月刊保団連2023年12月号

「道」

恐怖と不安にドライブされたDX 政策 なぜ、希望も高揚感も感じられないのか

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内田 樹

特集「歯科医療提供体制の充実に向けて」

高齢者人口が急速に増加する中、新型コロナの流行などにより、歯科医療の重要性と提供体制の再構築が重要課題として浮き彫りとなった。高齢化に伴う歯科医療需要の変化や歯科技工問題、歯科医師による新型コロナワクチン接種と歯科医師法との関係なども改めて認識されつつある。このような状況を踏まえて、保団連は『歯科医療改革提言』第3版を発行。歯科医療提供体制の充実のためには、歯科診療報酬の抜本的引き上げによる歯科医療費の総枠拡大が必須であると提言した。歯科医療改革提言の視点から、現在の歯科医療を取り巻く問題点を提起する。

国民の健康を守るため、歯科医療費の総枠拡大を
『歯科医療改革提言』第3版の論点から

近年、ますます重視されている歯科医療の改善・改革には、約1兆円の公的保険歯科医療費の総枠拡大が必要である。また今後は患者・国民の健康づくりや、それを支えるヘルスプロモーションなどに歯科医療が関わる重要性も指摘されている。このような歯科医療を取り巻く状況を踏まえ、保団連は2023年、『歯科医療改革提言』第3版を発行し、全ての国民がより良い歯科医療を受けることができるよう、課題とその解決の方向性を示した。本稿では、同提言の中から主だった論点を紹介する。

馬場 淳

歯科技工問題から見る歯科医療提供体制の危機

歯科技工士養成学校の募集停止・閉校が相次ぐ中、歯科技工士不足の加速により安定的な歯科医療の提供が危ぶまれている。これは低歯科診療報酬のあおりを受けた歯科技工士が過当競争の下で薄利多売や長時間労働を強いられ、歯科技工士という職業を選ぶ学生の減少につながっていることに起因する。歯科技工問題の解決には歯科医師、歯科技工士の両者が成り立つように、歯科医療費の総枠拡大による歯科診療報酬の引き上げと、「7:3大臣告示」に準ずる適正な技工料金が歯科技工士の手に渡るルール作りが必要だ。

深井 修一

歯科医師による「医業」の違法性を解消するために
福岡県歯科保険医協会による提言

新型コロナウイルス感染症は世界的な流行となった。日本国内では公衆衛生上の必要からPCR検査およびワクチン接種が行われ、多くの歯科医師がワクチン接種等に協力した。歯科医師によるワクチン接種行為等は、医師法との関係でいかなる事由によって違法性が阻却され得るか議論がなされた。過去には、歯科医師による救急救命行為が医師法違反に問われた事件もあった。歯科医師による医療提供について、医師法・歯科医師法の視点から、現状に即した法整備が必要である。

浦川 修

人口減少地域で直面する歯科医療の危機
─歯科医療提供体制を視野に─

郡部・へき地などの人口減少地域では、医療資源・医療従事者の減少により地域医療格差が拡大してきた。格差が深刻化する超高齢社会においては医療資源の活用と医療連携の充実が求められており、今後、地域の健康を支える歯科医療がますます重要となってくる。政府はこれまでも目指すべき歯科医療提供体制を繰り返し提示しているが、そのビジョンは論点のズレや具体的な対策の欠如など、問題が山積している。本稿では人口減少地域における歯科医療の課題と展望について論ずる。

平田 米里

歯科における健康格差縮小の重要性
社会的決定要因を考慮した対策を

う蝕や歯の喪失が減ったことばかりが強調されるが、日本においても歯科疾患は全ての疾患の中でも有病率が上位を占めている。また健康格差も大きく、乳歯う蝕、永久歯う蝕、歯周病や高齢者の現在歯数と人の一生を通じて格差が存在する。こうした格差の縮小には、啓発や個人の努力に頼る方法では限界がある。財政的に歯科受診の自己負担を減らす方法や、どのような家庭の子どもでも学校に行けば予防の恩恵を受けられる集団フッ化物洗口といった、健康の社会的決定要因を考慮した方法が求められる。

相田 潤

歯科の適正医療費は4兆3800億円
新医療費体系における不都合な真実

全身の健康保持に果たす歯科医療の重要性は増しているものの、歯科の保険収入は医科の43%と長年にわたり低迷し、歯科界全体に拭い去ることのできない閉塞感が漂っている。筆者は32年間にわたり歯科医療問題の執筆を重ね、2023年、「歯科の適正医療費は4兆3,800億円である!」という論文を発表した。歯科医療の歴史における2つの不都合な真実を解明して、歯科界の明るい未来に向けて、歯科医療のあるべき姿について提言を行う。

中道 勇

診療研究

[シリーズ] 認知症診療のパラダイムシフトを迎えて

第2回 アルツハイマ ー病の歴史・疫学・病態

ドイツの精神医学者であるアロイス・アルツハイマーは1906年、初老期に認知症を発症した51歳女性の症例を報告し、神経原線維変化を発見した。1910年、アルツハイマーの師であるエミール・クレペリンは、この疾患をアルツハイマー病(AD)と命名した。ADは孤発性と家族性に分類され、家族性ADは常染色体優性遺伝の遺伝形式をとり、原因遺伝子としてアミロイドβ前駆蛋白とプレセニリン1、2が同定されている。ADの病態としてアミロイドβ蛋白の沈着が契機となり神経細胞変性が生じるアミロイドカスケード仮説が提唱されている。

木村 成志

歯科医師が知っておきたい摂食嚥下の基礎知識

第2回 喉頭挙上の重要性

嚥下時に喉頭挙上(喉仏の挙上)がなぜ重要なのか、簡単に説明できますか? 嚥下の際に喉頭(喉仏)が挙上することは、誰もが知っていることかと思います。しかしながら、ではなぜ嚥下時に喉頭挙上が重要なのか、それが甘くなるとどのような不具合が生じるのかということについては意外と知られていません。今回は、嚥下の際に咽頭で何が起きているのかについて、分かりやすく説明していきたいと思います。

市村 和大

文化

牧野富太郎が植物に向けた精緻な観察眼

第4回(最終回)牧野が育てた植物図の担い手たち

牧野植物学の集大成ともいえる『牧野日本植物図鑑』は、牧野富太郎が78歳の時、1940年に出版された。同書には、牧野が指導した山田壽とし雄お 、水島南なん平ぺいらの植物図も収録されている。牧野がこれらの植物図の担い手に対して行った指導には、植物のみずみずしい姿を的確に捉えてきた牧野の観察眼が生かされていた。最終回となる本稿では、牧野が後世の植物図に及ぼした多大な影響と、牧野が触発された江戸後期の絵師、関根雲停について紹介する。

田中 純子

経営

【経営・税務誌上相談】税務調査における資料収集

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益子 良一

【雇用問題】医療機関へ突然の立ち入り調査 背景に医師の働き方改革

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曽我 浩

【患者トラブル相談室】危険を感じたら迷わず訪問中止を

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尾内 康彦

会員

創刊40周年記念リレーエッセイ ~私と『月刊保団連』 ~

根底に流れるポリシーは変わることなく

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宇都宮 健弘