
勤務医コラム 第106回 勤務医の働き方でシンポ
去る3月9日に東京協会は「医師の働き方改革施行後の現状と課題~医療安全と医師の健康は守られているのか~」を開催しました。
キャリア形成4つのモデル
筆者が司会を務め、最初に提案として東京慈恵医科大学臨床検査医学講座の越智小枝教授が「大学病院勤務医と働き方改革」と題する講演を行いました。大学病院は臨床・研究・教育の3つの役割を持っているため極めて厳しい状態に置かれているとのことです。越智先生はご自身のリアルな体験から、「アカデミアから見たキャリア」、「給料から見たキャリア」、「時間のゆとりから見たキャリア」、「満足度から見たキャリア」の4つのモデルを示し、どのような選択を行うかが重要であるとの見解を示しました。
次に総合診療科の専攻医が「一専攻医の働き方と子育て」と題するテーマで報告、初期研修の3割はうつ状態であるという調査結果があること、一方で専攻医になると責任が大きくなると同時に、内科であればJ―OSLER(専攻医登録評価システム)などに膨大な時間がかかるなど、3分の1以上の専攻医が研修を修了できていない事態などを報告しました。
宿日直許可乱発で改善見込めず
次に、地域の第一線病院で働く東葛病院(千葉県流山市)の土谷良樹医師は、現状の医師不足では医師の過重労働なくして地域医療は成り立たず、厚労省は宿日直許可を乱発し、時間外労働を自己研さんとするなど、長時間労働を合法化する動きを進めているため、結果として医師の働き方の改善はほとんどない実態を報告しました。
最後に東京協会・病院有床診部の水山和之部長(明和病院院長)から「医師はどのように働くべきか~民間病院経営の立場から~」と題する報告が行われました。医療費抑制政策の下で2024年に消えた医療機関は過去最多の786件に及ぶこと、病院5団体が「病院経営は破綻寸前、地域医療崩壊の危機」とする緊急要望書を出していることなどを報告しました。
討論では医学生も参加して活発な議論が行われました。

植山 直人
東京協会会員、全国医師ユニオン代表、ドクターズ・デモンストレーション共同代表、医療生協さいたま行田協立診療所勤務。著書『安全な医療のための「働き方改革」』(岩波ブックレット)。