「負担が月2000円から最大13万円に激増」「治療続けられない」「息子の将来に不安しかない」難病患者家族が保険適用存続求め8万5千署名を厚労省に提出

厚労省担当者(左)に8万5千筆の署名を提出する大藤朋子さん(6月18日)
保険適用薬:ヒルドイドクリーム0.3%約109円(5.46円/1㌘、20g)⇒市販薬:ヒルドイドソフト軟膏0.3% 25㌘ 約1,400円
保険適用:リンデロンV軟膏0.12% 10㌘約50円(5.07円/1㌘、10㌘)⇒市販薬:リンデロンVs軟膏10㌘ 約2,000円

「命や生活を支える医薬品、ずっと使っている薬が、保険適用から外されるかもしれない」──。自民・公明・維新の会が6月11日に合意したOTC類似薬の保険適用除外が政府の骨太方針2025に盛り込まれました。OTC類似薬を使用する患者・家族から負担金額が増えることで「治療が続けられなくなるのでは」という不安や懸念も広がっています。

国の指定難病である魚鱗癬(ぎょりんせん)を患う大藤龍之助さんの母親・大藤朋子さんが6月18日、厚労省にオンライン署名約8万5千筆と請願書を提出し、治療を必要とする全ての人が使用する薬(OTC類似薬)を、今後も保険適用とすること求めました。署名には難病患者だけでなく、アトピー性皮膚炎や喘息、アレルギー疾患患者、がん患者からも賛同とメッセージが寄せられました。保団連は同署名と請願書に賛同するとともに、厚労省の署名提出行動に同席し賛同挨拶を行いました。

<オンライン署名>

オンライン署名 · 治療を必要とする全ての人が使用する薬を、今後も保険適用とすることを政府に求めるオンライン署名にご協力ください – 日本 · Change.org

<報道>

「OTC類似薬」保険適用の継続を 難病患者家族が厚労省に要望書 | NHK | 厚生労働省

保険適用継続求め署名提出 OTC類似薬、8万5千人(共同通信) – Yahoo!ニュース

 

大藤朋子さんの訴え

保険適用除外で2000円の負担が最大13万円に 「息子の将来に不安しかない」

私はこのオンライン署名を立ち上げた子の母親で、大藤朋子と申します。息子は生まれつきの魚鱗癬です。22年間四六時中のかゆみや痛みに耐えてきましたし、体温調整ができないことでの友達との行動が制限されることにも耐えてきました。それでも2年前に今の会社の社長が息子を受け入れてくれたおかげで、病気があっても働くことができています。会社の全員が病気を理解してくれて、配慮してくださってるおかげで、週5で働きにいけます。独り立ちに向かっていく息子の姿を見て、母親として嬉しく思っていました。ですが、このOTC類似薬の保険外しで、息子の将来に不安しか見えなくなりました。息子はこれまで病気を抱えていることに文句は言いませんでした。OTC類似薬が保険から外されたら、自分の病気を恨むようになると思います。なぜなら、薬代の負担が半端なく増えるからです。

息子には全身の肌の乾燥や湿疹をフォローする塗り薬のヒルドイドや飲み薬のフェキソフェナジンが絶対に欠かせません。しかも全身に塗る薬なので、どうしても大量になってしまいます。こうした状況に加えて、皮膚が悪化した時にはリンデロンVGが必要になってきます。今、息子は2ヶ月に3回の頻度で病院に通っています。一回の診療代と薬代は2000円から3000円です。一回の処方薬をドラッグストアで買うとどうなるか、薬局に行って値段を調べ、計算をしてみました。通常の状態で6万円以上かかり、肌が荒れている時で約13万円かかることが分かりました。これでどうやって生活していくことができるのでしょうか。保湿剤のついた息子の衣類は、一般の方の選択と比べて、3倍の水道料金や時間がかかりますし、体温調整のできないのでエアコンをずっとつけています。電気代も節約できません。肌を正常に近づけるためには、お風呂は一日に2回入りますので、水道代に加えてガス代もかかります。難病医療費助成制度の対象ではありますが、障害者手帳はもらえず、障害年金も対象外となっています。ちなみに、この難病医療助成制度の説明には、長期の療養による医療費の経済的負担が大きい患者を支援する制度と書かれています。この制度があることでも救われていますが、やはり保険適用されていることで負担は軽減されています。

政府や厚労省は病気を抱えながら、必死に生活している人の暮らしをもっと想像してください。わからなかったら聞いてください。請願書にも書きましたが、ヒルドイドに関してはこれまでも処方量が多いということで、診療報酬支払基金から医療機関に指導が入り、処方量を40本から3本に減らされるということが繰り返しありました。この時、ある医師に言われたのは薬が足りないと思いますが、ドラッグストアなどで買って補ってください。処方すると、「病院がその分を負担しないといけなくなるので」、ということでした。この時も、日本共産党の塩川議員や倉林議員が厚労省に実態を伝えてくださり、必要量処方されるようになりました。シャイな息子が勇気を出してオンライン署名を立ち上げたのは、OTC類似薬が保険から外されたら生活ができなくなるからです。薬を節約するようなことがあれば、病状は悪化し、働けなくなるかもしれないと恐怖に感じているからです。どうか、これまで通り、医師が処方する薬は保険を適用してください。

