月刊保団連2022年5月号

「道」

ウクライナ侵攻で見えた2つの「核」リスク

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鈴木達治郎

特集

うんちと向き合う
──「食べる」と「出す」と命の循環

私たち現代人は「食べる」ことについては大いに語ってきたのにもかかわらず、「出す」ことについてはトイレで水に流して、一瞬のうちに忘却するようになっている。かつては自然の中を循環していた人間の「うんち」は循環の環(わ)から外れ、一方的に処理されるだけの存在となってしまった。いつの間にか、うんちと向き合うことがなくなった現代人は何を見失い、どのような不調を抱えることになっているのか。うんちをつくり出す腸の働きや排泄する過程、社会におけるうんちの役割などから健康と生命の循環を考える。

大便から見えてくる腸の役割と健康

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「便の研究をしている辨野義己です!」と自己紹介するようになって約50年になります。まるでペンネームのような名前ですが、本名です。大便を調べると腸内常在菌のことが分かるため、大便は腸内環境の研究の上で重要な位置づけとなっています。これらの研究を通して、腸内常在菌の腸内・脳内代謝物へ及ぼす影響について網羅的な解析が行われ、宿主への役割が見えてきました。21世紀は腸内常在菌の構造と機能が全面的に解明され、自らの健康管理・疾病予防に応用し得る時代となるでしょう。

辨野義己

排便力をつけるための食生活
2つの食物繊維をバランスよく

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慢性便秘症は、排便回数減少型と排便困難型とに分類される。その多くは排便回数減少型で、一部には排便困難型が存在する。そして排便困難型は排便回数減少型をも併発していることが多い。食生活を改善することによって効果が見られるのは、排便回数減少型である。従って、排便困難症のみの慢性便秘症を除く多くの慢性便秘症の症例に対して、食生活の改善が有用であると示唆される。本稿は、食物繊維を中心に排便力をつけるための食生活について述べる。

松生恒夫

口から肛門という1本の管で起きることの意味とは
──潰瘍性大腸炎の体験から

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潰瘍性大腸炎に襲われてから、筆者の日常は一変した。食事と排泄に困難を抱えることになり、食べることの社会的な意味や、排泄の困難による尊厳の危機など、健康だった頃は思いもしなかったような様々な問題に直面することになった。ただ栄養を補給したり、不要なものを排出するだけにとどまらず、「食べる」と「出す」は人間の精神の奥深いところまでつながっている。口から肛門という1本の管で起きることは、私たちの生き方をどのように左右しているのか、潰瘍性大腸炎の体験から考える。

頭木弘樹

なぜ、私たちはウンコを遠ざけるようになったのか
排泄の近現代史

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社会人類学者メアリ・ダグラスは『汚穢(おわい)と禁忌』の中で、「絶対的汚物といったものはあり得ず、汚物とはそれを視(み)る者の眼の中に存在するにすぎない」「それは、諸観念の体系的秩序との関連においてしか生じ得ない」と言っている。現代においてウンコは「汚物」と呼ばれることが多いが、それはどのような諸観念の体系的秩序と関係してきたのだろうか。本稿では、日本における下肥利用と屎尿(しにょう)処理の歴史をたどりながら、人間とウンコとの関係を考察し、未来の社会を展望する。

湯澤規子

論考

女性医師・歯科医師の家事と仕事「二重負担」くっきり
保団連開業医調査より

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全国保険医団体連合会が医科・歯科開業医会員を対象に実施した「開業医の意識・実態基礎調査」で、家事・育児・介護等の負担が女性に大きく偏り、女性医師・歯科医師が仕事との「二重負担」に陥っている状況が浮かび上がった。

2018年に複数の医学部入試で女性差別が発覚した際、「女性医師が増えると(産休・育休・時短勤務が増えて)現場が回らない」という声があったが、この背景には、過労死ラインを超えるような医師の過酷な働き方に加え、家事等の負担が女性に大きく偏っている状況がある。

今回の分析結果には、そうした医療界における性別役割分業意識が如実に表れていると言える。

全国保険医団体連合会女性部

診療研究

新型タバコ時代の禁煙・禁煙支援
第4回 禁煙は全てのタバコをやめること

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タバコは全ての危険因子の中で、日本人の死亡やがん罹患・がん死亡に最も関与している要因であり、タバコ対策・禁煙支援・禁煙指導は、日本において取り組むべき健康政策の中でも、優先順位が第1位に位置付けられるものである。紙巻タバコだけでなく、加熱式タバコなど新型タバコを含めた全てのタバコをやめ続けることが禁煙である。タバコの害に配慮しようとして新型タバコに手を出している人が多く、その気持ちを考慮した禁煙支援が必要だと考えられる。

田淵貴大

文化

雑草の生存戦略から学ぶ
弱者とはずれ者たちのしたたかな知恵
第3回 ツメクサ、ヨモギ

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自然界は、私たちが想像する以上に激しい競争が繰り広げられています。競争に負けたら生き残ることができない、そんな弱肉強食の世界です。その自然界の厳しい競争の第一線からうまく逃れ、自分に合った居場所を見つけて生きているのが、雑草です。私たち人間も常に競争社会を生きています。雑草の生き方から、弱者なりに競争社会を生き抜く術(すべ)を学びます。今回はツメクサ、ヨモギを紹介します。

稲垣真衣