【記者会見6.21】10000医療機関が回答 マイナ保険証 トラブルが止まらない

【記者会見6.21】10000医療機関が回答 マイナ保険証 トラブルが止まらない

10000医療機関が回答
マイナ保険証 トラブルが止まらない
最終集計(6月19日)

全国保険医団体連合会
副会長 竹田智雄

1.調査結果(6月19日集計)

地域:41都道府県(44保険医協会・保険医会※東京、京都、福岡が医科・歯科協会)
送付数:66,462件
全体回答数:10,026件(15.1%)
システムを運用している:8437件(84.2%)


トラブルあり:5493件(65.1%)
トラブルなし:2944件(34.9%)

【トラブルの種類(複数回答)】(N=5493)
「無効・該当資格なし」と表示された:3640件(66.3%)
マイナ保険証の不具合で読み取りできなかった:1101件(20.0%)
カードリーダー等の不具合でマイナ保険証を読み取りできなかった:
2660件(48.4%)
患者から苦情を言われた:679件(12.4%)

【トラブル対応(複数回答)】
健康保険証で資格確認した:4117件(74.9%)
オンライン資格確認のコールセンターに連絡:636件(11.6%)
保険者に連絡した:1040件(18.9%)
レセコンメーカーに連絡した:1562件(28.4%)

【トラブル時に対応すぐに対応できなかった事例】
あった:1831件(39.9%)
なかった:2763件(60.1%)

※すぐに対応できなかったトラブルの件数(患者数)
○1~5件  1500件
○6~10件 167件
○11件以上 164件

【すぐに対応できなかった理由】
オンライン資格確認のコールセンターにすぐにつながらない:448件(24.5%)
レセコンメーカーに連絡したがすぐに繋がらない:563件(30.7%)
健康保険証を持ち合わせておらずすぐに資格を確認できなかった:
706件(38.6%)
保険者に連絡したが資格を確認できなかった:231件(12.6%)

2.特徴

(1)65.1%(5493医療機関)がトラブルを経験

41の保険医協会・保険医会の会員医療機関10026件の回答があり、オンライン資格確認の運用を開始した医療機関(8437件)のうち、65.1%(5493件)が、「トラブルがあった」と回答した。

(2)トラブル件数は「資格無効・該当なし」が66.3%で最多

トラブルの種類(複数回答)は、「無効・該当なしと表示され被保険者の資格情報が正しく反映されない」が66.3%と最多となった。オンライン資格確認システムサーバー内に被保険者情報がリアルタイムに反映されないことが主な原因とされているが、「数カ月以上反映されていない」、「職場が変わっていないのに無効が続いている」などの事例も報告されており、事業所、保険組合の被保険者情報の抹消や更新遅れの期間を短くする省令改正のみで根本的な解決となるのか検証が必要である。
転職・退職、結婚、出産など人生のライフステージに伴い、加入する保険者や加入形態が切り替わる毎に発生するトラブルである。

(現場の実情)
「マイナンバーカードのみで確認できた例がない。そのため患者に保険証の提示も求めざるをえず、「それでは意味がないだろう!」との反応。手入力が必須の為、負担軽減とは思えない。信用できない。(栃木)」
「無効資格なしと表示された方が長期にわたって改善されていない。氏名の漢字やフリガナが違う。住所移転されていても反映していない。(富山)」
「該当資格なしと表示されたので患者さんに伝えると、仕事変わってもない、辞めてもいないと怒られた。(富山)」
「古い情報だったり、期間が保険証と食い違っているものが5件以上あり。いずれも保険者に確認し、マイナが間違っていると判明。(千葉)」
「「無効」「該当資格なし」と表示される例はかなりあります。保険証原本とオンライン上のデータとの相違もかなりあります。負担割合が違う場合もあって、それは「有効」とされてしまいます(千葉)」
「資格が確認できなかったため、本人や会社の担当者に何度も確認の電話を入れたが、ご本人の保険で間違いないとのこと、苦情まではいきませんが、嫌な対応でした。(新潟)」

