厚労省は10月27日の医療保険部会で9月のマイナ保険証利用件数は約736万件となり前月(734万件)とほぼ横ばいとなったことを報告しました。オンライン資格確認全体で1億6197万件であることからマイナ保険証利用率はわずか4.54%に過ぎません。オンライン資格確認の件数そのものが増加したため、8月のマイナ保険証利用率(4.66%)よりさらに低下しました。
トラブル多発で利用率低下の一途
2023年4月からオンライン資格確認義務化に伴い体制を整備した医療機関が増加したこと、ポイント普及策によるマイナカードを申請・取得し、マイナ保険証の紐づけを完了した方が増加し、23年3月の267万件から23年4月に829万件と一気に増加しましたが、その後の顔認証付きカードリーダーの読み取りエラーやデータ不備(有効な保険証の資格があるのに無効と表示される、該当資格そのものがない)やトラブル(マイナ保険証で資格確認ができず窓口で10負担を支払う)、他人の情報に紐づけられていたなどマイナ保険証を巡るトラブルが次々と明らかになる中で5月の853万件をピークに、6月849万件、7月781万件、8月734万件と減少の一途をたどっています。薬剤情報の閲覧件数は23年4月の473万件をピークに9月は314万件と159万件も減少しました。
一方で、政府の2兆円のポイントばら撒きによるアメや保険証廃止のムチを駆使した普及策によりマイナカードの保有者は9091万件(9月30日時点)、マイナ保険証の利用登録件数が7149万件(10月22日時点)となりました。ポイント目当でマイナカードを作成し、マイナ保険証の紐づけも実施したが、医療機関窓口ではほんとど利用していないのが実態です。
厚労省の法令解釈
保団連は、10月26日に厚労省要請を実施しマイナ総点検を追及しました。
【10.26厚労省要請(動画配信中!)】マイナ総点検を徹底追及! 「不安払拭」は保険証残してこそ
健康保険法第63条で被保険者が保険医療機関から「療養の給付=保険給付」を受ける際に、電子資格確認その他厚生労働省令で定める方法により、被保険者であることの資格確認を受ける必要があります。
厚労省担当官は、健康保険法上の「電子資格確認」の定義について、「マイナカードに搭載した電子証明書を利用したオンライン資格確認」と答えました。つまり、マイナ保険証による電子資格確認が法律で明示されています。一方で現行法では被保険者証(健康保険証)による資格確認は厚生労働省令で定められています。
政府は、24年秋に被保険者証(健康保険証)を廃止する方針を示しており、6月2日の改正マイナンバー関連法等に基づき健康保険法の省令も改正されると被保険者証(健康保険証)による資格確認ができなくなります。
※現時点では資格確認書による資格確認は厚労省から省令等への記載などの正式な方針が示されていません。
95%が「電子資格確認」でない
オンライン資格確認システムを整備した保険医療機関の多くは健康保険証の被保険者番号を利用しオンライン資格確認を実施しています。その件数は23年9月段階でオンライン資格確認全体の約95%におよびます。ところが、厚労省が示した法令上の「電子資格確認」はマイナ保険証を利用したオンライン資格確認のみとなるため、わずか4.54%の人しか法令上の「電子資格確認」ができていないこととなります。資格確認ができないと保険給付が行えないため、無保険者扱いになる可能性があるため、このまま24年秋に健康保険証を廃止すると大混乱となります。
保険証(被保険者番号)を管理番号にシステム設計
オンライン資格確認システムの制度設計上、個人単位化した被保険番号で管理されています。転職・退職等で所属する保険組合を変更しても各保険者が被保険者情報を登録するサーバー(医療保険者向け中間サーバー)に登録され過去の被保険者情報も含めて履歴が管理されています。従って保険証(被保険者番号)だけで、被保険者情報や薬剤情報・診療情報、特定健診情報も閲覧・取得することができます。
一方で、各保険者では、新規で被保険者が加入する都度、中間サーバーにマイナンバー等を登録する必要がありますが、マイナンバーの紐づけミスが発生し、過去情報も含めて1億6000万件の住民記録との5情報による突合を強いられています。オンライン資格確認システム上では、保険証(個人単位化された被保険者番号)という管理番号で情報照会・取得が可能となりますので、難易度が非常に高いマイナンバーの紐づけが本当に必要か疑問符が付きます。
保険証廃止は現実的でない
電子資格確認を受けることができない状況にあるときは、被保険者の申請により発行される資格確認書(改正法第五十一条の三)では必ず申請漏れ・申請遅れが生じます。すべての被保険者に一律に被保険者証(健康保険証)を発行・交付することは国民皆保険の根幹であり、法令でそのことを保険者に義務付けてきました。マイナ保険証利用率が低下の一途をたどる中で、24年秋の健康保険証廃止は現実的ではありません。保険証廃止は撤回すべきです。