【第1回】高額療養費制度の改悪は中止を シリーズで問題点を解説
12月12日の厚労省の社会保障審議会(医療保険部会)において、患者が支払う医療費負担限度額(高額療養費制度)を引き上げる方向での「見直し」が了承され、2025年度予算編成過程において詳細な制度設計を行うとして与党で調整が進められています。本会は、重篤な疾患の治療・療養を支える高額療養費制度の改悪を止めることを強く求めています。
今回から、シリーズ6回を通じて高額療養費制度の見直しの問題点を解説していきます。
交通事故やがん治療などでの長期の入院、普段より高額な薬剤を使い続ける人など、医療費の負担が重くなる場合に鑑みて、公的医療保険制度において、高額療養費制度が設けられています。重い医療費負担によって、患者の治療・療養の継続、生活や生業などが脅かされないようにするため、月々(及び1年間)に支払う医療費負担を一定額以下に留めるものです(※患者は上限額(一定額)以上の負担は求められない)。
通常、患者は治療などに要した医療費合計のうち1~3割相当分を支払いますが、別途、高額療養費制度において、患者の所得区分(5段階)に応じて負担する月限度額(及び1年間)が設定されています(下図)。
現在、厚労省の社会保障審議会(医療保険部会)では、この高額療養費制度について、患者が支払う負担限度額を引き上げる方向で議論が進められています。
これまで部会に示された案では、①全ての5つの所得区分をさらに細分化した上で、負担限度額水準を5%~15%引き上げることが示されています。加えて、②70歳以上の高齢者(年収370万円未満)において外来医療費負担を抑える「外来特例」(月1万8,000円、又は8,000円など)について、廃止又は負担限度額引き上げが提案されています。
下の図が、高額療養費制度の見直しの方向性のイメージです。
国は年末にも決定して、早ければ2025年夏以降からの負担引き上げを進める構えです。
誰もが、人生の途上で予期せぬ事故や大病に見舞われます。患者の治療・療養を支える‟命綱”である高額療養費制度について負担限度額の引き上げは多大な影響をもたらします。
次回は、負担引き上げが抱える問題についてみていきます。