月刊保団連2022年7月号

「道」

「9条改正」は自滅の道 ──言葉遊びではない本当の自衛を

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藻谷 浩介

特集「疲弊した医療現場の再生のために──2022年度診療報酬改定」

なぜ、日本の医療費は抑制されてきたのか 5期連続マイナスの診療報酬改定の背景

新型コロナで明らかになった医療崩壊のルーツは、はるか昔の明治期までさかのぼる。財政悪化 で公的医療をつぶした「樹液を吸い取る政治」だ。第二次世界大戦の敗戦後も「医療費亡国論」で医療 費と医師数抑制が徹底され、現在、東京都などで、公立・公的病院の廃止・再編統合も進められようとしている。ウクライナ戦争を機に改憲と防衛予算増が叫ばれる現在、医療や社会保障崩壊の危険性が強まっている。社会的共通資本である医療を守る責任を果たすため、たゆまぬ情報発信の努力 が求められている。

本田 宏

コロナ禍で逼迫した入院医療の立て直しのために

コロナ禍では日本の入院医療の脆弱性が露呈した。とりわけ病床不足によって高齢者が医療にアクセスできず、介護施設や自宅に留め置かれたが、2022年度の診療報酬改定は一層の急性期病床 の削減を進め、「良質かつ適切な医療の提供」(感染症法)を遠ざけようとしている。「誰一人取り残 さない」(SDGs)という理念が重要だ。医療の価値を向上させる政策への転換が必要である。医療の変革が求められている。

吉中 丈志

2022年度診療報酬改定、医科の問題点 ──感染対策、リフィル処方、マイナンバー制度など

2022年度の診療報酬改定は本体改定率が+0.43%となり、コロナ前の2020年度の+0.55%よ りも厳しい改定となった。医療機関の経営状態は厳しく、診療報酬の抜本的な改善が求められる。 医科関係では、新設された感染対策向上加算、リフィル処方箋、マイナンバーカード制度の推進など も、医療機関に混乱をもたらすことが懸念される。

全国保険医団体連合会
診療報酬改善対策委員会

【現場の声①】発熱外来 口では検査拡充と言いながら、この仕打ち
感染症対策に正当な評価を

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井上 美佐

【現場の声②】小児科 子どもたちが安心して受診できるよう医療費助成を

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武藤 一彦

コロナ禍で顕在化した歯科医療の困難は解消されるのか

今次の診療報酬改定で、歯科の改定率がわずか0.29%プラスで、金額にして約90~100億円を 財源に実施された。コロナ禍で疲弊した歯科医療機関の経営立て直しには程遠い改定率であった。 極めて限られた財源の中で、歯内療法等に係る処置について、わずかながらも評価がなされたが、重 要項目については十分な評価はなかった。その中で、改善が見られる点は何か、次回改定に向けてさらに改善を求めていかなければならない点は何か、より良い歯科医療を提供していくために必要 なことについて考えてみたい。

田辺 隆

論考

問われる新型コロナ感染症対策の費用対効果 ワクチンと治療薬への支出は適切か

新型コロナウイルス感染症対策を目的に、過去3年間に20兆円近くの予備費が計上され、そのうち、3.7 兆円がワクチンや治療薬の購入に支出されている。予備費は閣議決定のみで執行可能であり、財政規律も緩みがちである。これらの対策の効果については総括されていないが、今後、費用対効果を算出すべきである。現在、ワクチンや治療薬は大量の在庫を抱えており、価格や購入量の審議過程、さらに製薬会社との 契約内容について情報公開が求められる。

小島 勢二

進化する手指衛生
第1回 消毒用アルコール、次亜塩素酸水、オゾン水の有効性の検証(前)

古代ギリシャの医師ヒポクラテスは傷口の洗浄に一度煮沸した水を利用し、ローマ帝国時代のギリシャ の医師ガレノスはワインを浸した包帯を用いたという。ゼンメルワイスが生きた1800年代は塩素水溶 液や石炭酸を使用した。そして1900年代に現在の手指衛生の消毒用アルコールが開発されていった。 1996年に米国CDCによって発表されたスタンダード・プリコーションは医療の現場において感染予防の 基本である。その第一は手洗いと手指消毒、いわゆる手指衛生である。現在では次亜塩素酸水やオゾン水 は進化した消毒剤といえよう。手指衛生への消毒剤に関して、総論と基礎研究を筆者が、臨床研究を福島 県立医科大学感染制御学講座の仲村究らがまとめる。

王 宝禮

診療研究

心不全治療の新たな展開(1)
〜急性・慢性心不全診療ガイドライン─2021年フォーカスアップデート版〜

2021年3月に「日本循環器学会/日本心不全学会合同ガイドライン フォーカスアップデート版」が公 表された。2018年3月の「急性・慢性心不全診療ガイドライン」以降、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬、SGLT2阻害薬、イバブラジンの新たな心不全治療薬のエビデンスの報告が相次いだこと、欧米ガイドラインがアップデートされたことから改訂された。本稿では、2021年フォーカスアップデート版での主要な改訂点について報告する。

瀬在 明

「ソニックサージェリー」を試してみませんか(1)
──超音波スケーラーを使った歯周外科手術

歯周外科処置は歯周病の治療法として非常に有効な方法である。しかし、患者・術者双方にとってストレスの多い処置でもある。筆者が考案した「ソニックサージェリー」は超音波スケーラーの使い方を工夫することで、見えにくい部位の歯肉切開、剥離、骨縁下欠損部の不良肉芽除去が簡易になる。従来法ではこれらの工程で多くの時間と体力を消耗していたが、ソニックサージェリーをうまく併用することで、歯周外 科処置は飛躍的に楽になると考える。

金﨑 伸幸

文化

雑草の生存戦略から学ぶ 弱者とはずれ者たちのしたたかな知恵

第5回 スミレ、カラスノエンドウ、ホトケノザ

アスファルトの隙間で、ポツンと咲く雑草たち。一見するとひとりで生きているような雑草も、 実は周りにいる昆虫や生き物と支え合って一緒に生きているのです。何もかもを、ひとりきりで抱 える必要はありません。ひとりでできないときは誰かに頼ってもいいのかもしれません。今回は周 りと助け合う植物の戦略について身近な雑草であるスミレとカラスノエンドウ、ホトケノザの例を 紹介します。

稲垣 真衣

経営

【経営・税務誌上相談502】海外にいる子どもに贈与した場合

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益子 良一

【雇用問題 246】契約期間中の職員の雇用を解約することは可能か

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曽我 浩

【患者トラブル相談室3】ネットへのネガティブな書き込み(3)警察沙汰を嫌うタイプ

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尾内 康彦

会員

【書評】日本医療総合研究所編
『コロナ禍で見えた保健・医療・介護の今後 新自由主義をこえて』

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竹田 智雄