(3)見切り発車で自らトラブルを招いた政府・与党の責任は重大

保団連は、2022年11月の調査で運用開始医療機関が24%の段階でも有効な保険証が「無効」となるトラブルが全体の6割を占めることを明らかにし、厚労省に同トラブルの改善を繰り返し求めてきたが、一向に改善されないまま見切り発車された。医療現場の訴えを無視し、実際にトラブルを自ら招いた政府・与党の責任は重大である。
「窓口負担割合の違い」「フリガナ・住所の間違い」など現行の健康保険証では起こりえないエラーが生じており、外来の混雑や窓口対応の増加などが起きている。
「利便性や医療の質向上」とは真逆の事態を招いており、トラブルの多発で「診療妨害」とも言うべき状況にある。

(現場の実態・意見)
「後期高齢の新患さんの負担割合が間違っていた。3割の方が1割で入力されていた。(長野)」
「後期高齢者の方で、1割が正当なのに2割と表示された。この方は少し煩雑で、所得があり、前期高齢者期間も2割保険証所有も実際3割負担と分かりづらかった経緯があった。その日は計算ができないのでその足で市役所へ行ってもらい、大変迷惑をおかけした。(大分)」
「持参された保険証とオン資の内容が違うが5%、名前間違いが5%、何のゆかりもない情報が登録されてた人もいました。(千葉)」

(4)「顔認証不具合、カードリーダーが使えない」が続出

マイナ保険証や顔認証付きカードリーダーの不具合では、「顔認証付きカードリーダーまたはパソコンの不具合によりマイナ保険証の読み取りができなかった2660件(48.4%)」「マイナ保険証の不具合(ICチップの破損等)で読み取りができなかった1101件(20.0%)」となった。
「顔認証付きカードリーダーでうまく認証できない」、「顔認証付きカードリーダーが起動しない」、「電子カルテやレセプトコンピュータが稼働しなくなった」などトラブルが多く、システムベンダーでも原因が特定できず対処できないケースが増加している。発熱外来時に動線分離が必要なため、窓口に設置された顔認証付きカードリーダーが使用できない。

(5)手間の増加、誰でも顔認証できる

現行の健康保険証による資格確認は慣例で月1回の確認で対応してきたが、マイナ保険証は受診の都度必要とされる。顔認証付きカードリーダー(エラーが出れば4桁の暗唱番号)が必要とされるが、顔認証が困難な患者も多く暗唱番号も失念されている方も多い。画像認証の制度が原因かマイナカード作成時の顔写真データの解像度が原因か不明だが、他人の顔認証でも認証できるケースも複数報告されており、本人確認の根幹に関わる問題として対処が必要である。(誰でも顔認証問題)

(現場の実態・意見)
「顔認証ができず、暗証番号も患者さんが覚えていなかったため、オンライン資格確認を断念した(山形)」
「顔認証の場合、四角にきちんと顔が入っていないと、認識しないようになっている。しかし高齢者は四角の枠が見えないのか枠に顔をあわせることができない。そのうちタイムアウトになってしまう。「暗唱番号なんか覚えていない」と怒鳴られることもある。(富山)」
「カードを照合しても「混み合っています」の画面が出るばかりで認証されない。トラブルの原因がわからず解明するまでマイナンバーカードの対応が全くできなかった。(奈良)」
「高齢者を中心に顔認証の失敗、パスワードが分からなくなり、マイナンバーカードにロックがかかり、保険情報にアクセスできない事例も頻発(富山)」
「高齢者がもっと簡単に操作できる機器でないと時間ばかりかかって診療の妨げになる。保険証の方がよっぽどよい(富山)」
「今現在の状況で、機器の操作が難しいと困っておられる患者さんが大半です。これが義務化になった時に、受付をするのに混雑をし、たいへん混乱を招く(富山)」

(6)システム稼働保障やセキュリティ対策を医療機関に押し付け

これらのトラブルは、医療機関や患者には一切責任はない。2022年9月に療養担当規則の改正で「義務化」されてからわずか半年ですべての医療機関にオンライン資格確認システムの整備を強制したことがシステム周りのトラブルの原因の一つである。
医療機関では、顔認証付きカードリーダーを設置し、審査支払機関のサーバーに常時アクセスが可能となる閉域通信回線網の整備、電子機器などの保守・管理やセキュリティ対策などを医療機関に義務付けた。
きちんと稼働するかどうかの検証なく見切り発車した結果、医療機関内の既存の電子カルテやレセプト請求コンピューターとの不具合や稼働不良が生じている。診療の停滞と資格無効に伴うレセプト請求(保険請求)の返戻など実害が生じている。一旦立ち止まり、現場の事例を元に十分な検証が必要である。

