月刊保団連2023年6月号

「道」

「くうきを読まず呑みこまれない」ために 大勢に流されず、自分の頭で考えよう

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山田 健太

特集「ジェンダー平等で多様性ある社会へ」

ジェンダー平等で多様性ある社会へ

差別や不平等は、人権侵害であるだけでなく、社会や組織の活力をそぎ、健全な発展を阻害する。日本は先進国の中でもジェンダーギャップが大きいことは広く認識されるようになった。医療界に目を転じても、医師の女性割合は先進国中最低レベル、医療機関の代表はほとんど男性が占めている。保団連の調査では、夫婦とも医師・歯科医師の場合でも、家事・育児等の負担は女性に大きく偏っていた。ジェンダー平等を求めることに異論はないはずだが、なかなか解決しないのはなぜだろうか。
特集では、医療現場のみならず、マスコミ業界など、長時間労働を前提とした「男社会」の課題を見つめ、脱却への道を探る。

「思いやり」だけでは解決しないジェンダー差別の構造

これからの時代、組織の発展にジェンダー平等は欠くことができない。本稿では、ジェンダー平等の領域でよく聞かれる「思いやり」言説が、ダイアン・J・グッドマンが指摘する「抵抗」に当てはまるのではないかとの問題意識から、具体的な実践について検討する。併せて、ジェンダー平等に関する取り組みは極めて日常的かつ地道な自己省察を要するものであること、女性活躍推進法により日々の取り組みは定量的に測ることが可能であることを、実例を踏まえつつ紹介したい。

神谷 悠一

医療現場に残る性別役割分担意識男女共同参画に対する意識調査から

全国の国立・公立・私立大学の医学部長(医科大学長)、大学病院長が加入する全国医学部長病院長会議(AJMC)は2022年5月、医師・医学者の男女共同参画に対する意識調査の結果をまとめ、提言を公表した。同会議男女共同参画推進委員会の唐澤久美子委員長に、調査結果の特徴や、必要な取り組みについて聞いた(聞き手:細部千晴・保団連女性部担当理事)

唐澤 久美子

女性医師が集い、学び合いながら多彩な活動に取り組む「JOYJOYの会」

秋月 美和

自身の内なるバイアスを見つめよう多様性の尊重で働きがいのある医療現場に

「女性と男性では選択する診療科に偏りがある」「外科の医師が足りないのは、女性医師が増加したことが原因」といった言説を度々耳にしますが本当なのでしょうか? 実態をひもとくことで、真の問題を考えてみます。そもそも人は何のために働くのか?経営の本質とは何なのか?なぜ、多様性が必要なのか?を医師である前に「人」としての働き方・働かせ方に加え、医師という存在が患者と患者の家族に何をもたらすのかも交えてお伝えします。

河合 薫

論考

女性医師・歯科医師の家事と仕事「二重負担」くっきり(再録)保団連開業医調査より

全国保険医団体連合会が医科・歯科開業医会員を対象に実施した「開業医の意識・実態基礎調査」で、家事・育児・介護等の負担が女性に大きく偏り、女性医師・歯科医師が仕事との「二重負担」に陥っている状況が浮かび上がった(本誌2022年5月号に掲載したものに加筆の上、再掲載します)

全国保険医団体連合会女性部

診療研究

糖尿病とその合併症に関する最近の話題

メトホルミンの歴史は中世ヨーロッパにまで遡さかのぼる。フレンチライラックを煎じて飲むと糖尿病による多尿が改善することが知られており、後にこの効果の本体がグアニジンという物質であることが明らかにされた。グアニジン骨格を2つ持つことを表すビグアナイドが開発され、現在のメトホルミンの源流となっている。新薬の創出が相次ぐ中にあって、メトホルミンの存在感はなおも揺るがずにいる。本稿ではメトホルミン使用の意義について再考したい。

川浪 大治

口腔顔面痛──歯痛・顎関節症と誤認しやすい病気の鑑別法

特発性口腔顔面痛 いわゆる非定型顔面痛/歯痛・舌痛症

病院のどの科にも「原因不明の慢性疼痛」を訴える患者がいる。従来は、それぞれの科でそれらしい診断名を付けて、苦慮しながら対応してきたが、近年ではこれらは痛覚変調性疼痛(nociplastic pain:痛みを感知する脳の機能の異常によって生じる痛み)であろうと考えられるようになっている。歯科領域では「特発性口腔顔面痛」として口腔灼熱痛症候群(BMS)、持続性特発性顔面痛(PIFP)、持続性特発性歯痛(PIDAP)の3つの疾患がある。本稿ではこれらの疾患の特徴と治療法について述べる。

井川 雅子

文化

星と人類の歩み 天文学の30年─刷新される宇宙観 第4回 宇宙の始まりと未来

宇宙の全体がどうなっているのか、どのように生まれて変化しているのか。これを探求する「宇宙論」も、ここ30年に大きく発展した。宇宙誕生が今から約138億年前であり、極小だった宇宙が猛烈な膨張を起こした後にわずかな密度の斑が残り、それがやがて天体の種となったことが分かってきた。そして宇宙の膨張は今、再び加速している。膨張の再加速の理由を理解することは、宇宙の遠い未来を予測する上で欠かせない。

青木 和光

経営

【経営・税務誌上相談】老後の備えのために、どのような制度があるか

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益子 良一

【雇用問題】政府が普及を目指す「ジョブ型雇用」とは何か

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曽我 浩

【患者トラブル相談室】治療費の返還を請求されたケース

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尾内康彦