第99回 多職種連携の強化を ~患者のための薬局ビジョンの紹介~

勤務医コラム 第99回 多職種連携の強化を ~患者のための薬局ビジョンの紹介~

 団塊の世代が全て75歳以上となり65歳以上の人口が3割となる2025年問題の解決には、質も効率も高い「治し、支える医療・ケア」を提供する多職種協働の枠組みの強化が必須です。
分子遺伝学の発達による薬物療法の進化・深化は目覚ましく、内分泌療法・化学療法の上に分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬なども加わり、治療効果は大いに向上しました。一方、その副作用も複雑化・多様化し、薬剤師が薬物治療の要となるチーム医療・ケア体制の拡充に期待が高まっています。また、加齢に伴う複数の慢性疾患や老年症候群を患う高齢者の多剤服用による有害事象の発生や危険を伴うポリファーマシーの問題解決に、薬剤師の役割は重大です。
15年に厚労省は「患者のための薬局ビジョン」を策定しました。▽服薬情報の一元的・継続的把握に基づいた薬学的管理・指導▽在宅対応・24時間対応▽多職種連携―を3本柱とする「かかりつけ薬剤師・薬局」制度に加え、疾病予防や健康相談のための「健康サポート機能」と「高度薬学管理機能」が示されました。門前薬局は地域包括ケアシステムの一翼となる患者・住民本位の薬局に進化します。
患者・住民が個別に最適化された薬物治療が受けられるように薬剤師は専門性と良好なコミュニケーションで従来の薬物調剤・管理などの対物業務に加え、患者・住民と密接な対人業務に注力します。
質の高い対人業務を実践するために薬剤師の大学教育は06年度より6年制になりました。医学部の臨床実習のように5年目に薬局と病院でそれぞれ11週間の学習成果基盤型の実務実習を受けます。薬学部の実務実習にご協力される先生方にあつく御礼申し上げます。
23年「薬学教育モデル・コア・カリキュラム」の改訂では医学・歯学教育との連携が強化され、「実務実習に関するガイドライン」も改訂されました。医療・ケアチームにおける薬物治療の要となる将来のパートナーのご指導をどうぞよろしくお願い申し上げます。

千田一嘉

金城学院大学薬学部教授。呼吸器専門医、老年科専門医。愛知協会・勤務医の会副代表。