【緊急記者会見】マイナ保険証、オンライン資格確認 医療現場・患者トラブル調査
緊急記者会見
マイナ保険証、オンライン資格確認医療現場・患者トラブル調査
全国保険医団体連合会
【結果の概要】
約6割(1429医療機関)がトラブルを経験
27の保険医協会・保険医会の会員医療機関2874件の回答があり、オンライン資格確認の運用を開始した医療機関(2385件)の内、59.9%(1429件)が、「トラブルがあった」と回答した(図2)。
参考:先行して調査を実施した9都道府県の保険医協会の調査結果(816件トラブル)を調査項目が同じものを合算して集計した。
トラブル件数は「資格無効・該当なし」が67%で最多
トラブルの種類(複数回答・図3)は、「無効・該当なしと表示され被保険者の資格情報が正しく反映されない」が67%と最多となった。直接的には被保険者情報を収載するサーバーや保険者、事業所の被保険者情報の抹消や更新遅れ、更新不備等に起因するエラーであり古い保険証がデータ上切り替わっていないことによる。
転職・退職、結婚、出産など人生のライフステージに伴い、加入する保険者や加入形態が切り替わる毎に発生するトラブルである。
保団連は、2022年11月の調査で同トラブルが全体の6割を占めることを明らかにし、厚労省にオンライン資格確認義務化延期とシステムの改善を繰り返し求めてきたが一向に改善しないまま見切り発車された。医療現場の訴えを無視し、実際にトラブルを自ら招いた政府・与党の責任は重大である。
マイナ保険証や顔認証付きカードリーダーの不具合では、「顔認証付きカードリーダーまたはパソコンの不具合によりマイナ保険証の読み取りができなかった(49.7%)」「マイナ保険証の不具合(ICチップの破損等)で読み取りができなかった(20.5%)」となった。
現行の健康保険証による資格確認は慣例で月1回の確認で対応してきたが、マイナ保険証は受診の都度顔認証付きカードリーダー(エラーが出れば4桁の暗唱番号)が必要とされる。そのため顔認証付きカードリーダーを巡るトラブルは今後とも増加することが想定される。
これらのトラブルは、医療機関や患者の責任によるものではない。2022年9月に義務化されてからわずか半年ですべての医療機関にオンライン資格確認システムの整備を強制したことが原因の一つである。
医療機関では、顔認証付きカードリーダーを設置し、審査支払機関のサーバーに常時アクセスが可能となる閉域通信回線網の整備、電子機器などの保守・管理やセキュリティ対策などを医療機関に義務付けた。きちんと稼働するかどうかの検証なく見切り発車した結果、医療機関内の既存の電子カルテやレセプト請求コンピューターとの不具合や稼働不良が生じている。診療の停滞と資格無効に伴うレセプト請求(保険請求)の返戻など実害が生じており、患者とのトラブルが続出する事態となった。
※先行調査の項目が異なるため、保団連調査表に基づく7協会を除く数字を集計した。
健康保険証を確認してトラブルへ対処 75.2%
トラブルへの対処(図4)として患者が持参した「その日に持ち合わせていた健康保険証で資格確認した(75.2%)」、「コールセンターに連絡した(14.3%)」「保険者に連絡した(21.7%)」レセコンメーカーに相談した(29.6%)」などである。
一方で、トラブル時にすぐに対応できなかったが299件(40.1%)となった。その理由として「健康保険証を持参せず資格確認できなかった(37.8%)」、「コールセンターにつながらない(33.4%)」、「レセコンメーカーにすぐにつながらない(37.1%)」「保険者に連絡したが資格を確認できなかった(16.1%)」とすぐにトラブル対処ができないケースも多い(図6)。
災害・停電時などシステム障害時にマイナ保険証では被保険者情報が券面で確認できないため、保険診療そのものが行えなくなる。
政府は、24年秋に現行の健康保険証を廃止する方針を示しているが、券面に被保険者情報が表記されている現行の健康保険証が存続されないと、こうしたトラブルへの対処が途端に困難となる。
トラブルで患者から苦情が13.7%
トラブルが発生したことについて患者から苦情を言われたケース(図3)が13.7%(122件)となり、医療機関と患者の無用なトラブルを招いていることがわかった。
上記の通り、問い合わせ対応先の体制不備等によりトラブルへすぐに対処できないケースも多い。政府は、オンライン資格確認システムの義務化、マイナ保険証ありきの政策を強引かつお粗末な体制で進めてきた結果、マイナ保険証等の利用拡大に伴い患者・医療現場双方が被害を受ける状況となっている。
他人の情報が紐づけられていた東京の医療機関の事例では、患者が激怒し、医療機関スタッフに説明を求められたものの、医療機関側は「わからない」としか答えられない状況にあり大変困惑していることが報告されている(別紙)。
マイナ保険証「無保険扱い」-窓口で10割請求は206件
マイナ保険証のみ持参で資格無効と表示されたため、患者さんに窓口で一旦10割負担を徴収したケースが206件あった。
参考:福島、千葉、東京医科、東京歯科、神奈川、長野、大阪歯科、高知、鳥取、沖縄
マイナ保険証のみの場合は、オンライン上で資格確認が可能となるまで“無保険者”となる。資格確認が困難な場合は10割徴収される。「自費扱い」となるため高額療養費制度も利用できない。経済的負担により「受診が困難」となることが想定される。現状であれば、後日、健康保険証を持参すれば7割分が返金されるが保険証が廃止され、マイナ保険証も「無効・該当なし」となると保険診療が受けられなくなる(自費扱いとなる)。
「他人の情報が紐づけられていた」が少なくとも37件
「他人の情報が紐づけられていた」との回答は現時点で37件報告された。茨城県保険医協会の調査では、本人以外の複数の他人の情報が閲覧できる事例が報告された(別紙)。
参考:茨城9件、千葉8件、東京医科5件、長野2件、大阪医科8件(※)、奈良1件、愛媛1件、高知1県、鳥取1件、福岡歯科1件、※大阪は先行調査で「誤った個人番号・氏名が登録」の件数
マイナ保険証を利用すると患者本人と当該医療機関において薬剤情報、診療情報の閲覧が可能となる。2023年4月のマイナ保険証利用は約829万件でその内、顔認証付きカードリーダーのタッチパネルで同意し、薬剤情報の閲覧を利用した件数は約473万件、診療情報の閲覧は約273万件である。
こうした状況で「他人の情報が紐づけられていた」ことは、患者のプライバシー侵害や情報漏洩につながる。他人がマイナポータル等で薬剤・診療情報を閲覧した可能性は捨てきれず薬剤・診療情報の閲覧機能は直ちに停止すべきである。
【参考資料①オンライン資格確認の利用状況】
2023年4月分のオンライン資格確認システムの利用は、全国で1億3164万件
マイナ保険証利用は約829万件で全体の6.3%
93.7%が現行の健康保険証の被保険者番号を利用し、オンラインで資格確認
【2022年11月の調査/運用開始24%】
(保団連調査、8707回答)
・運用開始医療機関の4割でトラブルが発生
・主なトラブルは、6割が「有効な保険証が無効と判定された」、4割が「顔認証付きカードリーダーの不具合」。
・保険証廃止による影響(懸念)
82%が「マイナカード利用に不慣れな患者への窓口対応の増加」
74%が「システム不具合時に診療継続が困難」
70%が「カードの紛失・盗難などトラブル増加」