関係性もできてくる。地域のコミュニティに入るということはそれだけでも十分なのかもしれない。しかし、それでは満足できない自分がいた。同年代や自分より若い世代との関わりが薄くなってしまうことだ。野球チームに入ったり祭りに参加したり、いろいろなイベントにも顔を出した。どの活動も楽しく、笑いあえる仲間ができた。長野原町で働いていて良かったなと思える瞬間に何度も出合った。
ある日「消防団に入ってくれませんか」という誘いが来た。全国的にも消防団員の確保が困難であり、長野原町も同様だ。診療所での活動以外に長野原町に貢献できることは何かないかと思っていた矢先の出来事であったので、すぐに入団の決断をした。39歳で入団することは異例であるらしい。
新しい経験ができることはとてもワクワクする。消防団の活動は、夜間にポンプ車で地域を巡回したり、ポンプ操法の訓練をしたりするものである。歳末夜警の業務もある。行進の練習や敬礼の練習もした。まだ入団1年目なので右も左も分からない状況であるが、年下の先輩たちは詳しく教えてくれる。改めて、世の中には自分の知らないことがたくさんあるのだなと実感させられる。
他の場面ではどちらかというとリーダーや指導する側になる場合が多かったが、消防団では逆の立場でありこれも自分が成長できる機会になっている。
地域に入るということは、そもそもどのようなことなのか。自分がどのような人間であるかを周囲に認識してもらい、その中でどのように関わっていくのかが重要であると考える。認識され受け入れられたときに改めて自分の存在意義に気付けるのかもしれない。

金子 稔

2011年自治医科大学医学部卒業。15年から現職。医学博士、プライマリケア認定医・指導医、地域総合診療専門医・指導医、介護支援専門員、スポーツドクターなど。群馬県臨床内科医会理事、群馬県介護支援専門員協会理事兼任。長野原町消防団員。