(現場の実情)
「マイナ受付で通ったにも関わらず、実際保険証が変わっていて、レセプトを返戻するのはおかしい。(福島)」「ご年配の方が機械の操作がわからず、何回も対応が必要で、通常業務に支障がでる(他の患者様から早くしろのクレーム)福島」

「ご高齢の患者様が多い為、毎度つきっきりで説明が必要なため、人員的問題が生じる(山梨)」
「車椅子の方で暗証番号がわからない(覚えていない)方の顔認証が難しい(山梨)」
「コロナ疑い(感染症)等の方の受付をマイナンバーで行うにあたって他の方との接触の危険性がある。(山梨)」
「オンライン資格確認は目がご不自由な患者さんや高齢お一人で受診される患者さんは使用が難しく、個人情報であるため、職員がお手伝いすることもできません。一部の方しか使用できないシステムを義務化することには大きな違和感があります(山梨)」

(7)健康保険証を確認してトラブルへ対処 74.9%(4117件)

トラブルへの対処として患者が持参した「その日に持ち合わせていた健康保険証で資格確認した(74.9%)」、「オンライン資格確認のコールセンターに連絡した(11.6%)」「保険者に連絡した(18.9%)」「レセコンメーカーに相談した(28.4%)」などである。

一方で、トラブル時にすぐに対応できなかったが1831件(39.9%)となった。その理由として「健康保険証を持参せず資格確認できなかった706件(38.6%)
」、「コールセンターにつながらない448件(24.5%)」、「レセコンメーカーにすぐにつながらない563件(30.7%)」「保険者に連絡したが資格を確認できなかった231件(12.6%)」とすぐにトラブル対処ができないケースも多い)。災害・停電時などシステム障害時にマイナ保険証では被保険者情報が券面で確認できないため、保険診療そのものが行えなくなる。
政府は、24年秋に現行の健康保険証を廃止する方針を示しているが、券面に被保険者情報が表記されている現行の健康保険証が存続されないと、こうしたトラブルへの対処が途端に困難となる。

(現場の実態)
「無効・該当資格なしと表示されたら、その度に保険者に資格確認をしなければいけないため、時間・手間がかかるようになってしまった(福島県・医科)」
「手間が増えたように感じる。担当者との連絡がなかなかつかず、すぐに対応していただけなかった(福島)」

(8)トラブルで患者から苦情が 679件 12.4%

トラブルが発生したことについて患者から苦情を言われたケースが12.4%(679件)となった。これは各医療機関の懸命な努力にかかわらず、トラブルへの対処が困難な中、苦情に発展したケースである。医療機関と患者双方に無用なトラブルを持ち込まれているのが現状である。
夕診や土日など各保険組合が通常営業していない時間帯での資格照会は困難である。当該時間帯にマイナ保険証「無効」事例が発生した場合の対処がとりわけ困難となる。各保険組合への問い合わせも時間外対応先の体制不備等によりトラブルへすぐに対処できないケースも多い。政府は、オンライン資格確認システムの義務化、マイナ保険証ありきの政策を強引かつお粗末な体制で進めてきた結果、マイナ保険証等の利用拡大に伴い患者・医療現場双方が被害を受ける状況となっている。

(現場の実態)
「顔認証で確認できず、暗証番号記憶なし。保険証を持ち合わせておらず、一旦10割負担になることを説明したが、役所で、これで保険証なくても受診できると言われたの一点張りで納得せず。待合室で大きな声で騒ぎ立てるため、やむなく警察を呼んで、その場は終息した。診察は受けずに帰宅。その後来院なし。全くの新患(東京」

(9)マイナ保険証「無保険扱い」-窓口で10割請求は38都道府県1291件

マイナ保険証のみ持参で資格無効と表示されたため、患者さんに窓口で一旦10割負担を徴収した事例が38都道府県で1291件あった。
無保険扱いとなる場合、どれだけ手持ちが必要なのか、払えないと受診抑制になるのではとの不安感も広がっている。マイナ保険証のみの場合は、オンライン上で資格確認が可能となるまで“無保険者”となる。資格確認が困難な場合は10割徴収される。「自費扱い」となるため高額療養費制度も利用できない。経済的負担により「受診が困難」となることが想定される。
現状であれば、後日、健康保険証を持参すれば7割分が返金されるが保険証が廃止され、マイナ保険証も「無効・該当なし」となると保険診療が受けられなくなる(自費扱いとなる)。