最後になりますが、息子と同じように保険が適用から外されたら働けなくなるとか、生きていけなくなるという人のコメントを紹介したいと思います。

まず、富山県の方です。日本国憲法すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有するに反するのではないかと思います。月に3つの病院にかかっており、保険が適用されている今の状態でも生活が厳しいです。悪性で節約できた膨大なお金は何に使うんですか?国民を守ってください。

つぎに東京都の方です。私は数年前からアレルギー用の薬を飲んでおり、飲まないと満足に息ができません。保険適用外の処置は、国民に苦しめと言っていることにほかなりません。断固反対します。

最後に大阪府の方です。鎮痛抗炎症薬も保険適用除外になる。とのことですが、子宮筋腫で月の半分は痛み止めが手放せません。今でさえひどいときには、ただただうめき声を上げて、のた打ち回ってるしかできないのに、薬価が上がって買いづらくなれば、まともに社会生活が送れなくなる可能性があります。そうなれば、仕事も辞めて生活保護を受けざるを得ません。さまざまな持病でこのような状況にある方は、世に数多くいらっしゃるかと思いますが、政府の皆様はそこまでお考えになった上で、なお今回のような決定をされるおつもりなのでしょうか?

他にも本当に困ってる人がたくさんいます。再度の要請になりますが、どうか医師が処方する薬は保険を適用してください。どうぞよろしくお願い致します。

<オンライン署名に寄せられた患者さんの声(抜粋)>

アトピー患者は継続的な薬の使用が欠かせない

私は生まれつきアトピーがあり、さらに季節性の花粉だけでなく黄砂やPM2.5といった環境要因によるアレルギーや喘息にも長年悩まされています。こうした症状を抑えるためには継続的な薬の使用が欠かせません。もしこれらの薬が保険適用外となり高額になってしまった場合、家計を優先して薬を諦める選択をしなければならないかもしれません… しかし薬を手放すことは、ただつらさに耐えるというだけではなく命に関わるリスクにもつながります。治療を必要としているすべての人が必要な薬をきちんと使い続けられる社会であってほしいと心から願っています。

小児の急激な体調変化はなかなか親の判断では難しい

5歳の子どもがアトピーです。 0歳の頃からステロイド+ヘパリン類似物質を使い続けています。 最近ヘパリン類似物質とある薬を混合してもらいはじめ、肌に合っていたようで完治はしていませんが、肌の状態がようやくよくなってきました。ヘパリン類似物質が保険適用外になると、金銭的にしんどいので治療を続けられません。また、保険適用外になると、保険薬局で他剤との混合もしてもらえなくならないでしょうか。5歳の他に、赤ちゃんも育てながら、仕事もしながら1日2回薬を塗っています。自分で塗る時に混合するとなると手間が増えてとてもしんどいです。 金銭面だけでなく、手間の面でも保険適用外はしんどいです。また、小児科で処方される薬は適用内にしてもらいたいです。小児の急激な体調変化はなかなか親の判断では難しいですし、体重で薬剤の量も異なるためきちんと処方薬を飲ませたいです。市販の総合感冒薬だと不要な薬まで飲むことになるのが気になります。

がん患者からの悲痛な声

私はがん患者です。抗癌剤治療や放射線治療をしていた当時、副作用で皮膚障害が出て、ヒルドイドが欠かせませんでした。 アトピーとは異なり一時的な症状であることがほとんどだと思いますが、ただでさえ高い抗癌治療に加えて、ヒルドイドが保険適用外になってしまったら、たまったもんじゃないです。 高額療養費の引き上げといい、治療さえすれば完全に元通りに働ける人たちまで死を選ばざるをえなくなります。2人に1人は一生のうちにがんと診断される可能性が高いと言われている時代に、何を考えているんでしょうか。

痛み止めが欠かせない。まともに社会生活が送れなくなる

鎮痛・抗炎症薬も保険適用除外対象であるとのことですが、子宮筋腫で月の半分は痛み止めが手放せません。今でさえ酷い時にはただただ呻き声をあげてのたうち回っているしか出来ないのに、薬価が上がって買い辛くなればまともに社会生活が送れなくなる可能性があります。そうなれば、仕事もやめて生活保護を受けざるを得ません。様々な持病でこのような状況にある方は世に数多いらっしゃるかと思いますが、政府の皆様はそこまでお考えになった上で尚、今回のような決定をされるおつもりなのでしょうか?

難病患者 薬代の負担できなくなる

身体に激痛が走る線維筋痛症、全身のアレルギー性皮膚炎、鼻炎、気管支喘息を患っています。 線維筋痛症では痛みが毎日24時間続くために何度も気絶していましたが、ロキソプロフェンに出会い、最大量を服用することで、再び自宅で細々と生活できるようになりました。 皮膚炎では、アレルギーと乾燥により、顔含めて全身の皮が剥けてしまうためヒルドイドを使用しています。爪まで割れて剥がれてしまうほどの症状で、ヒルドイドなしでは生活が『困難』を通り越して『不可能』です。 気管支喘息で何度も発作を起こして命の危険のある時間を過ごしてきました。この薬を値上げする意味は、もうお分かりですよね?私の命は守られません。 末期ガンで痛みに耐える母も、痛みを和らげることもできないまま逝くのでしょうか。 あんまりです。 酷い。 日本は最低限の生活と人権を保証された国だと思っていましたが、これらの薬の負担額が上がることにより、薬代が払えない、つまり死ぬしかない。そんな人がたくさん出るのです。 どうかお願いいたします。 人を殺す政府にならないで!!