高額療養費制度「限度額引き上げ」を含む予算案の衆院採決に強く抗議する
2025年3月4日
全国保険医団体連合会
会長 竹田智雄
高額療養費の負担限度額引き上げ(負担増)を含む2025年度の政府予算案が3月4日、自民党、公明党、日本維新の会の賛成で衆議院を通過しました。引き上げの全面凍結・白紙撤回を求める当事者、患者団体、医療関係者の切実な訴えを無視して、限度額引き上げを強行した石破政権は許されません。限度額引き上げの財源的裏付けとなる予算案に賛成した自民・公明・維新に強く抗議します。
石破茂首相は国会審議で「物価上昇を踏まえ、今年8月からの限度額引き上げは実施する」と述べました。しかし、物価上昇に賃金が追い付かず家計も厳しい状況にあります。また、重篤な疾患患者は闘病と就労制限を余儀なくされている方が多く、高い治療費の支払いでギリギリの生活を強いられています。本来であれば、物価上昇分を考慮して患者の負担を減らすべきです。
政府は、反対世論の広がりに応じて小出しに修正を繰り返してきました。高額療養費引き上げの「一時的な凍結による再検討」でさえ決断できない石破政権は、重篤な疾患で闘病を続ける患者の命を蔑ろにし、弄ぶものです。
当会が子どもを持つがん患者を対象に実施した調査では限度額が引き上げられた場合、4割が「治療中断」、6割が「治療回数減」を考えると答えており、受療行動へ大きな影響を及ぼすことが示されました。高額療養費制度は、がん患者をはじめ重篤な疾患の患者にとってまさに命綱であり、今年8月からの負担増強行は「治療を諦めろ」と患者に迫るに等しいものです。
国会審議を通じて、厚労省は、制度利用者の収入減少、医療費支出、受診抑制を含む影響など調査を一切実施していない、データも持ち合わせていないことが分かりました。さらに多数回該当の限度額引き上げを据え置いた政府修正案でも1950億円の受診抑制を見込むなど命をないがしろにする姿勢があらわになりました。患者の命への責任を放棄する政府に制度改悪を提案する資格はありません。高額療養費制度の限度額引き上げの白紙撤回をあらためて強く求めます。