マニュアル改定後も10割負担は増加傾向

6月2日に「マイナンバーカードで生年月日を類推して窓口3割を徴収することが考えられる」とするオンライン資格確認システム運用マニュアルが改訂された。
未収金への対処、事後の資格確認方法や問い合わせルールなど、実務的な対応がすべて「調整中」である。従って、事務通知等の形式で各保険医療機関へ周知することも困難とされている以上、問題が解消されるはずがない。
今般のマニュアル改定は、「一旦10割負担」に対する批判の高まりを受け、医療機関に責任を押し付ける形で対処を求めた対応に怒りしかない。政府の「思い」、「願望」を記しただけのマニュアルであり、法令上も実務上の無責任な記載内容である。
初診時にマイナ保険証が「無効・資格喪失」となった場合、マイナンバーカードの提示のみでは、所属保険組合、被保険者番号等、保険請求に必要な情報が得られないため、今後とも患者に10割負担を請求する事例は増加していくことが想定される。また、担当課課長から「振替調整による対応」が示唆されたが、保険請求に必要な情報が得られず、請求書を作成することすら困難な状況で有効対処とは言えない。

(現場の実態・意見)
「マイナ保険証で該当なしとなり、本人に確認し保険者に電話で確認を試みたが電話がつながらず、患者さんから10割で徴収した(山形)」
「保険証変更した患者さんで、マイナ保険証で新しい保険証の情報が確認できず、新しい保険証も持っていなかったので、一旦10割徴収し後日返金した(山形)」
「資格確認ができず、患者さんに一旦10割をお預かりする説明を行ったが、クレームになり10割徴収できなかった(山形)」
「保険者情報が正しく反映されていなく、無効となっていた。一旦10割負担で患者に請求したが、後日、同じ保険者情報で資格ありとなり、精算することとなった。(千葉)」

6月8日 埼玉・Mクリニック
「マイナ保険証に情報が無く、土曜日で保険者に確認できず自費対応となった。「協会けんぽが休みで確認できないので、本日は自費でのお支払いになります。申し訳ありません」と対応。その日二人いて、一人は「では次回は保険証を持ってきますね」と2万円程度自費で応じてくれたが、もう一人の社保の患者は激怒。「何で確認が取れないんだ!1万円ももってくるはずがないだろう!俺は今も○○という会社に勤めているぞ!」と勤務先に確認の電話をかけさせられた。患者の怒りが強く、トラブルを起こしたくないので「すいません、本日は3割負担で大丈夫です。また次回保険証を確認しますね」と対応した。患者は「分からないなんて話があるかい」と不満を言いつつも3割分の支払いには応じた。現場は大変混乱しています!とお声を頂いた」

6月8日 埼玉・Aクリニック
「マイナ保険証が無効で、紙の保険証を持っていなかったため、自費扱い。「申し訳ありません、本日は全額負担となります。次回確認が取れれば多くお支払いいただいた分はお返しします」と対応。これまで2人ほどいたが「ああそうなんですね…」「ダメかあ」と応じてくれた。1人は15000円程度支払った。」

「他人の情報が紐づけられていた」が31都道府県で114件

「他人の情報が紐づけられていた」との回答は31都道府県で114件報告された。マイナ保険証を利用すると患者本人と当該医療機関において薬剤情報、診療情報の閲覧が可能となる。2023年4月のマイナ保険証利用は約829万件でその内、顔認証付きカードリーダーのタッチパネルで同意し、薬剤情報の閲覧を利用した件数は約473万件、診療情報の閲覧は約273万件である。
加藤勝信厚労大臣は、6月13日の記者会見で新たに60件の他人の情報に紐づけられており、うち4件で薬剤・診療情報等が閲覧されたと公表した。
デジタル庁はマイナポータル上で国民に一斉点検を呼び掛けている。健診、薬剤・診療情報をマイナポータルで点検すると誤紐づけの場合、他人の情報が見られてしまい、情報流出・プライバシー侵害が大量に発生してしまう。
こうした状況で「他人の情報が紐づけられていた」ことは、患者のプライバシー侵害や情報漏洩につながる。他人がマイナポータル等で薬剤・診療情報を閲覧した可能性は捨てきれず薬剤・診療情報の閲覧機能は直ちに停止すべきである。

(現場の実態・意見)

オンライン資格情報に、「資格無し」と表示、患者情報に生年月日が全く同じ他人まで表示される(千葉)